農地を贈与する際の税金はいくら?節税対策になる納税猶予制度も徹底解説!
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所有している農地は、自分のものであっても、自由に売却や贈与はできません。
家族や知り合いに農地を譲る場合には、贈与ということになり、法律に基づいた手続きや納税が必要です。
贈与税と言いますが、自分の農地を贈与することに税金が発生するのは、不思議に感じる人もいるでしょう。
しかし、贈与税の納税は義務であり、確実に行わなければいけません。
今回の記事では、農地贈与に関わる税金から、節税対策になる納税猶予制度などを解説していきます。
農地を贈与、売買、転用する際のルールとなる農地法についてこちらの記事で詳しく紹介しています。参考にしてみてください。
目次
農地を贈与する際のルール
農地を贈与する際のルールはいくつかありますが、主には2つです。
まずは、農業委員会への申請です。
日本の農地は、農業委員会が管理しており、贈与に関しても農業委員会の許可が必要になります。
もう1つは、税金です。
農地に限らず、資産となるものを贈与した場合には、贈与税が発生します。
以上を踏まえた上で、農地の贈与について、詳しく確認していきましょう。
贈与税と相続税の違い
贈与税と似た言葉で、相続税というものもあります。
2つの違いを、わかりやすく解説していきます。
贈与税
まず、贈与税は、生前の贈与に対して発生する税金です。
贈与になるため、血縁関係は必要なく、お互いの合意があれば、誰にでも贈与は可能になります。
ただし、贈与の自由度が高い分、税率は高くなります。
自由に家族以外へも贈与できるため、身近な税金の1つです。
相続税
相続税は、死後に農地などを相続した場合の税金です。
贈与とは違い、血縁関係のある人に対して、農地などの財産が相続されます。
相続に関しては、死後に行うこともあり、税率は贈与税よりも低く設定されています。
届出は必要ですが、贈与のように、農業委員会への許可申請などは必要ありません。
農業を引退したまま放置されている耕作放棄地問題は近年で問題となっています。適切な手続きで農地を次の方に譲渡することが日本の農業界にとって重要視されるでしょう。
農地を贈与する流れ
農地を贈与するには、手続きが必要です。
勝手に行うのではなく、法律に基づいて進めていきましょう。
また、農地を他の目的として転用する場合の手続きについてはこちらの記事で紹介しています。参考にしてみてください。
許可申請
最初に、農地法に則った許可申請が必要です。
許可を出すのは、農業委員会や都道府県知事ですが、窓口は農業委員会になります。
ただし、贈与に限った話であり、相続の場合、許可申請ではなく届出という形になります。
また、不明点がある場合には、各地域の農業委員会へ相談しておきましょう。
贈与契約書の作成
続いて、贈与契約書の作成です。
贈与は、口頭でも可能ですが、書面として残すことで、税務調査などの際にも問題なく贈与を証明できます。
また、公正証書として作成しておけば、より効力の強い契約書となります。
贈与契約書に決まった書式はないため、自由に作成して問題ありません。
ただし、自筆で記名と捺印は忘れないようにしましょう。
自分で作成が難しい場合には、行政書士や司法書士への依頼がおすすめです。
名義変更
贈与された農地は、所有者の名義を変更しなくてはいけません。
名義変更には、農業委員会の許可が必要です。
農業委員会の許可書は、法務局手続きの際に必要となるため、先に取得しておきます。
必要書類を揃えたら、法務局で手続きをしましょう。
贈与税の申告
農地贈与として最後の流れは、贈与税の申告と納税です。
農地は、もらって終わりではなく、申請書を作成し、税務署へ提出しなくてはいけません。
また、贈与税の申告と納税は、贈与された翌年の2月1日から3月15日までと決まっているため、漏れがないように行いましょう。
農地の贈与税について
ここまでも解説してきましたが、他の財産や土地と同じように、農地の贈与にも税金が発生します。
課税対象者や、贈与税の計算方法を解説していきます。
課税対象者
贈与税の課税対象者は、贈与を受ける側の人です。
贈与する側の人には課税されず、農地を受け取った人が贈与税を支払います。
例えば、農地を売却した場合には、売却した人が所得税を支払いますが、贈与に関しては受けた人に支払い義務が発生します。
農地贈与税の計算方法
贈与税の計算方法を確認しておきましょう。
計算式はシンプルですが、贈与された金額によって税率が変わります。
また、一般税率と特例税率によっても変わるため、税率と控除額に関しては、分けて解説していきます。
(贈与された金額−基礎控除額110万円)×税率−控除額
基本的な計算式は上記の通りです。
基礎控除額の110万円に関しては、一般でも特例でも変わりません。
また、税率は基礎控除額の110万円を引いてから、表に当てはめてください。
例えば、贈与された金額が500万円の場合には、110万円を引いた390万円が贈与税の対象となります。
税率が1区分変わってくることもあるため、計算時には注意が必要です。
一般税率
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
一般税率は、兄弟間や夫婦間、親から子への贈与で、受け取る側が未成年の場合などに適用されます。
計算方法は最初に解説した通りで、表の贈与された金額と税率、控除額を当てはめます。
特例税率
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
特例税率は、直系尊属から、20歳以上の人へ贈与する場合に適用されます。
贈与を受けた年の、1月1日に20歳以上である場合です。
直系尊属は、祖父母や父母を指し、義父や義母などは対象外となります。
贈与税の申告・納税 ※暦年課税方式
贈与税は、勝手に計算されるわけではなく、申告が必要です。
