6次産業とは│成功事例から失敗しない儲かる農業経営へ
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最近は、生産の1次産業だけではなく、作物を加工して販売したり、農地の一部で農家レストランを始めるといった取り組みが目立ってきました。
少し前であれば、農業は生産だけでしたが、少しづつ1次産業のあり方が変化してきているように感じます。
こういった加工やレストランなど、1次産業が行う経営の拡大を、6次産業と呼びます。
これからの農業では、6次産業化を進めることで、失敗が少なく儲かる農業経営へと進むでしょう
今回の記事では、6次産業についてだけではなく、成功事例などを解説していきます。
これから農業を始める方にとっても6次産業は重要なテーマです。新規就農方法について別途こちらで紹介していますので併せて参考にしてみてください。
目次
6次産業化とは
まず初めに、6次産業化について解説します。
6次産業は、1次産業である農林漁業が、加工を行う2次産業、販売の3次産業へ参入することです。
6次と呼ばれるのは、1次と2次、3次の掛け算で6になるからです。
数字を掛けて作られた言葉ですが、経営が多角化することで、新たな収益の確保になります。
6次産業のメリット・デメリット
6次産業化は、メリットばかりに目がいきがちです。
しかし、実際にはデメリットもあります。
成功する想定だけではなく、デメリットもしっかりと理解しておけば、6次産業化を進めやすくなります。
メリットとデメリットを、それぞれ分けて確認していきましょう。
メリット
まずは、メリットを解説していきます。
大きくは3つです。
収益の増加
6次産業化で一番のメリットは、収益の増加です。
加工品といった2次産業であれば、出荷できない農作物を商品に変えられます。
また、直売所やインターネットを活用した販売方法では、業者や農協に卸すよりも価格設定が自由です。
卸した場合の手数料も発生しないため、結果的に収益の向上につながります。
加工などの2次産業と、販売や流通の3次産業を行うことで、1次産業のみよりも、はるかに収益が向上する可能性を秘めています。
農家の年収はどれくらいなのか。儲かる農業を知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
農産物の生産量増加
意外かもしれませんが、6次産業のメリットとして、生産量の増加があります。
農家が卸売業者や農協に販売できる数量は決められています。
つまり、必要以上に生産しても、買取の上限があるため、廃棄してしまう農作物も出てくるのです。
しかし、加工品や自社販売の量を増やせば、引き取ってもらえない農作物でも廃棄する必要はありません。
結果として、自社で生産量を増加させ、利益へとつなげられます。
閑散期の業務
農林漁業は、年間を通して、常に業務があるとは限りません。
野菜や果樹など、ほとんどの作物には繁忙期があり、繁忙期意外の閑散期は業務が少なくなります。
もちろん、閑散期であったとしても、手入れなどの業務は必要です。
しかし、繁忙期と比べると、作業数は少なくなるでしょう。
2次産業や3次産業に取り組めば、閑散期にも業務が発生するため、新たな従業員の雇用など、企業としての成長も見込まれます。
デメリット
6次産業化にはメリットばかりではなく、デメリットもあります。
2次産業や3次産業に参入すると、様々なメリットがありますが、1次産業以外への参入は難しいものです。
どのようなデメリットがあるのか、確認していきましょう。
先行投資が必要
6次産業化は、少なからず費用が必要です。
中でも、生産物などを加工する2次産業では、商品開発からパッケージなどの作成まで、様々な先行投資がかかります。
3次産業でも、2次産業ほどではありませんが、直売所の設営やネットショップの開設など、費用は必要です。
マーケティングの知識が必要
2次産業や3次産業は、生産と違った知識が必要です。
例えば、加工品を作っても、需要がなければ不良在庫となってしまいます。
市場規模を調査し、需要のある加工品や販売方法を考えなければいけません。
6次産業化は、マーケティングの知識が必要不可欠です。
2次産業は衛生管理が必要
生産物を加工する2次産業では、衛生管理の徹底が必要です。
まずは、食品衛生責任者の資格を取得し、加工の際にも衛生には細心の注意を払います。
衛生管理を怠れば、信用を落とし、事業の継続も難しくなります。
費用は余分にかかりますが、自社での衛生管理が難しい場合には、外部の加工会社へ依頼することも1つの方法です。
6次産業の事例
ここまでで6次産業については、なんとなくわかってきたと思います。
実際に1次産業から6次産業化を目指し、成功した事例や、失敗した事例を見ていきましょう。
成功事例も失敗事例も確認しておくことで、6次産業化の参考になります。
成功事例
最初に成功事例です。
全国の中から、3社の6次産業化を紹介します。
旬の果物を生で味わえるカフェ「有限会社まるせい果樹園」
福島県で40品種以上の果樹を生産している「有限会社まるせい果樹園」は、3部門に分けた事業で6次産業化に成功しています。
