ジャガイモ栽培でかかりやすい病気を解説|病気・害虫の種類や被害・対策方法を紹介
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ジャガイモはほかの作物と比べて、病気や害虫に影響されやすい野菜です。
病気や害虫は、1度発生すると止めるのが難しいため、発生原因や予防方法を知っておくことが非常に大切です。
本記事では、ジャガイモ栽培で発生しやすい病気・害虫の原因や予防方法を、元種苗メーカー勤務の筆者が解説いたします。
家庭菜園初心者におすすめのプランター栽培についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
目次
ジャガイモ栽培でかかる病気
美味しいジャガイモを栽培するには、病気の症状や原因を知り、適切な対策をとることが重要です。
ここでは、ジャガイモがかかる病気を9種類ほど解説しています。葉・茎に発生する病気、イモに発生する病気に分けて、症状や原因を見ていきましょう。
ジャガイモの栽培・育て方についてはこちらの記事で詳しく説明しています。是非参考にしてみてください。
ジャガイモの葉・茎に発生する病気
ジャガイモの葉・茎に発生する主な病気は、以下の4種類です。
- 疫病
- 青枯病
- モザイク病
- 軟腐病
疫病
疫病は、主に葉や茎に発生し、進行するとイモにも被害を与える病気です。
開花期ごろの葉に、暗緑色のぬれた病斑が発生し、拡大していきます。葉の裏に霜のようなカビを作るのが特徴的です。
進行するとイモにも症状が現れ、表面から内部まで黒く変色します。
伝染源は、植物残渣上や土壌中の病原菌です。窒素過多や多湿環境で発生しやすくなり、特に雨が続くと急速に拡大します。
風通し・水はけを改善し、多湿環境にならないよう心がけましょう。
青枯病
青枯病は、葉に発生する病気です。
はじめは頂部周辺の葉が急速にしおれ、進行すると全体に広がります。くもりの日や夜間にはしおれが引きますが、徐々に回復しなくなり、やがて枯死します。
主な原因は、土壌中の病原菌です。農作業や多湿によってできた、根の傷から侵入します。
土壌水分が多いと発生を助長してしまうため、排水の改善や水分管理に努めましょう。
モザイク病
モザイク病は、葉に発生するウイルス病で、発病した株は生育が大幅に抑制され、うまく育ちません。
葉が奇形になったり、モザイク状のまだら模様や黒い病斑が生じたりと、さまざまな症状があります。
発生原因は、種イモの汁、発病株の汁、アブラムシによる媒介の3パターンです。
健全な種イモを使うこと、発病株はすみやかに除去すること、しっかりとアブラムシを予防・防除することで、発病を抑えられます。
軟腐病
軟腐病は、葉や茎に発生する病気で、イモにも大きな影響がでます。
地面と接した下葉に水浸状の病斑が生じ、とろけたように腐敗するのが特徴です。症状が茎まで達すると、上部の葉茎も腐敗し、やがて枯死に至ります。
また、栽培中・貯蔵中にかかわらずイモも腐敗させ、周囲のイモにも伝染するため、大損害になりかねません。
土壌中の病原菌が、傷口から侵入して発生します。7〜8月ごろの高温多湿条件でよく発生するため、水はけを改善して多湿環境を避けましょう。
ジャガイモの塊茎(イモ)に発生する病気
ジャガイモの鱗茎(イモ)に発生する主な病気は、以下の5つです。
- そうか病
- 粉状そうか病
- 乾腐病
- 黒あざ病
- 黒あし病
そうか病
そうか病は、地下部のみに発生するため、収穫まで気づかない場合が多い病気です。
イモの表面に、デコボコとしたかさぶた状の病斑ができます。
そうか病は味や収量に影響しないため、問題なく食べられますが、その見た目から商品としての価値はほとんどありません。
