接ぎ木の仕方を基本から紹介|適切な時期や失敗しない組み合わせなど徹底解説!

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接ぎ木は野菜や植物などを増やす方法の1つですが、一般的に広く知られてはいないでしょう。しかし、接ぎ木は古くから行われている方法で、成功すれば丈夫になったり、成長が早くなることもあります。決して効率のよい増やし方ではなく、難しい部分も多い接ぎ木ですが、病害虫の被害も少なくなるため知っておいて損はありません。

今回の記事では、「接ぎ木の仕方や基本」「必要になる道具」などを中心に解説していきます。

接ぎ木とは

接ぎ木は野菜や植物同士をつなぐ方法で、2つ以上の植物を1つの植物として育てられます。難しいことも多い方法ですが、原理や目的などから確認していきましょう。

接ぎ木の原理

接ぎ木の原理はいたって単純です。植物には「形成層」と呼ばれる経路が外皮の内側にあり、元となる台木と成長させたい穂木の形成層を合わせることで1つにつながります。枝の中心部分をつなぐと思われがちですが、実際には外皮のすぐ内側にある形成層が重要になってくることを覚えておきましょう。つまり、原理としては台木と穂木の形成層と呼ばれる経路がひっつくことで1つの植物となります。
接ぎ木はまだまだ明らかになっていないことが多いですが、原理としては非常に単純なものになっています。

接ぎ木の目的

接ぎ木の目的としては、いくつかに分けられます。最初に「病害虫に強くする」ことです。病害虫に弱い品種を穂木として、病害虫に強い台木に接ぎ木すれば病害虫に強く育てることが可能になるでしょう。2つ目は「1つの木に複数の品種を揃える」ことです。接ぎ木のおもしろいところは、台木となる木に複数の穂木を接ぎ木できる点でしょう。1本の木にりんごと梨を揃えたり、巨峰、マスカットといった別の品種を1つの木にまとめられます。
最後に「連作障害に強い」という部分です。野菜などの生産は同じ場所で続けていると生育不良などが起こる連作障害の可能性が高くなるため、基本的には一定期間、別の野菜を生産することが基本でしょう。しかし、連作障害に耐性のある台木を使えば連作障害に強い苗を作れます。他にも接ぎ木を行う目的はありますが、大きくはこの3つになるでしょう。

接ぎ木に適切な時期

接ぎ木は時期に関係なくできるわけではありません。
適切な時期があり、3、4月が適正とされています。なぜ、この時なのかという疑問が出来てきますが、植物は傷がついた時に直そうとするカルス(癒傷組織)が分泌され、傷を治そうとします。接ぎ木はカルスを利用した方法になるため、植物がカルスを作りやすい時期である3、4月が成功させるポイントになると考えておいてください。最適な時期としては3、4月ですが、地域やハウスによっては少しずれてきます。25°から30°ぐらいを目安にしてもらうとわかりやすいかもしれません。

接ぎ木のメリットとデメリット

続いて接ぎ木のメリットとデメリットを解説していきます。接ぎ木には多くのメリットがありますが、人によってはデメリットに感じる部分もあるでしょう。メリットとデメリットを比べることで、接ぎ木を行うべきかどうかが判断ができます。

メリット

接ぎ木のメリットは目的と重なる部分が多いですが、主には次の3つになります。

  • 病害虫に強い
  • 環境に適応しやすい
  • 連作障害に強い

接ぎ木の共通のメリットとしては「育ちやすさ」が中心になってくるでしょう。病害虫に強い台木を使うことで、農薬の散布回数を減らして収穫量の増加を見込めます。また、寒暖差に強い台木を使えば弱い苗よりも確実によい生育が期待できます。接ぎ木は難しい内容も多いですが、挑戦するには十分なメリットになるでしょう。