加工だけではなく販売もおこなっているため、2次産業と3次産業を含めた、完全な6次産業化です。
加工は外部の加工業社へ委託し、販売では直売所から農家カフェ、インターネットを使った通販まで手がけています。
6次産業化へ向けて、SNSやメディアを使ったPRを積極的に行いました。
結果として、売り上げ高の向上だけではなく、農地の拡大や従業員の雇用増大など、会社として大きく成長しています。
抹茶加工と国内外への販売「KAWANE抹茶株式会社」
KAWANE株式会社では、国内での販売量が低下していたため、海外にも目を向けています。
海外向けに抹茶を加工し、販売することで、6次産業化に成功しました。
また、他の茶園とも協力することで、収穫時期の人手不足も解消しています。
加工と販売を開始してからは、栽培面積を3倍ほどに拡大するなど、企業として成長を続けています。
地元の加工業者と協力し商品を開発「有限会社高橋養鶏」
有限会社高橋養鶏では、ブランド卵を使用した加工品と販売で6次産業化しました。
プリンやサンドイッチといった惣菜を扱う直売所を開設し、キッチンカーを使った移動販売も始めています。
2次産業の加工と、3次産業の販売も組み合わせた、完全な6次産業化と言えるでしょう。
地元の加工業者とも協力して商品を開発し、自社にかかる負担を軽減しています。
他にも、販路を拡大するための営業やPRを積極的に行なっているため、6次産業化の参考になります。
農業を法人化するメリットとデメリットについて知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
失敗事例
ここまでは成功事例を紹介しましたが、6次産業化が全て成功するわけではありません。
いくつか失敗事例も紹介していきます。
よくある失敗事例
よくある失敗事例は多いですが、中でもマーケティング不足に集中しています。
6次産業は1次産業と違い、消費者の需要がなければ成立しません。
例えば、農業で野菜を生産している場合には、マーケティングを行わなくても、野菜は生活に必要なため一定数は販売できます。
しかし、2次産業や3次産業では、加工品といった、少し嗜好品に近いものを販売します。
生産者が売りたいと考えているものが、消費者の買いたいものとは限りません。
消費者の需要を考えなければ、どれだけ良い商品を作り出しても売れることはないでしょう。
失敗しやすい3J1D
加工品の失敗事例として多いのが、「3J1D」です。
3J1Dは、「ジャム・ジュース・ジェラート・ドレッシング」を表します。
全ての3J1Dが失敗するわけではなく、難しいジャンルと考えてください。
3J1Dは、野菜や果物を使って取り組みやすく、自社の農産物をPRできるため、人気が集中しています。
取り組む農家が多いため、加工、販売しても、売り上げが良いのは一部の農家と考えておきましょう。
3J1Dに取り組むのであれば、徹底的なマーケティングが必須です。
6次産業の4つのマーケティング指標
ここまで、マーケティングがいかに重要かを解説してきました。
6次産業には、4つのPと呼ばれるマーケティング指標があります。
これから6次産業化を考えるのであれば、4つの指標を元に、マーケティングを行いましょう。
Product【製品】
最初はProduct(製品)です。
2次産業では、生産物を加工し商品化することになるため、最も重要な部分です。
マーケティングとしても最初の部分になりますが、ターゲット層やライバル商品との差別化を明確にしていきましょう。
性別や年代など、できる限り詳細に考えることで成功に近づきます。
具体的な製品イメージが固まれば、実際に製品化していきますが、商標に関することなど、法的に問題がないかの確認も必要です。
今後の6次産業化を左右する部分なので、時間をしっかりとかけて行います。
Price【価格】
続いてPrice(価格設定)です。
価格設定は、商品価格の妥当性と利益率で考えましょう。
安すぎると利益が取れず、高すぎると売れません。
基本的には、ライバル商品などを調査し、原価計算を行います。
商品の素材だけではなく、人件費や施設費などを含めた原価計算が必要です。
原価を知らず、適当に価格を設定して販売してしまうと、6次産業化が失敗する原因となってしまいます。
さらに、価格設定も状況によって変更する必要があります。
人によっては、「市場の動きに関係なく、一定の価格」を基本とすることもあるでしょう。
しかし、市場での価格変動に合わせて適正価格に設定したほうが、商品の売れ行きも調整できます。
基本的には、原価計算をしっかりと行い、市場の動きに合わせて、価格設定を行うことが重要です。
Place【流通経路】
Place(流通経路)は簡単に言うと、販路のことです。
「どこで、どうやって販売するのか」と考えてもらえれば良いでしょう。
例えば、生鮮食品であれば、直売所やカフェ、日持ちするのであればインターネットを活用した販売も可能です。
最近では、実店舗よりも通販で買い物をする層が増えているため、インターネットの活用は効果的になります。