発生原因は、土壌中や種イモの病原菌によるものです。高温乾燥条件のアルカリ性土壌で発生しやすくなります。
無病の種イモを使用する、土壌消毒や輪作、pHを中性に近づけるなど、土壌環境の見直しが大切です。
粉状そうか病
粉状そうか病は、地下部のみに発生する病気です。
症状はそうか病とほとんど同じで、イモの表面にかさぶたのような病斑ができます。そうか病よりも、病斑がすこし小さいのが特徴です。
こちらも収量や味に影響しませんが、商品価値はほとんどなくなります。
種イモや土壌中の病原菌による土壌伝染が原因です。そうか病とは逆に、多湿条件の酸性土壌で発生しやすくなります。
排水の改善や、輪作、pHの調整など、総合的に土壌環境を見直しましょう。
乾腐病
乾腐病は、貯蔵中や芽出し時のイモに発生する病気です。
イモの表面に、陥没病斑や変色、白いカビなどが生じ、やがて病斑部分は腐敗していきます。乾燥にともない表面にしわが寄って硬くなり、乾腐状態となります。
また、イモの断面に空洞ができ、白やピンクのカビを形成されるのが特徴的です。
土壌病原菌が、農作業などでできた傷口から侵入して発病します。土壌消毒や輪作をおこない、作業時にはイモを傷付けないよう細心の注意をはらいましょう。
黒あざ病
黒あざ病はイモに発生する病気で、葉茎にも症状が現れます。イモの表面に、あざのような黒い菌核を形成するのが特徴的です。
萌芽時期から発生し、幼茎をつぎつぎと腐敗させ、成長させません。生育が進んだ株には、茎葉にも病斑を生じ、やがて頂葉が小型化し紫紅色に変色します。
また、多湿環境で下葉に白い粉を生じたり、地際部の茎にコブ状のイモを形成したりと、特徴が多い病気です。
種イモや土壌中の病原菌が原因で伝染します。特に種イモからの伝染が多いので、しっかり消毒された健全な種イモを使用しましょう。
黒あし病
黒あし病は、イモから発生し、株全体に影響を及ぼす病気です。
はじめに種イモが腐敗し、腐敗箇所から出た茎も黒く変色し腐敗、株の生育が抑制されてしまいます。やがて株全体に、黄化やしおれの症状が現れ、最終的には倒伏します。
伝染源は、種イモで生きていた病原菌です。黒あし病の病原菌は、土壌中で越冬できませんが、種イモでは生存可能です。
種イモから土壌中に放出され、まん延していくため、しっかりと消毒された種イモを使用しましょう。
ジャガイモ栽培での病気予防・対策
ジャガイモなどの野菜栽培では、1度発病してしまうと、完全に止めるのは難しくなります。
そのため、病気ごとの原因を知り、発病前に予防することがなにより重要です。
予防方法としては、農薬散布で予防するのが基本ですが、それだけでは十分ではありません。
下記3つの予防・対策をとり、病気の伝染源をできるだけ排除しましょう。
- 土壌伝染の予防
- 種イモ伝染の予防
- 土壌環境を整える
順番に解説していきます。
土壌伝染の予防
ジャガイモ栽培では、土壌伝染病予防は必須です。
まず大切なのが、病気の株や枯葉、イモなどの植物残渣を畑に残さないことです。
残渣を放置すると、土壌病原菌や害虫のすみかとなり、病気をまん延させる大きな原因となります。
また茎や根、イモの傷にも注意するべきです。多くの土壌伝染病は、株にできた傷口から侵入して発病します。
収穫や芽かきなどの際に傷付くことが多いので、注意しながら作業をおこないましょう。
なお、土壌伝染病が多発する原因である連作障害については、別項目でくわしく後述しています。
種イモ伝染の予防
種イモ伝染も非常に多い伝染経路なので、必ず予防しましょう。
食用や発病したもの、消毒が不十分なものを種イモとして使用すると、病気の発生率が格段に高まります。
