化成肥料とは?特徴や種類、メリット・デメリットを知って使いこなそう!
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化成肥料は農家にとって、とても便利な存在です。しかし、良い面と悪い面があります。使いやすいからといって適当に撒いていませんか?
間違った使い方をしている方、また効果がみられず使うのをやめてしまった方もいるでしょう。化成肥料の使い方が間違っていなくても、さらに効果的な活用法があるかもしれません。化成肥料がどのようなものかをしっかりと理解して、上手に作物を育てましょう。
目次
化成肥料とは何か
化成肥料は、その名の通り肥料の一種です。ここでは化成肥料のメリット・デメリット、他の肥料との違いなどを解説していきます。
肥料の種類について
化成肥料について説明する前に、まずは肥料の種類を把握しておきましょう。肥料には、大きく分けて「有機肥料」と「化学肥料」があります。
有機肥料は植物性、もしくは動物性の有機物が原料です。動物のフンや米ぬか、油粕などが用いられています。
一方、化学肥料は無機物を原料とした肥料です。窒素、リン酸、カリウムといった成分を含んでいます。この3つの成分は肥料の3要素と呼ばれ、このうち無機成分が1種類のみの場合は「単肥」、2種類以上の要素で構成される肥料が「複合肥料」です。また、窒素・リン酸・カリウムの合計が15〜30%のものが「普通化学肥料」。30%以上になると「高度化学肥料」です。高度化学肥料は追肥するときに使われることが一般的です。
- 有機肥料:原料 フンなど動物性の有機物
- 化学肥料:原料 窒素・リン酸・カリウムなどの無機物
- 単肥 :無機成分が1種類
- 複合肥料:無機成分が2種類以上
化学肥料=化成肥料ではない!
化成肥料と化学肥料は名前が似ています。しかし、化学肥料=化成肥料という認識は誤りです。化成肥料とは、化学肥料が基になっている肥料で、化学肥料を混ぜ合わせて成形したものや、肥料もしくは肥料の原料に化学的な操作を行ってできた肥料のことを指します。
そんな化成肥料の特徴は、効き始めるのは早いが、長期的な効果はあまりないということです。これは有機肥料とは真逆の特徴です。
有機肥料ではダメなのか?
有機肥料とは人工的に作られたものではなく、植物や動物の糞や骨など自然にあるものを原料として作られる肥料のことです。化学肥料は人工的に加工して作られた肥料という点で違いがあります。
有機肥料と聞くと、自然由来で安全なものといった印象をもたれがちです。もちろん、有機肥料にはそういった面もありますが、扱いづらく手間もかかります。化成肥料と比べると難易度はかなり高めです。
有機肥料における弊害の具体例は、「窒素飢餓」と「ガス障害」です。窒素飢餓は、炭素率が高い有機肥料を使う場合に起こりやすいとされています。微生物が窒素を取り込んでしまうせいで作物に窒素が回らず、成長が阻害されることです。
またガス障害とは、炭素率が低い有機肥料でも発生する障害です。有機物が微生物に分解された際に生じる二酸化炭素やアンモニアガスが、植物の成長を邪魔してしまうために起こります。
このように有機肥料には手間や経験、技術などが必要です。有機肥料を撒いて1カ月ほど待てば、このようなトラブルはなくなるでしょう。しかし、そんな時間をかけるのはかなりの手間です。
初心者はもちろん、大規模な農業を行う方にも負担が大きく、化成肥料を選択する方が効率的な場合があります。
こちらの記事では、有機肥料について詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。
化成肥料のメリット・デメリット
化成肥料のメリットとデメリットを説明します。
化成肥料のデメリットは?
化成肥料のメリットは以下の通りです。有機肥料に比べ使い勝手がよく、初心者でも手にしやすいのが特徴です。
- 量のコントロールも容易で労力がかからない
- 大量生産のため価格が安い
- においやガスが発生する心配がない
- 作業時間の短縮が可能で、生産性が上がる
量のコントロールも容易で労力がかからない
化学肥料を使う3つ目のメリットは「労力がかからない」ことです。化学肥料は含まれている成分を正確に把握することができます。
そのため、必要な量が一度でわかるため、何度も追肥して調節する必要がないのです。
大量生産のため価格が安い
また化学肥料は大量生産ができるため、有機肥料に比べて安価に販売されています。肥料にかかるコストを抑えることができることもメリットだと言えるでしょう。
においやガスが発生する心配がない
有機肥料は、牛糞や鶏糞など動物由来の成分から作られるため、においはキツいくなります。しかし、化成肥料は自然由来の成分から人工的に作成されているため、においはしません。
作業時間の短縮が可能
化学肥料を使うと簡単に土に変化を与えることができるため、作物を育てるのに適した環境を短期間で整えられます。
作物が育ちやすい環境を作ると、当然作物はよく育ち、よく実ります。生産性や収穫量が上がることは、農家の収益に直結します。生産性が上がることは最大のメリットだと言えるでしょう。
化成肥料のデメリットは?
