イチゴがかかる病気の原因と対策方法 │ 土耕・水耕栽培の病気予防も解説
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イチゴの病気は全部で25種類ほどあり、葉茎・株・果実の部位ごとに様々な症状が現れます。1度発病すると、完全に防除するのは難しいため、発病前の対策・予防が栽培成功への鍵です。
本記事では、イチゴがかかる病気の特徴や原因、適切な対策方法などを、元種苗メーカー社員の筆者が解説しています。
是非この記事を参考に、イチゴ栽培に不可欠な病気の知識を身に付けてください。イチゴの栽培方法についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
目次
イチゴがかかる病気とその症状
イチゴがかかる病気は25種類ほどあり、その中から特にかかりやすい10種類の病気を紹介します。
葉茎・株・果実の部位ごとに、その症状や原因を見ていきましょう。
イチゴの葉茎に発症する病気
イチゴの葉茎に発症する主な病気は、下記の5つです。
- 炭疽病
- うどんこ病
- 輪斑病
- じゃのめ病
- 芽枯病
炭疽病
炭疽病は、葉や葉柄、ランナーなどに発生する病気です。
葉に黒く窪んだ病斑をつくり、症状が広がると先端部から枯れ、クラウンが侵されると枯死します。
炭疽病の主な原因は、植物残渣による土壌伝染や親株からの遺伝です。28℃前後になると発病し、気温が下がると進行は止まります。
また、泥はねによる胞子の飛散で被害が拡大していくので、雨や頭上かん水には注意しましょう。
うどんこ病
うどんこ病は、うどん粉のような白いカビを発生する病気です。
主に葉っぱに出る病気で、葉全体が白く覆われると光合成ができず、イチゴの生育が阻害されます。
イチゴのうどんこ病は、乾燥・多湿はあまり関係なく、20℃前後の気温で発生しやすいのが特徴です。1度発病すると止めるのが難しいため、農薬の予防散布を徹底しましょう。
輪斑病
輪斑病は、育苗期の葉や葉柄、ランナーに発生しやすい病気です。
はじめは葉に赤褐色の小斑点が現れ、進行すると中心部が壊死し、輪紋状の病斑になります。やがて外側が紫褐色、内側が灰褐色の大きな病斑になり、翌年の病原菌となる柄子殻を生じます。
輪斑病は、高温多湿条件で発生し、気温が下がると進行が止まります。気温・湿度ともに高くなる、6〜9月の育苗期は特に発生しやすいので、温度・湿度の管理に細心の注意を払いましょう。
じゃのめ病
じゃのめ病は主に葉に発生し、のちに葉柄やランナー、果柄にも影響が出る病気です。
葉にできた赤紫色の小斑点が6mmほどまで拡大し、中央が灰褐色、周囲が紫褐色のじゃのめ状の病斑になります。
輪斑病とよく似ていますが、じゃのめ病の病斑は比較的小さいため、見分けが付きます。主に土壌伝染や空気伝染によって菌が広がり、多湿条件下で発病に至るので、排水や風通しの改善に努めましょう。
芽枯病
芽枯病は、新芽や葉柄、果柄などの地際部によく発生する病気です。
はじめに新芽や蕾がしおれ、進行すると黒褐色になり枯れます。病斑上にクモの巣のようなカビを形成するのが特徴的です。
葉柄や果柄基部に発病すると、葉・果実の奇形、着果数の減少などの症状が現れ、ひどい場合は枯死します。
土壌伝染や苗伝染によりまん延し、多湿条件で発生しやすくなります。密植や深植え、かん水過多にならないように注意しましょう。
イチゴの株に発症する病気
イチゴの株に発症する主な病気は、以下の3種類です。
- 疫病
- 萎黄病
- 萎凋病
疫病
疫病は、根やクラウン、葉などのイチゴ全体に症状が出る病気です。
発病すると、クラウンと根の基部が褐色になり、やがて地上部に立ち枯れ症状が現れます。
葉には、黒褐色の窪んだ病斑が生じ、拡大すると不整形の病斑になります。疫病は、主に土や水が伝染源となり、多湿環境で発病しやすくなる病気です。
雨よけで育苗し、さらに排水を良好にすると、大幅に発病を抑制できます。
萎黄病
萎黄病は、根から伝染する病気です。
はじめは新葉が黄緑に変色し、小葉1〜2枚が奇形になります。高温で症状が悪化し、最終的に枯死します。
発病株は根が腐敗し、クラウンの断面やランナーの維管束が褐変するのが特徴です。
土壌伝染などで菌が広がり、25〜30℃の高温条件で発病します。低温になると、止まることもありますが、発病後の防除は基本的にはできません。
土壌消毒をおこない、無病苗を用いて、発生の原因を排除しましょう。
萎凋病
萎凋病は、萎黄病と同じく、根から伝染する病気です。
はじめは、外葉の葉柄に紫褐色の条斑ができ、進行すると小葉がしおれます。やがて、外葉全体が青枯れ状態になって枯死します。
発病株は、クラウンや葉柄などの維管束部分が褐変しますが、萎黄病ほど全体的に変色しません。
主に土壌伝染、苗伝染により菌がまん延し、20〜25℃ほどの涼しい時期に多発します。
