連作障害の種類と症状、その原因とは?対策や予防方法まとめ
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「去年と同じように栽培したにもかかわらず今年は収穫量が少ない」「昨年は生育がよかったのに今年は枯れてしまった」という場合は「連作障害」が疑われます。特に狭いスペースで栽培する場合は、連作障害のリスクが高くなるでしょう。
連作障害とはどのようなものか、その原因や症状、対策や予防方法についてご紹介します。多くの野菜農家が行っている現場で役立つ連作障害の対策もチェックしましょう。
目次
連作障害とは
毎年同じ畑やプランターで、同じ科目の作物栽培を続けると、生育が衰え病気を発症したり収穫量が下がったりします。この現象を「連作障害」といいます。
連作障害を起こす病原と主な症状
連作障害が起きると作物はどのような状態になるのでしょうか?連作障害を起こす病原の種類ごとに紹介します。
1.土壌病害
土壌伝染性病害とも呼ばれ、土中に潜む菌類や細菌、ウイルスなどの病原体が、作物の根や茎から侵入、増殖して病気を発症する連作障害の代表例です。土壌病害の病原体は同一の作物栽培を続けると増加します。主な病名や症状、対象となる野菜は次の通りです。
青枯れ病
梅雨入りから10月頃まで高温多湿の時期に発生しやすく、ナス科の野菜に多い病気です。日中は茎や葉が萎えて、曇りの日や夜は一時的に回復する状態が続くことで、青いまま枯れてしまいます。
茎や根を切ると変色し、乳白色の液体が出ます。短期間で株全体に被害が広がるので注意が必要です。
根こぶ病
ハクサイやキャベツなどアブラナ科の野菜のみが発症する病気です。最高気温が20~30度前後の頃、時期的には4~10月頃に発生しやすいでしょう。根の細胞が極端に大きくなり、大小のこぶができます。
アブラナ科以外の野菜や花き類にもこぶができますが、これはネコブセンチュウという寄生虫が原因です。根こぶ病のこぶの方が大きいといわれています。根こぶ病を発症すると次第に生育不良となり、葉が色あせていきます。
つる割れ病
根こぶ病と同じく4~10月頃に発生することが多く、キュウリやスイカなど特にウリ科の野菜に発症する病気です。発症すると昼間は下葉が萎えてしまい、夜になると回復する状態を繰り返します。
次第に株全体へ広がり、夜間も生気が失われた状態になります。症状がさらに進むと、茎から茶褐色の汁が出たりカビが発生したりするので注意してください。
萎黄病(いおうびょう)
最高気温が25度以上になる日から夏の終わり頃に発生します。ダイコンやキャベツなどアブラナ科の野菜に多い病気です。葉が小さかったり形がいびつであったり、新しい葉も黄色くなって枯れて落葉したりします。
特に気温が高いときは状態がひどくなる傾向です。茎も切ると変色しており、根は黒くなって腐敗してしまいます。
半身萎凋病(はんみいちょうびょう)
最高気温が25度前後で湿度が高い時期に多く発生し、真夏の高温期に発生することは稀です。ナスやトマトなどナス科の野菜が発生しやすい病気です。
最初は片方の下葉が黄変し、片側だけ葉がくるっと巻いてしまいます。次第にもう片方の側も黄変し、やがて株全体に広がって枯れます。茎を切ると薄茶色に変色しているのが特徴です。
2.線虫害
作物に寄生する線虫が引き起こす生育不良のことで、主に根にこぶができたり、根腐れを引き起こしたりして枯れてしまいます。土の中にいる卵の線虫は、孵化すると約1ヶ月で成虫になります。3~10月に発生しやすく、15~30度前後で湿度が高いと増殖するのが特徴です。
体長1mm以下で肉眼ではほとんど見えません。根に寄生することが多いネコブセンチュウやネグサレセンチュウ、ダイズやジャガイモに寄生するシストセンチュウなどが代表的です。
3.生理障害
生理障害とは土壌成分の過剰や不足、温度変化や降水量、日差しのストレスによって起きる作物の生育不良です。作物によって土壌養分の適切なバランスが異なるため、作物に合わせて肥料を施す必要があります。
作物の生育に欠かせないのが窒素・リン酸・カリウムの三要素で、三要素の次に重要なのがカルシウムやマグネシウム、硫黄です。また、作物の生育に必要な微量要素には、鉄やマンガン、亜鉛などがあります。これらの養分に過不足があると次のような生理障害を引き起こすので注意が必要です。
窒素過剰
窒素は適量であれば、葉や茎が大きく育ち、葉の緑も濃くなり、作物が大きく成長します。しかし、窒素を過剰に投与すると葉は青々となり花が咲きますが、実は生りません。
カルシウム不足
カルシウムは作物の細胞壁や細胞膜を強くし、病気に対する耐性を高める働きがあります。カルシウムが不足すると、例えばトマトのお尻部分や地面に近い外葉が黒褐色に変色し、症状が進むと株全体が腐ってしまうのです。
マグネシウム不足
マグネシウムの働きは、葉緑素を作り、光合成を促すことです。マグネシウムが不足すると葉の葉脈以外が黄変します。
連作障害が起きてしまう原因
連作障害の原因は1つではなく、いくつもの原因が重なって起きると考えられています。主な原因は次の通りです。
土壌養分の偏り