一方、化成肥料にはデメリットもあります。こちらに注意して、正しく散布しましょう。
- 人と環境に負荷がかかる
- 味が変わる
- 土の中の微生物が減る
人と環境に負荷がかかる
化学肥料は水に溶けやすいため、雨が降ったときに地下水や河川に流れてしまう場合があります。植物が吸収できなかった成分が河川に流れ出ることで、環境汚染に繋がります。
また、食物に残った成分で人に影響を与えてしまうことも。特に唾液で亜硝酸態窒素に変化する硝酸態窒素は危険です。血液の中で酸素を運んでいるヘモグロビンの働きを失わせてしまうので、「メトヘモグロビン血症」を引き起こすと言われています。硝酸態窒素が含まれた牧草を食べた牛が酸欠で窒息死してしまった例も報告されているのです。
味が変わる
化学肥料を使うと、窒素分が多くなってしまい「苦い」「おいしくない」と感じてしまうことも。
もちろん窒素分もコントロールできますが、一般的に有機栽培で作られた野菜の方が自然な甘みを感じやすいと言われています。元々の土壌に含まれている成分や、味覚には違いがあるので一概には言えませんが、化学肥料を使うことで味に変化がでる可能性があることは覚えておきましょう。
土の中の微生物が減る
土の中は数多くの微生物が住んでいます。その中に化学肥料を入れることで生態系を崩してしまったり、微生物を殺してしまうことにも繋がります。
土地が死んでしまうと、当然作物もよく育ちません。豊潤な土を作ることが大切な農業にとって、大きなデメリットだと言えるでしょう。
こちらの記事では、土壌改良材について詳しく紹介していますのであわせて参考にしてください。
化成肥料の種類や形状
ここからは、化成肥料の種類や形状について説明します。メリット・デメリットの項目で少し触れたように、化成肥料には、「普通化成肥料」のほか「高度化成肥料」もあります。また、形状によって使いやすさや効き目の速度に違いがあるため、しっかり確認しましょう。
普通化成肥料
窒素・リン酸・カリウムの合計成分値が15〜30%の割合で含まれている化成肥料を「普通化成肥料」と呼びます。この普通化成肥料の中で最もポピュラーなものが「8-8-8」と呼ばれるものです。3要素が8%ずつ配合されています。
「8-8-8」の特徴は、散布する量が多くても悪影響を及ぼす可能性が低く、元肥や追肥にも使えるため、初心者にも使いやすいことです。使い勝手のよいオールマイティな肥料といえるでしょう。
高度化成肥料
3要素が合計で30%以上配合されている化成肥料を「高度化成肥料」と呼びます。高度化成肥料の中でポピュラーなのは「14-14-14」と呼ばれるものです。普通化成肥料と比べると、撒く量が少なく、効き目が現れるのも早いため、大規模な農業を行なっている方にとって便利な存在です。
ただし、成分の濃度が高く撒く量が少ないため、根を痛めてしまう危険性や、偏らずに散布することが難しいというデメリットもあります。場所ごとにムラが出やすいのは難点です。
液体化成肥料
名前の通り液体の化成肥料です。即効性が他の形状よりも高く、そのまま使うタイプと水で薄めるタイプがあります。
液体化成肥料のメリットは、黒マルチを使用した栽培の場合、追肥の際にわざわざマルチをめくる必要がないことです。また、近年増えている水耕栽培には固形の化成肥料が使えないため、液体化成肥料が重宝されます。一方デメリットは、雨に弱いため頻繁に与える必要があるという点です。
液体化成肥料は水やりのように直接与えるだけではなく、アンプルと呼ばれる小さい容器を地面に挿すタイプと、葉に吹きかけて養分を与えるスプレータイプがあります。スプレータイプは、作物の根が弱っていて養分の吸収が難しい場合などに使われます。
固体化成肥料
固体化成肥料は、土に混ぜて使うタイプです。固体化成肥料のなかでも粒状タイプは最も一般的な形状で、「8-8-8」タイプの万能型以外に、特定の作物に合わせた成分値の肥料が販売されています。
また、一回り大きい錠剤タイプや球状タイプといった固体化成肥料もあります。これらのタイプは、粒状よりも長期間にわたって効くことが特徴です。
粉末化成肥料
粉末状の化成肥料には、水に溶かすタイプと土に混ぜるタイプがあります。水に溶かすタイプは、液体性のものと同じで即効性があります。一方、土に混ぜるタイプは、粒状タイプよりも細かいため、持続性に乏しいことがデメリットです。
加工によって効き方が違う?
