農地を相続した場合に必要なことは?メリットやデメリットも解説
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自ら農業を営んでいない場合でも、農地を相続する可能性があります。本来、農地は農業従事者にしか取得できませんが、相続に関しては関係ありません。
農業従事者が農地を相続する場合には、耕作範囲を広げるなどの活用が可能です。しかし、農家でなければ相続税や相続後の農地をどうするかなど、一般的な土地とは少し違う部分も考えなくてはなりません。
今回の記事では、農地を相続した場合に必要なこと、農地を相続するメリットやデメリットなどを解説します。今後、農地の相続が見込まれる方、すでに農地の相続に悩んでいる方は参考にしてください。
目次
農地を相続した場合に必要なこと
農地を相続した場合に必要なことは2つです。一般的な土地の相続と比べると、手続きが1つ増えるようなイメージを持ってください。
法務局での登記(名義変更)
名義の変更であり、土地の所有者が変更されたことを法務局に報告し、登記を書き換える作業です。
【必要な書類】
- 登記申請書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の死亡時の本籍入り住民票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 不動産の評価証明書
遺言書がある場合は、遺言書も必要です。
農地だから特別な書類がいるわけではなく、土地の登記変更と同じです。ほとんどは役所などで手に入り、費用は全て合わせても数千円ほどしかかかりません。
登記申請書の作成や登記の代行を専門家に依頼した場合には、数万円の費用が発生します。自分で登記申請も可能です。
ただし手間も時間もかかるため、費用面に余裕があれば司法書士への依頼がおすすめです。
農業委員会へ届出
法務局での登記を終えてから農業委員会へ届出をしましょう。
相続を開始してから10ヶ月以内に届け出る必要があります。期限を過ぎてしまった場合には、罰則が科せられる可能性があります。
【必要な書類】
- 農地法第3条1項の規定による届出書:農業員会で取得
- 登記事項証明書:法務局で登記時に発行
管轄している農業委員会は、役所に問い合わせて確認できます。
相続の税率と控除額
相続税は農地のみ個別に発生するのではなく、相続した全てのものに対してかかります。
また、基礎控除額も重要です。相続税は基礎控除額を差し引いた後の金額に対して発生します。
【基礎控除額の計算式】
- 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば総額で5,000万円の遺産を、3人の法定相続人が相続した場合で考えてみましょう。
上記の計算式を使用すると、基礎控除額は4,800万円です。遺産総額の5,000万円から基礎控除額の4,800万円を引いた200万円が相続税の対象になります。
【相続金額に対する税率】
相続金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
税率は相続金額の全てで計算するのではなく、相続人ごとに取得金額を分けてから計算します。
- 個人の相続額×税率−控除額
最終的には、この計算式で相続税額がわかります。
農地を相続するメリット
農地を相続すると相続税が発生しますが、メリットもあります。感じるメリットが大きいのであれば、農地を相続する価値があるでしょう。
農地として利用できる
元々農業を営んでいる場合には、規模の拡大にもなります。
もしこれから農業に参入しようと考えていたのであれば、農地の取得は必須です。また、農機具なども残っていれば初期投資も少なくなります。
農地を活用した収入の増加が見込める
農地を貸し出したり、市民農園などを運営することで収益となります。
また、農地を転用して宅地などに変更した場合には、マンションや駐車場の経営も可能です。相続する農地の立地にもよりますが様々な活用方法があるため、活用した場合の収支も計算してみましょう。
農地の活用については、下記の記事も参考にしてみてください。
農地を相続するデメリット
農地を相続した場合、損をしてしまうことも珍しくありません。
相続税がかかる
農地に限らず遺産を相続した場合には、税金の支払い義務があります。農地を相続した場合、相続税が発生することが多いため、活用方法が見えていない場合には、損失となってしまうかもしれません。
また、営農しない場合も注意が必要です。相続人が農業を継続する場合には、相続税の納税猶予を受けられます。
