有機肥料の使い方や種類を徹底解説|メリット・デメリットを知り上手に使い分けよう
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あなたは、有機肥料にどのようなイメージを持っていますか?
「化学肥料よりも安全で環境にやさしく、よりおいしい野菜が作れる」このようなイメージだけでは、理解が足りないかもしれません。
本記事では、有機肥料の種類やメリット・デメリット、使い方や注意点などを、元種苗メーカー勤務の筆者が解説します。
有機肥料のメリットだけでなく、デメリットや注意点も知って、適切な知識・使い方を身に付けましょう。
目次
有機肥料とは?化学肥料との違い
有機肥料とは、植物・動物性の有機物を原料として作られた肥料です。
微生物によって有機物が分解されてから吸収可能になるため、基本的にゆっくりと長く効く性質を持っています。また、微生物を活性化させる効果もあり、土の排水性・保水性などの改良も可能です。
対して化学肥料は、その速効性が大きな特徴です。水に溶けてすぐに吸収可能になるため、すばやく短く効果が発揮されます。
近年では化学肥料が過剰に危険視されています。しかし有機肥料と化学肥料、どちらが良い悪いということはありません。
土壌改良もしたいなら有機肥料、速く効き目がほしいなら化成肥料というように、それぞれの性質を理解して適切に使い分けることが大切です。
有機肥料のメリット・デメリット
有機肥料のメリット・デメリットを解説します。
有機肥料を使う4つのメリット
- ゆっくり長く効くので作物もゆっくり健康に育つ
- 微量要素を供給し、作物の生育・食味を良くする
- 土壌中の有用微生物が活性化し、土の団粒化が進む
- 団粒化により、通気性・排水性・保水性・保肥性が改良できる
有機肥料を使う最大のメリットは、化学肥料にはない土壌改良効果があることです。
土の中には、無数の微生物が生息しています。そこにエサとなる有機物を入れることで微生物が活性化し、数も種類もどんどん増えていきます。
多種多様な微生物の働きによって土が団粒化します。それによって通気性・排水性・保水性・保肥性が改良され、作物の栽培に適したいい土になるのです。
一方、化学肥料だけを使い続けていると、土壌微生物は徐々に減少、種類も単純化します。土の通気性・排水性などが悪くなり、病気や害虫も発生しやすくなるでしょう。
有機肥料を使う5つのデメリット
- 速効性が低く、追肥にはあまり向いていない
- 分解状況が外部環境に左右されるため、量のコントロールが難しい
- 窒素飢餓やガス障害が起こる可能性がある
- においが強いものもあり、虫や鳥を寄せ付けやすい
- 大量生産しにくいため、化学肥料よりも価格が高い
有機肥料は、微生物が分解してはじめて栄養として吸収可能になります。
しかし、微生物がいつも同じ量を分解するとは限りません。気温や時期によっては微生物の活動が鈍り、分解状況が大きく変わる場合もあります。
そのため化成肥料のように、狙った肥料効果を出すのは非常に困難です。確実に肥料効果が欲しい時は、化学肥料を使うようにしましょう。
有機肥料の種類・使い方
有機肥料にはさまざまな種類があります。
【よく使われる有機肥料】
- 油かす
- 草木灰
- 脱脂米ぬか
- 魚粉
- 骨粉
- 発酵鶏ふん
- バットグアノ
- ぼかし肥料
それぞれの特徴や成分、使い方などを、順番に解説していきます。
1:油かす
【N・P・Kの成分比率】
- N(窒素):5〜7
- P(リン酸):1〜2
- K(カリウム):1〜2
油かすとは、ナタネやダイズなどから油分を取り除いた残りかすのことです。有機肥料の中でも窒素が多く含まれており、様々な野菜栽培で頻繁に使われます。
効果はゆっくりと現れ、長期間持続するので、元肥として利用するのが一般的です。微量要素も豊富に含まれているため、微生物の活性化などの土壌改良効果が高く、健康な野菜作りができます。
ただし分解される際にガスや熱を発生し、肥料やけを起こす可能性があります。植え付けの2週間以上前には土に混ぜておくのが基本です。
また、油かす単体だとリン酸とカリウムが足りないので、骨粉や草木灰などと併用しましょう。
2:草木灰
【N・P・Kの成分比率】
- N(窒素):0
- P(リン酸):3〜4
- K(カリウム):7〜8
草木灰とは、草や木を燃やして灰にしたものです。カリウムを主成分としたアルカリ性の有機肥料で、ある程度速効性があるため、元肥・追肥どちらにも使えます。
そのほかにも、害虫除けや果菜類の食味をよくする効果もあり、様々なシーンで汎用的に利用可能です。
ただし動物性有機肥料や化成肥料と同時に使うと、化学反応を起こしてアンモニアガスを発生させる可能性があります。タイミングを1週間ほどずらして使いましょう。
また、油かすなどと併用すると、不足しがちなカリウムを補完できます。
3:脱脂米ぬか
【N・P・Kの成分比率】
- N(窒素):2〜2.6
- P(リン酸):4〜6
- K(カリウム):1
脱脂米ぬかとは生の米ぬかから油を搾り、肥料用に加工したものです。
リン酸が多く、窒素・カリウムも含まれているため、栄養をバランスよく補給できます。また、ビタミンEや食物繊維、ポリフェノールなどが豊富に含まれており、土壌微生物の活性化に高い効果を発揮します。