化成肥料は種類や形状だけでなく、加工の仕方よって効き方が異なります。それぞれの特徴を考慮して、化成肥料を選ぶことが重要です。
IB化成肥料
「IB化成肥料」とは、窒素が水に溶けないように加工されているタイプです。肥料の効果が長く続くため、使用量を減らせ、追肥の手間も少なくなります。
「IB」とは「イソブチルアルデヒド縮合尿素(IBDU)」のことであり、これが配合されることで溶ける速度をコントロールしています。なかには「IB窒素肥料」と呼ばれるものもありますが、化成肥料ではなく単肥なので注意しましょう。
被覆複合化成肥料
「被覆複合化成肥料」は透水性が低い、または非透水性の膜でコーティングされている化成肥料です。コーティング肥料とも呼ばれ、一気に養分が溶けてしまうのを防いでおり、効果に持続性があり長持ちします。
配合比率による違い
化成肥料には、窒素・リン酸・カリウムの配合比率による分類もあります。3要素の比率によって効き目は大きく異なるため、購入する際はしっかり確認しましょう。
水平型
窒素・リン酸・カリウムの比率が同率のものを「水平型」といいます。前述の通り、3つが8%ずつ入っているものが一般的で「8-8-8」と呼ばれることもあります。とても使い勝手がよい化成肥料です。
山型
リン酸の比率が多い化成肥料のことを「山型」といいます。リン酸は葉の成長にとても効果があるので、家庭菜園での野菜や果樹の栽培に最適です。
谷型
「10-5-10」のように、リン酸の比率のみ低い化成肥料を「谷型」といいます。リン酸が過剰になると野菜の収穫量や品質が低下するため、そのような場合には谷型の化成肥料を使いましょう。
上がり型
窒素<リン酸<カリウムというように、段々と配合比率が上がっていく化成肥料のことを「上がり型」といいます。上がり型は追肥のために使われるのが一般的です。鉢花や根菜類、球根植物などの栽培に適しています。
下がり型
「下がり型」は、窒素>リン酸>カリウムと徐々に比率が少なくなっていくタイプの化成肥料です。こちらも追肥用として、芝生や樹木、観葉植物、葉菜類などの栽培に用いられます。
化成肥料のおすすめの選び方、使用方法
いままで説明したように、化成肥料にはさまざまなタイプがあります。いろいろな角度から化成肥料の使用状況を考慮し、化成肥料の効果をより高めるために、組み合わせや使用時期についても見直してみてください。
元肥と追肥の両方で使用可能
化成肥料は、苗を植え付ける前に散布する「元肥」にも、作物の育成に応じて肥料を加える「追肥」にも利用可能です。元肥として使用する場合は、被覆複合化成肥料など、効果が持続するタイプを使いましょう。
また、追肥の場合は即効性のある液体化成肥料や粒状タイプがおすすめです。どの作物を育てるかによって追肥の時期は異なります。一般的には、植え付けから3週間後に投入を始め、液体化成肥料は1〜2週間、粒状タイプは3〜4週間の間隔で追加しましょう。
単肥と組み合わせた使い方
化成肥料は、窒素・リン酸・カリウムの3要素がバランスよく含まれる複合肥料です。ただ、作物によって必要となる養分は異なります。そのような場合は、1つの要素からなる単肥と組み合わせるとよいでしょう。
例えばトマトの栽培では、1平方メートルあたり窒素25g、リン酸30g、カリウム25gが必要といわれています。山型の化成肥料を用いることも考えられますが、手元にない場合は過リン酸石灰などの単肥でリン酸を補うことも可能です。
肥料だけではなく農業環境の見直しも
化成肥料は比較的安価なため、使用する種類を見直したり、変更したりすることに大きな金銭的負担はないでしょう。しかし、農業における環境整備にはかなりのお金を要します。なんといっても農機は価格が高いため、購入するのも手軽にできませんし、売却も大変です。
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まとめ
化成肥料には、形状や3要素の比率などによってさまざまな種類があります。それぞれの特徴や化成肥料自体のメリット・デメリットをしっかり把握して、上手に作物を育ててください。
また、投入時期や野菜の生育に必要な栄養素によって、化成肥料は使い分けることが可能です。まずは定番の「8-8-8」から始めて、徐々に単肥などと組み合わせる方法もおすすめです。