植え付け直後に発病して欠株になったり、土壌中に病原菌を放出してまん延させたりと、デメリットしかありません。
種イモを市販で購入する際には、必ず「消毒済み」と明記されてる種イモを選んでください。
消毒していない種イモを使う場合は、アタッキン水和剤などを利用して、しっかりと消毒してから植え付けましょう。
土壌環境を整える
ジャガイモの病気予防では、地道に土壌環境を整えることが大切です。
特に排水性と肥料バランスを整えることで、大きな予防効果が期待できます。
ジャガイモは多湿環境に弱いため、土の排水が悪いと病気が増加します。
高畝にしたり、腐葉土を入れて水はけの良い土作りを意識しましょう。同時に地上部の風通しも良くすると、さらなる予防が可能です。
また、肥料バランスの良し悪しも、病気発生に大きくかかわっています。
特に窒素過多だと、株が軟弱に育ち病気に侵されやすくなるため、肥料はバランス良く入れていきましょう。
ただし、肥料を入れる際には、土壌pHが酸性やアルカリ性に偏らないよう注意してください。
ジャガイモ栽培で発生しやすい害虫の種類・予防方法
ジャガイモなどの野菜栽培では、病気だけではなく、害虫被害にも気を付けなければいけません。
ここでは、ジャガイモに影響を与える害虫の種類や、予防方法について解説します。
害虫の種類
ジャガイモ栽培で特に気を付けるべき害虫は、下記の7種類です。
- アブラムシ
- ヨトウムシ
- オオタバコガ
- テントウムシダマシ
- ナスノミハムシ
- コメツキムシ
- センチュウ
ウイルスを媒介するアブラムシや、食害するテントウムシダマシ、コメツキムシなどには特に注意すべきです。
食害された場所から、病原菌が侵入する可能性があるため、非常に厄介な害虫です。
病気予防のためにも、徹底して予防・防除をおこないましょう。
害虫の予防・防除方法
害虫も病気と同じように、発生してからの防除では間に合わないため、発生前の予防が1番大切です。
害虫予防は、基本的に農薬散布でおこないます。ジャガイモの殺虫剤では、オルトラン水和剤やスミチオン乳剤など代表的です。
ただし、農薬で完全に予防できるわけではないため、農薬散布と一緒に以下の予防方法も実施しましょう。
- 見かけたらテープなどで捕殺する
- 隠れ場所になる雑草や枯葉は除去する
- 多湿を好むので風通し・水はけを改善する
上記を徹底し、害虫を発生・侵入・増殖させないよう努めましょう。
またコンパニオンプランツとして、マリーゴールドやネギ類を一緒に植えるのもおすすめです。センチュウなどの害虫や、病原菌を寄せ付けない効果を期待できます。
ジャガイモの連作障害
ジャガイモなどのナス科植物は、連作障害が出やすいのが特徴です。作を終えた後は、1〜2年あけないと、以下のような連作障害が起こります。
- 土壌病原菌の増加
- 害虫被害の増加
- 肥料バランスの崩壊
これらの連作障害を防ぐためには、輪作をおこなうのが一般的です。
1〜2年スパンで4品目ほどの野菜を輪作すれば、病害虫被害を最小限に、ジャガイモを栽培できます。
輪作する野菜は、ナス科植物と相性の良い、ネギやエダマメ、葉物野菜などがおすすめです。
家庭菜園などで輪作できない場合は、毎作ごとにしっかりと土壌消毒をおこない、病気に強い品種を用いて、連作障害を最小限に抑えましょう。
連作障害とナスの栽培方法については紹介しています。併せて参考にしてみてください。
まとめ
以上、ジャガイモ栽培で発生しやすい病気・害虫の原因や予防方法を解説しました。
病気や害虫は、放置すると大きな損害につながるため、未然に防ぐことが1番の予防です。
是非この記事を参考に、病気の原因や予防方法の知識を身に付け、美味しいジャガイモづくりにお役立てください。