こちらの記事では、病害虫対策に効果的なコンパニオンプランツについてまとめていますので、あわせて参考にしてください。

デメリット

続いてデメリットを解説していきます。

  • 苗を購入する場合は値段が高くなる
  • 接ぎ木は失敗の可能性もある

主なデメリットはこの2つでしょう。まず、接ぎ木された苗を購入する場合には通常の苗と比べると値段が高くなってしまいます。病害虫に強かったり、環境に適応しやすい接ぎ木苗は付加価値があるだけではなく、人の手がかかっているため、通常の苗の2倍ほどの値段が基本となっています。
また、自分で接ぎ木を行う場合には時間と技術が必要になるでしょう。接ぎ木は方法が多く、野菜や植物の種類によっても最適な方法が違ってきます。また、100%の成功率というわけではなく、接ぎ木の技術が足りない場合には失敗する可能性が高くなります。接ぎ木はメリットの多い方法ではありますが、デメリットもあるため、しっかりと理解しておきましょう。

接ぎ木の仕方

接ぎ木には様々な方法がありますが、一番、汎用性がある「枝切接ぎ」を中心にして解説します。 基本の方法で他に応用が効くため、しっかりと確認しておきましょう。

準備しておくもの

まず、準備するものとして必須なのは次の2つです。

  1. ナイフ(カミソリ)
  2. 接ぎ木テープ

この2つは接ぎ木を行う上で必須になるため準備しておきましょう。ナイフの代わりに剪定バサミでも可能ですが、形成層を潰してしまうため、できれば専用のナイフやカミソリがおすすめです。

そしてもう一つ重要な道具が「テープ」です。違う植物同士をつなげるため、固定するテープは必須の道具と言えるでしょう。また、癒合剤があれば台木と穂木を早く融合できます。癒合剤は人間でいうところの傷薬のようなものだと考えてもらえれば大丈夫ですよ。

接ぎ木の手順

接ぎ木の手順を解説していきます。基本的には難しいものではなく、穂木と台木を準備し、2つを接いでいく形になります。

穂木の準備

まずは、増やす野菜や植物の穂木を準備します。穂木を切る時には長すぎない程度に切りましょう。長すぎると、固定される前に自重で折れてしまう可能性が高くなります。
また、形成層が重要なので、切る時に押しつぶさないほうが接ぎ木の成功率が高くなります。何度も切りつけると潰れてしまうため、1回で切れるような太すぎない穂木がポイントですよ。次は、斜めに穂木の根本側を切り落とし、枝を反対にして3cmほど表面を削りましょう。形成層を剥き出しにすることで成功率が高くなります。

台木の準備

続いて台木の準備をします。こちらは、土台となる部分なので、穂木の種類で考えることになります。「枝切接ぎ」の場合では土台となる台木を真っ直ぐ切り落とし、形成層を露出させるために縦に皮を剥ぎましょう。穂木を皮の間に挟む形で接ぐため、皮を落としきらず残しておくことがポイントです。

穂木を台木に接ぐ

最後に穂木を台木の皮を剥いだ場所に差し込んでいきます。穂木と台木の形成層が密着するようにしましょう。あとは接ぎ木用のテープで完全に固定すれば完成です。断面が乾かないように隙間なく固定するのがポイントですよ。おすすめのテープはのちほど紹介していきます。

接木苗の作り方・選び方、メリット・デメリットなどはこちらの記事で詳しく説明しています。是非参考にしてみてください。

接ぎ木の種類

接ぎ木にはいくつか種類がありますが、中でも基本となっている方法を紹介します。 品種や成長時期によって変わってくるため、どの方法が使えるのかを確認しておきましょう。

枝切接ぎ

「接ぎ木の仕方」で解説した方法ですが、最も多くの種類で使える方法になります。接ぎ木の基本とも言えるため、覚えておいて損はないでしょう。また、手順もシンプルになるため、初めて行う場合には試しておきたい方法です。接ぎ木の基本や面白さを学べますよ。向いているのは野菜というよりも、果樹といった木になります。

三角接ぎ

三角接ぎは成功率の高い方法ですが、少し上級者向けになります。台木にV字の切り込みを入れ、穂木も台木に合うように尖った形を作ります。このように切り込みの形が難しいため、慣れが必要な上級者向けの方法と言えるでしょう。しかし、形成層の設置面が多く、カルスが出やすいため成功率の高い方法でもあります。向いているのは、ツバキやハイビスカスといった花類や梅になります。

芽接ぎ

芽接ぎは台木を完全に切り落とさずに側面に切り込みを入れて行うため、失敗しても再度調整が可能な方法です。穂木は芽の部分だけを使うため、簡単なのも大きな特徴でしょう。向いている種類としては桃や柑橘系などになります。