発酵時にはガス・熱が発生し、分解には時間がかかります。元肥として植え付けの2週間以上前にすき込んでおきましょう。
なお、生の米ぬかは油分が多く分解が遅いうえ、塊状になって害虫・雑菌の温床になりやすいため、肥料として使われることはほとんどありません。
4:魚粉
【N・P・Kの成分比率】
- N(窒素):7〜8
- P(リン酸):5〜6
- K(カリウム):1
魚粉とは、魚を乾燥させ粉末状にしたものです。
カリウムは少ないですが、窒素・リン酸や微量要素を豊富に含み、野菜の味をよくしてくれます。ある程度の速効性があるため、元肥・追肥どちらにも利用可能です。
元肥の場合は、植え付けの2週間以上前にはよく混ぜ込んでください。追肥で使う際には、土の表面に散布しただけでは鳥などのエサになるため、しっかりとすき込む必要があります。
魚粉のみで使うと成分バランスが悪くなるため、草木灰などと一緒に使いましょう。
5:骨粉
【N・P・Kの成分比率】
- N(窒素):2〜4
- P(リン酸):17〜20
- K(カリウム):0
骨粉とは、豚や鶏などの骨を高温で加圧・蒸製し、乾燥させたものです。
リン酸が多く含まれており、主にリン酸補給用の元肥として使われます。
リン酸は少しずつ溶けて根に吸収されるため、効果は非常にゆっくり現れます。植え付けの1ヶ月前にはよくすき込んでおきましょう。
なお、骨粉だけではリン酸に偏るため、油かすや草木灰などと併用してください。
6:発酵鶏ふん
【N・P・Kの成分比率】
- N(窒素):3〜4
- P(リン酸):5〜6
- K(カリウム):2〜3
発酵鶏ふんとは、鶏のふんを発酵させたもので鶏ふん堆肥とも呼ばれます。化学肥料並みの速効性と、成分バランスのよさが特徴的です。
発酵鶏ふんは未完熟のものがほとんどで、においが非常にキツく、追肥には向いていません。なお、完熟したものであれば追肥にも利用可能です。
基本的な使い方は化学肥料と変わらず、植え付けの1週間前に混ぜて使います。
ただし含まれる石灰分の影響で、使いすぎると土壌がアルカリ性に偏ってしまうため、施肥量には注意してください。
7:バットグアノ
【N・P・Kの成分比率】
- N(窒素):1〜2
- P(リン酸):10〜30
- K(カリウム):0
バットグアノとは、化石化したコウモリのふんを原料に作られた肥料です。
リン酸のほかにも微量要素が豊富に含まれています。微生物の活性化・生育促進・果菜類の食味向上などの効果が期待できます。
ふんを原料としているものの、基本的には無臭。家庭菜園でもにおいを気にせず使えます。
効果はとてもゆっくりと現れるため、元肥として植え付けの1ヶ月前には、土に混ぜておくのが基本です。
なお、バットグアノ単体では窒素・カリウムが不足します。油かすや草木灰などと併用して補いましょう。
8:ぼかし肥料
【N・P・Kの成分比率】
- N(窒素):5
- P(リン酸):4
- K(カリウム):1
ぼかし肥料とは、油かす・骨粉・米ぬかなど、数種類の有機物を配合し発酵させた肥料です。
農家・メーカー・育てる作物などによって無数のレシピがあります。オリジナルのぼかし肥料を自作することもできます。
基本的に成分バランスがよく、微量要素も豊富に含まれているため、非常に万能です。土壌環境を改善し、さまざまな作物をおいしく健康的に育てられます。
効き目もある程度早く、長持ちするため、元肥・追肥どちらにも向いています。元肥なら2週間以上前によくすき込み、追肥なら少量ずつ与えるのが基本です。
有機肥料を使う時の注意点
有機肥料を使う際には、2つの障害に注意が必要です。
- 窒素飢餓
- ガス障害
2つの障害は必ず起こるといっても過言ではないため、その特徴や対策方法をしっかりと把握しておきましょう。
窒素飢餓
窒素飢餓とは、土壌中の微生物が窒素を取り込んでしまい、作物が窒素分を吸収できず生育しなくなる現象です。
C/N比(炭素窒素比)が20以上の有機肥料を施した場合に起こります。
主な対策方法は3つあります。
【窒素飢餓の対策方法】
- C/N比が20未満の有機肥料を使用する
- 窒素を加えてC/N比を20未満に調整する
- 未熟なまま使わず、完熟させてから使う
C/N比は肥料袋の成分表に記載されているため、必ず確認しておきましょう。
本記事で解説した有機肥料では、米ぬかのC/N比が20以上になる場合があります。
ガス障害
ガス障害とは有機物が急速に分解されることにより、アンモニアガスや二酸化炭素などが発生し、作物の生育が悪くなる現象です。
窒素飢餓とは異なり、C/N比の低い有機肥料でも起こる可能性があります。
基本的で簡単な対策方法は、植え付けの2週間〜1ヶ月ほど前までに有機肥料を施肥し、よく耕しておくことです。
時間さえあければガスなどの被害を避けつつ、植え付け頃には分解・発酵が進んでいるため、肥料として問題なく作用します。
また、急速に分解されることがない、完熟した有機肥料を使うのも対策として有効です。
まとめ
有機肥料の種類やメリット・デメリット、使い方や注意点について解説しました。
有機肥料は土壌改良をしながら植物に栄養を与えられる、とても便利な資材です。
しかし、よい部分だけではなく、窒素飢餓やガス障害などの悪い部分もしっかり理解しておくことが大切になります。
この記事を参考に、適切に有機肥料を使って、おいしい作物を栽培してください。