しっかりと土壌消毒をおこない、伝染源となる菌を畑に持ち込まないようにしましょう。
イチゴの果実に発症する病気
イチゴの果実に発症する主な病気は、以下の2つです。
- 灰色かび病
- うどんこ病
灰色かび病
灰色かび病は、主に果実に発生する病気で、進行がひどいと葉や葉柄にも発生します。
果実に褐色の小斑点が現れ急速に拡大、表面に灰色のカビが生え、軟化・腐敗に至ります。
主な原因は、前作に飛散した胞子による土壌伝染です。20℃前後の低温と多湿環境で発生しやすく、急激な冷え込みで結露すると、さらに発生を助長します。
十分な換気や摘葉で湿度をコントロールし、発病防止に努めましょう。
うどんこ病
うどん粉のような白いカビを発生するうどんこ病は、果実にも大きな被害を与えます。
果実にカビが発生すると、色づきや味が悪くなり価値が大きく下がるため、収益低下に直結します。
20℃前後の春・秋に発生しやすく、うどんこ病は1度発症すると、止めるのは難しい病気です。
予防散布の際に、果実にも農薬がしっかりかかるように散布し、発病を防ぎましょう。
イチゴの病気対策・予防方法
イチゴなどの農作物は、1度病気が発生したら完全に防除するのは難しいので、病気が発生する前の予防が命です。
前提として、イチゴ栽培での基本的な予防方法を知っておきましょう。
- 厳選した無病の親株から苗を採る
- 発病前から定期的な予防散布をおこなう
- 風通し・日当たりの良い環境で栽培する
上記3点は、イチゴ栽培において欠かせない予防方法です。必ず実践してください。
また、イチゴの栽培方法は「土耕栽培」と「水耕栽培」に大別でき、予防方法や注意すべきポイントが異なります。
それぞれの栽培方法で有効的な対策、予防方法を詳しく見ていきましょう。
土耕栽培
古くから利用されている土耕栽培は、名前のとおり土で育てる栽培方法です。土耕栽培での病気予防として、以下2つのポイントは必ず押さえてください。
- 輪作をおこない連作障害を避ける
- しっかりと土壌消毒をおこなう
イチゴの病気は、土壌伝染によるものが多いため、土を使う土耕栽培では発病リスクが非常に高いです。
逆に言うと土壌伝染病さえ出なければ、その年の被害はかなり少なくすみます。
そのため、輪作で連作障害を避ける、土壌消毒をおこなう、といった基本的な方法で土壌環境を改善しましょう。
水耕栽培
水耕栽培は、土の代わりに水を培地として育てる栽培方法です。
病気予防のポイントは「水を清潔に保つこと」が最重要です。
水耕栽培は土を一切使わないため、土壌伝染病の発生確率が格段に下がります。しかし、絶対に発生しないわけではありません。
1度病気が発生してしまうと、水を通じてまたたく間に伝染し、全滅する可能性もあるのです。
そのため土耕栽培よりも、病気には細心の注意を払うべきと言っても過言ではありません。
普段から水をこまめに換え、ベンチも清潔に保ち、水質が悪くならないよう心がけましょう。
イチゴの害虫対策
農業や家庭菜園では、病気だけでなく害虫にも注意が必要です。
ここでは、イチゴに被害を与える害虫の種類、対策方法について解説します。
- 害虫の種類
- 害虫の対策・予防方法
順番に見ていきましょう。
害虫の種類
イチゴ栽培で特に発生しやすい害虫は、下記の8種類です。
- アブラムシ
- ハダニ
- アザミウマ
- コナジラミ
- ヨトウムシ
- コナガ
- タバコガ
- ナメクジ
中でもアブラムシやハダニは、多く見られる害虫です。
ウイルス病を発病させたり、葉っぱを枯らしたりと、大きな被害をもたらすので発生させないよう徹底的に予防しましょう。
害虫の対策・予防方法
害虫対策では、虫を侵入・発生・増殖させないことが重要です。発生前の予防に力を入れましょう。
害虫の対策・予防は、基本的に農薬でおこないます。
防除できる害虫が農薬によって異なるので、うまくローテーションを組み、まんべんなく防除するのがおすすめです。
イチゴに登録のある農薬では、アブラムシやアザミウマなどに効くモスピラン顆粒水溶剤、ハダニやタバコガなどに効くアファーム乳剤などが代表的です。
また、農薬散布とあわせて、必ずやるべき対策・予防が4つあります。
- 防虫ネットや寒冷紗を張って侵入させない
- 湿気を好むので風通し・日当たりを良くする
- 隠れ場所になる雑草や枯葉はすぐに除去する
- 害虫を見かけたらガムテープなどで捕殺する
上記を実施することで、害虫の侵入・発生・増殖を最低限に抑えられます。必ず押さえておきましょう。
まとめ
以上、イチゴがかかる病気の原因や対策方法について解説しました。
イチゴは病気に侵されやすい植物なので、病気にかからないよう予防する、環境を整えることが1番大切です。
適切な対策・予防方法さえ身に付ければ、家庭菜園などでも栽培しやすいので、記事を参考にしながら、是非イチゴ栽培に挑戦してみてください。