しかし、営農しない場合には猶予制度が受けられません。
納税猶予も検討する
一定の条件を満たせば納税が猶予されるため、農業を引き継ぐ場合には申請すべき方法です。
相続人が死亡した場合には、猶予されていた相続税は免除されます。
納税猶予については農地を贈与する際の税金はいくら?節税対策になる納税猶予制度も徹底解説!をご確認ください。
農地を維持するための管理と費用が必要
農地を相続しても放置していれば土なども栄養を失っていくため、農地としての能力は低くなっていきます。
耕作を考えているのであれば、現状を維持するための管理が必要です。また農地として利用するつもりがなくても、雑草などを定期的に刈らなければ周りに迷惑がかかってしまいます。
自分で除草を行う場合には時間や農機具が必要となり、代行を依頼した場合には費用が発生します。
農地を相続したくない場合
「農地を相続したくない」と考える人もいるでしょう。農地を相続したくない場合の方法を解説します。
相続を放棄する
農地の相続を放棄すれば、相続の手続きだけではなく相続税を支払う必要もありません。
また、農地を相続した場合の管理なども必要なくなるため、営農も活用するつもりもないのであれば、相続放棄がよい方法です。
ただし、農地のみの相続放棄はなく全ての遺産を放棄することになります。
農地のみの相続放棄はできないため注意しましょう。
相続してから売却する
農地以外の遺産を放棄したくない場合には、農地を相続してから売却するとよいでしょう。近所で農業を営んでいる農家が農地を探している場合や、新規就農者が探していることもあります。
ただし農地は一般的な土地と比べると需要は少ないため、すぐに売却できない場合もあります。まずは地域の農業委員会への相談や、不動産の一括査定サービスなどを利用しましょう。
農地の相続を放棄する方法
農地の相続を放棄したい場合の方法を解説します。
相続財産を全て放棄する
農地のみの相続放棄はできないため、相続する財産を全て放棄します。
申請先は家庭裁判所になり、相続放棄は個人でも十分に申請可能です。
相続を放棄しても管理義務は残る
所有権ではなく、あくまで管理業務となるため、農地の売却は行えません。
農地の所有者ではないものの管理業務のみが残るため、管理を怠った際に起きた事故などは責任を問われてしまいます。
期間は次の相続人が管理できるようになるまで
農地の管理義務は一生残るわけではなく、次の相続人が管理できるようになるまでです。例えば次の相続人が未成年など、まだ管理できる状況にない場合は、管理できるようになるまでの期間になります。
次の相続人がいない場合は国庫に帰属します。ただし国庫に帰属するまでに1年ほどはかかるため、その間は管理しなければなりません。
相続放棄の流れ
相続放棄の流れを解説します。
相続放棄申述書の作成
まずは、相続放棄申述書を作成します。成人と未成年の場合で様式が異なるため注意しましょう。
内容自体は難しいものではなく、住所氏名や被相続人との関係などです。
必要書類の提出
書類の提出先は家庭裁判所です。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 相続人の戸籍謄本
基本は3つの書類を準備します。申立人によってはさらに書類が必要です。
極端に難しい書類はなく、戸籍謄本に明記されなければいけない内容が変化するぐらいです。
個人でも申請は可能です。書類の準備や手続きが面倒な場合には弁護士へ依頼しましょう。
送付されてくる照会書の確認と返送
相続放棄を申し立ててから、10日前後で相続放棄の照会書が送付されてきます。
照会書は相続放棄の手続きが完了した報告ではなく、回答が必要です。書類に必要事項を記入し、家庭裁判所へ返送しましょう。
さらに10日前後で「相続放棄申述受理通知書」が届きます。この書類が届けば、相続放棄は完了です。
相続の放棄は3ヶ月以内に
農地の相続を放棄する場合は、相続してから3ヶ月以内に手続きしなくてはいけません。3ヶ月を超えた場合は、自動的に相続されてしまいます。
また、一度相続を放棄したら放棄の取り消しはできないため、十分に考えてから行いましょう。
まとめ
農地の相続は、農業を営んでいる人やこれから参入を考える人にとっては、有効活用できる土地になります。しかし農業従事者でなければ、農地の相続で負担に感じることも多くなるでしょう。
農地の相続にはメリットもデメリットもあり、人によって変化します。状況によっては、相続を放棄することも1つの方法です。
一般的な土地と農地は使用方法も大きく異なるため、相続放棄だけではなく、売却や活用も視野に入れておくとよいでしょう。