同じ場所で同じ種類の野菜を作り続けると、特定の栄養分だけが吸収され、土壌ではその成分が不足します。逆に野菜に不必要な栄養分は土壌中に残ります。連作によって土壌の栄養成分のバランスが崩れ、生理障害などの生育障害を引き起こすのです。
病害虫の繁殖
土壌養分が偏れば、土壌中の微生物のバランスも崩れます。特定の野菜につく病害虫が多いため、連作すれば、その野菜特有の病害虫が大量に繁殖してしまう可能性も否定できません。
植物の自家中毒
植物には、他の植物の生育を阻害する成分を出すものがあります。連作によって阻害成分の濃度が高まると、自らが生育障害を引き起こす自家中毒になり、連作障害となってしまうのです。
連作障害が起きやすい野菜と栽培間隔の目安
連作障害を起こさないためには、連作をせずに栽培間隔を開けることです。この間隔には年限の目安があります。次の年限を目安に数年単位で、野菜の栽培計画を立てるようにしましょう。
栽培間隔3~4年:ナス科・サトイモ科など
トマトやナス、ジャガイモ、トウガラシ、ピーマン、サトイモなどは栽培間隔を3~4年空けてください。他にイチゴやショウガ、スイカなどがあります。
栽培間隔2~3年:ウリ科・マメ科など
キュウリやカボチャ、ゴーヤ、ソラマメ、インゲン、落花生などは栽培間隔を2~3年空けてください。他にニンジンなどがあります。
栽培間隔1~2年:アブラナ科など
ダイコンやカブ、ハクサイ、キャベツ、コマツナなどは栽培間隔を1~2年空けてください。他にネギやシュンギク、ホウレンソウなどがあります。
連作障害が起きにくい野菜
連作障害が出にくい野菜には、サツマイモやズッキーニ、トウモロコシ、クウシンサイ、ニンニク、アスパラガスなどがあります。栽培間隔は土の状態によっても異なるため、上記の年限はあくまで目安にしてください。
連作障害の対策・解決方法
連作障害を防ぐための対策と、起きてしまったときの解決方法をご紹介します。農家で実際に行われている土壌消毒は、最終手段として現場で役立てましょう。
1.輪作
連作障害を防ぐ基本的な方法は「輪作」です。毎年同じ場所で同じ科目の野菜を栽培せず、異なる科目の野菜を順番に植え、計画的に栽培していきます。
そうすることで土壌環境が偏らず、微生物も豊かになり連作障害が起きにくくなるはずです。先述した栽培間隔の年限を参考に畑を4~5つに分割し、輪作を行うとよいでしょう。
2.コンパニオンプランツ
作物と作物の間に別の作物を植える間作や、株間に別の作物を植える混植を行うと、土壌のバランスが崩れるのを防ぎます。トマトやキュウリにはネギ科の植物を植えるなど、互いによい影響を与える植物を「コンパニオンプランツ」と呼びます。
3.田畑の入れ換え
田畑輪換は主に農家で行う方法です。3~4年間隔で水田と畑の土壌環境を入れ換え、イネと野菜を交互に栽培します。
4.堆肥や青刈作物の投入
完全に発酵させた完熟堆肥など有機物を畑に投入すると、土壌中の微生物が増え、土壌養分が豊かになります。野菜作りの合間に葉や茎を飼料として利用する青刈作物を栽培し、種や実が成る前に刈り取って土にすき込むのも有効です。
5.連作に強い品種を育てる
キュウリやトマト、スイカなどは連作障害に強い接木(つぎき)苗を選ぶ方法があります。接木苗とは、2種類の植物をつなぎ合わせて、両方の良い部分を持った植物を創ることです。
初心者が作るとなるとハードルが高いので、ホームセンターなどで購入するのが無難です。また、土壌病害に抵抗性のある品種もあり、根こぶ病なら「CR」、萎黄病は「YR」の文字がついた品種を選ぶとよいでしょう。
6.土壌消毒
契約農家などが連作障害を回避するために行う有効な方法が土壌消毒で、特に土壌病害に有効です。ビニールなどで覆った土壌に太陽熱を当てたり、蒸気や熱水を注入して土壌の温度を上げたりして消毒します。安定した効果と経済性を考え、土壌消毒剤を撒くことも多いでしょう。
また、土壌消毒やpH値の調整のために石灰資材が使われることがあります。石灰資材はアルカリ性が強いことから、使用方法を誤ると悪影響を及ぼします。用途に合わせた方法で使用しましょう。
連作障害を予防する育て方
連作障害を起こさないためには日頃から予防を心がけることが大事です。作物を育てるときは次のことを基本にしましょう。
栄養成分に偏りのない土作り
最初の土作りのときから養分や土壌微生物のバランスを意識することで、連作障害が起きにくくなります。雑草を堆肥にすると野菜と共生する微生物が増えやすいのでおすすめです。
雑草や緑肥を増やして畑を休ませる
野菜作りを休む時期を作ると、自然が土壌バランスを回復させてくれるので、連作障害を低減します。クローバーやイネ科のソルゴーなど、緑肥作物を植えると土の再生に役立つでしょう。
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まとめ
作物の生育不良を引き起こす連作障害は、同じ科目の野菜を同じ場所で作らないように、計画的な輪作を行うことで、防ぐことが可能です。もし、連作障害が起きてしまっても土壌消毒などを行えば、比較的短期間に土壌を回復させられます。
ただ、土壌消毒を行うには労力やコストもかかります。日頃から土壌養分のバランスを考えた土作りを行うようにし、時には作物栽培を休む期間を作って畑を休ませるのも1つの方法です。