また、通販になるのであれば、送料も原価に含んでおく必要があります。
流通経路を想定しておかなければ、「商品だけ作って売れない」ということも十分に考えられます。
Promotion【販売促進】
Promotion(販売促進)は、PRとも呼ばれる商品の宣伝です。
例えば、直売所やカフェ、レストランなど、地域密着で販売するのであればDMやポスティングで十分でしょう。
しかし、通販になるのであれば、SNSやブログの活用が必須です。
商品のプロモーションは、闇雲に行うのではなく、マーケティングで得たターゲット層に向けて的確に行います。
SNSは広告を出さない限り無料なので、まずは、自社や商品のPRへ活用してみてください。
儲かる農業を勉強したい方は本などで情報収集もしてみてはいかがでしょうか。こちらの記事ではおすすめの農業に関する本を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
6次産業を成功させるポイント
ここまでも解説してきましたが、6次産業化は簡単にできません。
しかし、1次産業から6次産業化して成功している企業も多くあります。
成功させるためには、必要なポイントを押さえることが重要です。
6次産業化をサポートしてくれる場所や、補助金などを紹介していきます。
6次産業以外にも、農業従事者が活用できる補助金制度についてこちらの記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
6次産業化サポートセンターとプランナー
農林水産省が、6次産業化をサポートするために、サポートセンターを全国に配置しています。
サポートセンターは、国の機関から民間まで様々ですが、プランナーを派遣してくれるため、具体的に6次産業化を進められます。
また、プランナーには、商品開発やマーケティングなどの相談も可能です。
まずは、6次産業化サポートセンターへ問い合わせてみましょう。
補助金・助成金『総合化事業計画』
総合化事業計画は、生産から加工や販売を一体となって行うことです。
総合化事業計画を作成し、農林水産大臣の認可を得られると、総合化事業計画認定者となり、様々な支援が受けられます。
いくつか抜粋して紹介します。
・農業改良資金(無利子)の活用
・6次産業化プランナーへの相談
・ネットワーク活動交付金の対象
あくまで一部ですが、認定を受けることで、6次産業化が進めやすくなるのは確実です。
農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)
農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)は、6次産業化を支援する民間の企業です。
6次産業化に向けて行なっているサポートは、「出資」になります。
支援対象などの条件はありますが、出資金面でサポートしてもらえます。
6次産業化には、確実に資金が必要になるため、出資を受けることは重要なポイントの1つです。
日本政策金融公庫(JFC)の融資
日本政策金融公庫(JFC)は様々な事業者に対して融資を行なっています。
中でも、6次産業化に使える融資を、2つ紹介します。
農業改良資金
対象 | 総合化事業計画認定者 |
返済期間 | 12年以内(据置期間3年以内) |
融資限度額 | 個人:5,000万円 法人:1億5,000万円 |
利率 | 無利子 |
名称の通り、農業者へ向けた資金の貸し出しです。
対象は、総合化事業計画認定者だけではなく、エコファーマーといった、別の認定者なども含まれます。
資金の使い道として施設や機械が含まれているため、6次産業化に必要な加工施設や直売所の建設に利用可能です。
利率も無利子なので、6次産業化を進めるのであれば、積極的に利用しましょう。
スーパーL資金
対象 | 認定農業者 |
返済期間 | 25年以内(据置期間10年以内) |
融資限度額 | 個人:3億円(特認6億円) 法人:10億円(特認20億円) |
利率 | 0.16%〜0.30%(特例0%) |
農業経営改善計画を作成し、市町村の認定を受ける必要があります。
しかし、認定者であれば個人でも申請でき、融資金額も高額です。
資金の使い道にも施設と機械が含まれているため、6次産業化に利用できます。
利率は特例にならない限り発生しますが、それでも0.30%以下と、一般的な貸付に比べると低利率です。
6次産業化の中でも、大規模な施設が必要な場合には、スーパーL資金がおすすめです。
まとめ
これからは、1次産業だけではなく、2次産業と3次産業を兼ね備えた、6次産業が重要になります。
6次産業化を進めることで、収益の増加など、様々なメリットがあります。
しかし、全ての事業者が6次産業化に成功しているわけではなく、失敗している例が多いのも事実です。
成功させるためには、マーケティングをして、ターゲット層を絞ることが重要になります。
他にも、農林水産省のサポートセンターやプランナーを活用しましょう。
簡単に6次産業化はできませんが、これからの1次産業にとって重要になることは確かです。