代掻き(しろかき)のやり方や注意点とは?田植えの前の大事な作業を解説
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代掻き(しろかき)は、米作りのプロセスの中で田起こしの後、田植えの前に行われる大切な作業です。意味や目的、方法、注意点などを説明します。また、古来行われてきた代掻きの歴史や、現在一般的であるトラクターを使った代掻きについても紹介します。
お米づくりの一連の流れは別記事で詳しく紹介しています。是非参考にしてみてください。
目次
代掻きとは何か
代掻きは、田起こしした田んぼに水を張り、土を攪拌し、ならして平らにしていく作業です。
田んぼを平らにして状態を整えることは、おいしいお米を作るうえでは欠かせない作業です。
代掻きは、1回だけではなく、田植えの前に複数回行われます。ゆっくりと水を増やして
稲作全般の流れ
代掻きは、稲作の流れの中でどのような過程に位置付けられるのでしょうか。稲作では冬から春にかけての土作り期に土を作り、春に種を撒き、苗を育てます。5月頃に育った苗を田植えにより田んぼに移しますが、その準備として行われる作業が代掻きです。
代掻きと田植えの後は、田んぼを管理する期間です。稲の状態に応じて水の量を調整し、追肥を行います。秋は収穫の時期です。コンバインなどを使用して稲を刈り取り、籾を乾燥させ、籾摺りして出荷の準備を整えます。
代掻きの持つ意味
代掻きでは、田んぼに水を張ってから農具や機械を使って土を砕き、田んぼの表面を均等にします。そして同時に、肥料や藁をすき込んでいきます。では、これらの作業は稲作にとってどのような意味を持つのでしょうか。
水を入れた田んぼの土を砕いて細かくすることで、有毒ガスが抜けて有機物が熟成するなど、土の質が高まります。土が柔らかくなるので稲を植えやすくなり、稲の活着も促進されます。
雑草を土中に混ぜることで発芽を抑えられるので、田植え後に雑草に悩まされにくくなるでしょう。土をならすことで田んぼの水の深さが均一になるため、水の管理がしやすくなり、除草剤を平等に行き渡らせることも可能です。
また、土をならして水や肥料が均等に行き渡るような状態を作るため、苗の成長に偏りがなくなります。虫や生き物が畔にあけた穴などを泥が塞ぎ、畔からの水漏れを防止することも期待できるでしょう。
このように、代掻きという作業には、土壌の状態を整え、田植えとその後の田んぼの管理を容易にしてくれるという意味があります。田起こしから田植えまでの行程は、米の出来を左右する重要な作業です。
きちんと代掻きしない場合に起こること
土を細かく砕き、柔らかくする代掻き。この作業がきちんとできていないと、苗が入り込みにくく稲の根もうまく伸びません。苗がうまく活着せず、浮いてきてしまうこともあります。
代掻きは、土をならして水を均等に張る作業でもあります。水深が一定でないと苗の育ち具合が均等ではなくバラバラになってしまうのです。
代掻きを行わないと肥料や水がきちんと平等に行き渡りません。田んぼの中に酸素も供給されないので、土の質が上がらず、稲が病気になってしまうリスクもあります。
代掻きで裁断して田んぼの中に混ぜるはずの雑草がきちんと処理されていない状態では、のちに雑草が育ってしまったときに、取り除くのがとても困難になります。
代掻きの歴史
初期の稲作では、田下駄(たげた)という下駄を履いて人の手で踏みならす作業が行われていました。奈良時代ごろになると、馬鍬(まぐわ)という農具を馬に引かせて代掻きを行なうようになります。人間も馬と並び、片手で馬を引きながら馬鍬を導くという使い方でした。
馬鍬は古墳時代に中国から伝わり、徐々に進化していきます。江戸時代には大型化し、鉄製のものも現れるなど頑丈な作りになっていったようです。
馬鍬の他にT字型の柄振(えぶり)という農具も代掻きに使用されました。これは人の手によって田んぼの土を平らにするための道具です。
このように、古くから日本人は代掻きのために田下駄や馬鋤といったさまざまな道具を使い、技術の進歩に合わせて発展させてきました。そして近年になって農作業が機械化され、トラクターの登場によって代掻きの風景は大きく様変わりしたのです。
代掻きのやり方
現代の代掻きは、トラクターを使用し、ロータリーや、代掻き専用のアタッチメントであるハローを装着して行うのが一般的です。それぞれの特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。
ロータリー
ロータリーはトラクターに標準装備されています。耕うん爪によって土を耕す機能があるので、専用機のハローがない場合は代掻きにも使用できます。
手軽に利用できる反面、人力も必要になります。必ずしも、作業効率化につながるとは言えないところがマイナスポイントです。
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メリット
- 別途購入の必要がない
- 費用や手間の節約になる
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デメリット
- 浮力がある藁を、土に押し込むことができない
- 藁をすく力が弱く、作物の病気につながる
- 最終的な仕上げには人力が必要になる