根接ぎ

根接ぎは一般的な接ぎ木とは違い、根の部分を強くするための方法になります。根が弱くなっている場合などに根がついた穂木を使用し、新しい根として成長させていきます。少し特殊な方法になるため、初心者には難しいでしょう。向いているのは梨やぶどうです。

苗の場合

ここまで紹介した方法は基本的に木などが中心となってきます。しかし、トマトやきゅうり、なすといった野菜類も接ぎ木できます。主な方法としては、「幼苗接ぎ木」「呼び接ぎ」「割り接ぎ」の3つになるでしょう。いずれも苗の段階で接ぐことになるため、テープで固定するのではなく、接ぎ木用のクリップやチューブなどを使用することが多くなります。

こちらに記事では、きゅうりの育て方ナスの育て方について解説しています。こちらもあわせて参考にしてください。


接ぎ木に失敗しないためのポイント

接ぎ木はまだまだ研究段階にあり、方法によっては成功率は高くありません。しかし、年々、優れた方法が開発されています。確実な成功は難しいですが、できる限り接ぎ木に失敗しないためのポイントを解説していきます。

接ぎ木の組み合わせを考える

どのような品種同士でも成功するわけではなく、近い種類であるほど成功率は高くなります。親和性と呼ばれますが、親和性が高ければ高いほど成功率は上がり、まったく違う品種で親和性が低ければ成功率は低くなります。しかし、同じ種類に属する品種同士でもうまくいかない場合もあるため、あくまで「親和性が高いほうが成功しやすい」ぐらいで考えておきましょう。

活着を良くするため断面を乾燥させない

接ぎ木は形成層がひっつくことで1つに融合するため、接ぐ断面の形成層が乾かないようにすることが重要です。植物が傷を治すために分泌するカルスが乾いてしまっては融合することはありません。のちほど紹介しますが、専用のテープであれば巻くだけで断面が乾く心配はなく、従来の方法であれば接ぎ木用の癒合剤やワックスを塗って乾燥を防ぎます。

作業は日陰で行う

作業は日陰で行うようにしましょう。苗であればハウスに遮光をかけたりで対応できますが、台木が成長した木であれば夕方や曇りの日がおすすめです。接ぎ木は乾燥させないことが重要なので、接ぎ木を行う日だけではなく、ある程度融合するまでは直射日光をあてないほうがよいでしょう。

切れ味のよいナイフを使う

接ぎ木は断面の形成層が重要になるため、穂木や台木を切る時には切れ味のよいものがおすすめです。とくに剪定バサミでは、断面の形成層を潰してしまい、成功率を下げることになってしまいます。小さい苗などの場合には専用のカミソリや、枝が少し太くなる場合には専用のナイフを使うようにしましょう。あくまで成功率を高めるためなので、他のハサミやナイフを使うと失敗するというわけではありません。

接ぎ木におすすめのテープ

台木と穂木を固定する必要があるため、テープが必要になります。テープの使い勝手によっては成功率に大きな差がでるため、慎重に選ぶようにしましょう。今回、紹介するテープは1種類だけですが、とても画期的なものになっているので、十分に接ぎ木を成功に近づけられます。

ニューメデール

ニューメデールは接ぎ木用のテープとしては画期的なテープと言えるでしょう。従来であれば、テープは穂木と台木を固定するためだけの用途で乾燥を防いだり、融合を早めるためにはワックス、癒合剤が必要でした。また、上からビニールを被せ雨水からも守る必要がありましたが、ニューメデールはそういった必要がなく、テープのみで完結します。穂木と台木の固定だけではなく、乾燥を防ぎ、余分な雨水などを侵入させないため、最近の定番となっています。

まとめ

今回は接ぎ木の仕方や基本を解説していきました。まだ研究段階にあり、判明していないことも多いですが、病害虫対策としても人気の方法です。もし、初心者で技術がない場合には、すでに接ぎ木された苗を購入するのもよいでしょう。

「自分で挑戦していきたい」という気持ちであれば、今回の記事を参考にしてみてくださいね。

こちらの記事では、連作障害の対策方法についてまとめていますので、こちらも参考にしてください。