申告期間は、贈与された翌年の2月1日から3月15日までと定められています。
暦年課税方式では、1月1日から12月31日までの贈与分に対して課税されます。
また、納税に関しては、申告と同じ期間内に済ませなければいけません。
農地贈与の納税猶予制度
農地の贈与には、贈与税の猶予制度が用意されています。
猶予を受けるためには、条件や手続きなど、面倒な作業も必要になります。
しかし、農地は面積が広いことが多いため、必然的に贈与税が高くなることも避けられません。
贈与税が猶予される制度を知ることで、農地の活用にもつながります。
納税猶予を受ける条件
納税猶予を受ける条件として、贈与する側と贈与される側でいくつか設定されています。
内容としては、贈与される側が、農業に従事していくことを基本としています。
贈与する側
・贈与の日まで3年以上、継続して農業を行なっていた
・相続人に対して、相続時精算課税を適用した贈与を行なっていない
・同じ年に、今回以外の農地を贈与していない
・過去に農地等の贈与に関わる納税猶予の特例、一括贈与をしていない
贈与される側
・相続人のうちの1人
・18歳以上
・3年以上、農業に従事している
・贈与された農地で速やかに農業経営を行う
・認定農業者
贈与する側とされる側の条件は、上記の通りです。
贈与される農地で、農業を継続させることが基本となりますが、現在、農業に従事している必要もあります。
また、農地の2/3以上を一括して贈与しなくてはいけません。
農地の納税猶予は、条件が厳しくなっていますが、満たせるのであれば、利用しましょう。
納税猶予を受けるための手続き
納税猶予を受けるための手続きには、書類の提出が必要です。
税務署に提出するための、「免除届出書」を作成します。
また、贈与を証明するための契約書など、添付する書類も必要です。
贈与税と相続税の納税猶予書類は、「国税庁公式サイト」でダウンロードできます。
免除申請は、贈与税を申告する時期と同じで、贈与を受けた翌年、2月1日から3月15日までに行います。
納税猶予受けるための注意点
納税猶予は、誰でも行えるわけではなく、条件があります。
また、贈与されたころには条件を満たしていても、年数が経てば状況が変わることもあります。
注意しなければいけない内容を、いくつか見ていきましょう。
3年ごとの届け出
納税猶予を受けた場合には、3年ごとに「継続届出書」を提出しなければいけません。
継続届出書を提出しなかった場合には、納税猶予が打ち切られ、猶予されていた税額と利子の支払いが求められます。
また、提出書類は継続届出書だけでなく、農業を継続していることを証明する、農業委員会発行の証明書も必要です。
贈与者・受贈者の死亡
注意点とは少し違いますが、贈与者か受贈者のどちらかが死亡した場合には、猶予されていた税額が免除されます。
これは、生前の贈与ではなく、死亡した場合の相続になるためです。
贈与税の猶予ではなく、相続税の特例に変更されます。
農業をやめた場合
農地贈与の猶予は、農業を継続することが条件となっています。
つまり、単純に農業をやめた場合には、猶予されていた税額の支払い義務が発生します。
農業をやめた場合もですが、農地を貸し付けた場合にも適用されるため注意しましょう。
難しい内容に見えますが、自分が農業をやめた場合と考えてもらえれば、問題はありません。
その他の納税特例制度
納税猶予は、他にも用意されています。
多くはありませんが、少し紹介していきます。
相続税精算課税制度
相続税精算課税制度は、贈与税の特例となっています。
条件はありますが、満たせば最大2,500万円までの贈与に対して、贈与税が発生しません。
また、2,500万円を超えた分に対しては、一律で20%と低く抑えられます。
条件として、60歳以上の父母、または祖父母から、20歳以上の子か孫に対しての贈与となります。
限られた人が対象にはなりますが、大きく節税できる制度です。
配偶者控除
配偶者控除は、名称の通り、配偶者への贈与に対する特例制度です。
夫婦間での贈与ということになります。
夫婦の財産は共有と考えられがちですが、法律では夫婦それぞれ別の財産としているため、生前に農地などを贈与する場合があります。
しかし、配偶者であれば、無条件というわけではありません。
婚姻期間が20年以上と定められているため、現状が20年以下であれば、配偶者控除を諦めるか待つことになります。
条件を満たせば、最大で2,000万円までが非課税となり、110万円の基礎控除とも併用が可能です。
農地売却でも贈与税が発生する場合がある
贈与税という名称から、贈与された場合にのみ発生する税金というイメージがあります。
贈与に関する税金という認識で間違いはありませんが、売却した場合にも贈与税が発生することもあり、注意が必要です。
代表的な例をみていきましょう。
時価よりも極端に低い価格で販売した場合
農地を売却した場合に贈与税が発生する可能性が高いのは、時価よりも極端に低い価格で売却した場合です。
例えば、時価総額が1,000万円の農地を1万円で売却すれば、無料で渡すようなものです。
こういった場合には、贈与という判断をされ、贈与税が発生します。
反対に、時価相場に近い金額で売却した場合、贈与税は発生しません。
もし、贈与される側で、「少数の金額で買い取れば贈与税はかからない」と考えているのであれば、注意しましょう。
まとめ
今回の記事では、農地を贈与する際に発生する税金、贈与税について解説していきました。
農地の贈与には、税金がかかるだけではなく、農業委員会の許可など、様々な手続きが必要です。
しかし、まずは、いくらぐらいの税金が必要になるかを把握しておけば、比較的スムーズに進められるでしょう。
他にも、節税対策となる納税の猶予制度も覚えておくと、受贈者になった際にも慌てずに済みます。
農地には農地以外の目的として転用できない土地もあります。細かな法律やルールがあるので必ず確認するようにしましょう。