ハロー
ドライブハローやウイングハローは、代掻きのために開発された専用のアタッチメントです。質の高い代掻きが可能になります。
例えば、ハローの耕耘爪は短く、藁をすき込む熊手型のスプリングレーキ、土を均一に平らにするスイングラバーやなどが備わっています。
また、折りたたみ式ハローもあります。狭い田んぼや、畔側の慎重な作業に向いています。ディスクハローやスプリングハローなど、特色ある製品も発売されています。
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メリット
- 藁を細かく切断し、深くまですき込める=土質の向上
- きれいに、平らに仕上げることができる=作業速度向上
- 土寄せ機能も使用できる
- 代掻きのみしか使用できない
- 導入費用と保管スペースが必要
デメリット
代掻きの行程
まず、代掻きの前に田んぼに水を入れ、肥料を散布します。ドライブハローを使う場合は取り付けます。
田んぼに入り、中をくまなく代掻きしていきます。このとき、田んぼの外周を回ってから内側を蛇行していくのが一般的なやり方です。ただ、田んぼの形や状況によっては回る順番や回数は異なります。
田植えのときは、すでに通った場所に稲が植えられているので同じ場所を通ることはできませんが、代掻きの場合は自由なコースを何度も走行できます。ただし、代掻きをしすぎると田んぼの水の通りが悪くなるため、水が腐りやすくなり、稲の成長にも悪影響を及ぼすので注意が必要です。
速度とPTO変速の調整
代掻きは、トラクターは時速2kmから4kmのスピードで走行します。これより大幅に速くても遅くても支障が出るために注意してください。
トラクターのスピードが速すぎると土をきちんと細かく砕くことができません。細かくなっていない土には稲をうまく差し込むことができなくなります。反対にスピードが遅いと、土が細かくなりすぎてしまい、今度は土台が柔らかくて稲が安定しません。
ロータリーやハローの爪軸回転数と砕土は、トラクターの大きさや速度、PTO変速の組合せで調整します。標準的な組み合わせを表に記載しています。詳細な計算方法は参照記事をご覧ください。
速度 | 爪軸回転数 | |
---|---|---|
荒起こし | 1~3km/h | 150~200rpm |
代掻き | 3~5km/h | 200~300rpm |
出典:作業技術講座
代掻きの日程
代掻きは1度だけではなく、2度3度と行うのが一般的です。まず大まかに耕し、次に丁寧に仕上げています。代掻きの回数は、田んぼがどれだけ荒れているかによって決まります。耕作放棄地のような荒れ果てた田んぼの場合は、田んぼの状態が整うまで3回程度の代掻きが必要です。
大まかに行う1回目の代掻きは「荒代」と呼ばれ、田植えの3日前から7日前に行います。丁寧に行う2回目は「本代」と呼ばれ、この2回目と必要であれば行う3回目の代掻きは田植えの2、3日前に行います。
代掻きの日は田植えの日からさかのぼって決めます。あまり早く代掻きを済ませてしまうと、田植えまでに雑草が生えてしまいます。
代掻きの注意点
代掻きには、田んぼの水量の調整や、代掻き後の水の処理に関して注意が必要です。自分の田んぼで完結できる場合もありますが、隣の田んぼとの協調や調整が必要なケースもあります。
水の量の調整
田んぼの水量の調整が必要な場合は、調整にかかる時間を把握しておきましょう。用水路に面していて水門がある場合と、用水路から離れていて水門がない場合ではかかる時間や手間が違います。
水門がある場合は水門を開け閉めするだけで水の量を調整できます。水門がない場合は隣の田んぼとの相談や調整が必要です。
浅水代掻きがおすすめ
田んぼが凸凹していたり、雑草が多く困っている。また、水が多すぎて肥料が流れていかないか心配だ。そんな方は、浅水代かきをお試しください。
入水量は、土が7~8割見える程度にしましょう。この時のポイントは、畦からの漏水を防止するため、モグラやネズミなどがあけた穴などは必ず塞ぐようにしてください。
代掻きを実施に行うまでに、ゆっくりと水をため、しっかりと土を湿らせておくと作業がしやすくなります。
- 除草効果
- 環境への配慮
代掻き後の水の処理
代掻き後の濁った水の中には環境にとってマイナスになるものが含まれています。そのため、水漏れに注意する必要があります。
代掻き後の水の対策については議論されており、代掻きなしで米作りに挑戦するところもあります。代掻き後の水が流出しないように、田んぼの水量を適正に保ち、きちんと管理しましょう。
代掻きの農機具を安く購入したい方におすすめ
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まとめ
代掻きは、水を張った田んぼの土を砕いて平らにならす作業です。雑草の発芽や有毒ガスの発生を防ぎ、土壌を整えるなど、田植えとその後の稲の育成を順調に行うために大切な役割があります。
古来、田下駄や馬鋤を使って、人間や牛馬の力で代掻きが行われていましたが、現代ではトラクターなどの機械によって行うのが一般的です。トラクターに備え付けてあるロータリーでも作業できますが、専用のアタッチメントであるドライブハローを使うと、より質の高い代掻きを行えます。