耕作放棄地の問題とは|農地を無駄にしない活用事例や補助金について解説
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最近では、農業従事者の高齢化や後継者不足もあり、廃業する農家が増えています。
農家が廃業すると、農地が放置され、耕作放棄地となってしまいます。
廃業だけではなく、家族が農地を相続しても、使い道がなく、放置されてしまうことも要因の1つでしょう。
使われていない農地は、耕作放棄地だけではなく、遊休農地や荒廃農地とも呼ばれます。
耕作放棄地には様々な問題があり、農地を無駄にしないためにも、再生や活用といった方法が必要です。
「日本の農地を無駄にしない」と言うと遠い問題のように感じますが、耕作放棄地問題は身近に潜んでいます。
耕作放棄地を所有していると、周りへ悪影響も与えてしまう可能性があります。
今回の記事で耕作放棄地の問題や、再生方法、活用方法などを確認してみてください。
農地転用や土地活用に関連する農地法についての記事も用意しています。併せて参考にしてみてください。
目次
耕作放棄地とは
最初に、耕作放棄地について解説していきます。
似た言い方もあるため、どういった農地が耕作放棄地になるのか、確認していきましょう。
耕作放棄地は1年以上農地として利用していない土地
耕作放棄地は1年以上、農地として利用していない土地のことです。
また、数年以内に使う予定がないことも、判断基準の1つになります。
耕作放棄地は、現在、農作物の栽培を行なっておらず、数年は使う予定のない農地です。
遊休農地との違い
耕作放棄地と似た遊休農地があります。
同じように考えられていることもありますが、耕作放棄地とは異なる農地です。
遊休農地は、現在も将来的にも、使われる見込みのない農地とされています。
ここだけでは耕作放棄地と同じですが、もう1つの定義があります。
「周辺地域の農地と比べて、利用が著しく劣っている農地」です。
つまり、利用はしているものの、活用しきれていない場合が該当します。
例えば、農地の一部で家庭菜園ほどの利用しかないのであれば、遊休農地と判断できます。
荒廃農地との違い
もう1つ、荒廃農地があります。
放置されている農地の中では、一番、再生や改善が難しい農地です。
農地として利用されないまま荒廃した農地を指すので、耕作放棄地よりも状態の悪い農地を指します。
しかし、荒廃農地の中には、再生が可能な農地もあるため、少し曖昧な分け方です。
耕作放棄地は5年に1度の農林業センサス(アンケート)の回答で決まりますが、荒廃農地は農業委員会の調査で判断されます。
簡単には、耕作放棄地が数年の放置、荒廃農地はそれ以上放置された農地と考えてください。
耕作放棄地を農地以外に転用する際の手続き・申請方法はこちらの記事を参考にしてみてください。
耕作放棄地の面積と推移
日本の農地は減少を続けていますが、反対に耕作放棄地は増加傾向です。
農地が減少している1つの要因は、市街地化が進み、農地が宅地に転用されることです。
さらに、農業従事者が減っていることで、耕作放棄地の増加につながっています。
耕作放棄地は、平成2年の21.7万haから、平成27年には約2倍の42.3万haへ増加。
反対に農地では、昭和中期頃と比べると、平成27年には約159万ha減少しました。
耕作放棄地が増加する原因
耕作放棄地が増加する原因は様々ですが、主な原因を3つ紹介します。
平成27年の農林水産省による、実態把握調査です。
・高齢化、労働力不足
一番の要因は、高齢化と労働力不足です。
前述した通り、高齢化による農家の引退や、労働力が足りず、農家を継続できないことが大きな原因となっています。
・非農家の増加
非農家の増加は、農業に従事していない人が農地を所有している場合です。
主には、農地を相続した場合に起こります。
自分では農業を営んでいないため、農地を相続しても活用できません。
・農産物価格の低下
最後に農産物価格の低下です。
農業は自然を相手にするため、その年によって農産物の価格は変動します。
数年に渡って価格が低いままのこともあるので、生活が厳しく、廃業してしまう農家も少なくありません。
耕作放棄地の問題とは
耕作放棄地は、ただ放置されているだけではなく、問題もあります。
主な問題点を4つ紹介します。
農地として使いにくくなる
耕作放棄地は荒廃農地、一歩手前の状態です。
農地は、人が手をかけて、土壌の質を維持するものです。
放置期間が長ければ長いほど、土壌の状態は悪くなり、農地として使いにくくなってしまいます。
耕作放棄地であれば、再生や活用も可能ですが、荒廃農地になってしまうと、農地としての利用が難しくなります。
周辺農地への悪影響
耕作放棄地は、管理されていない農地になるので、雑草が刈られることなく成長します。
雑草が増えると、害虫も発生しやすくなり、周辺の農地へ被害を与えてしまいます。
また、周辺が住宅であれば、近隣住民の迷惑になってしまい、最悪の場合にはトラブルに発展するかもしれません。
耕作放棄地は、周辺の住宅や農地へ、少なからず悪影響があります。
不法投棄場所になる
耕作放棄地は、周りから見ても使われていないことが一目でわかり、雑草が目隠しとなってしまいます。
大型の家具や家電など、不法投棄場所となってしまう可能性があります。
不法投棄が増えてしまうと、農地を再生したい場合にも片付けで費用がかかるため、余計に再生が難しくなるかもしれません。
野生動物の行動範囲が広がる
市街地ではあまり関係ありませんが、山間部になると、耕作放棄地は野生動物の行動範囲を広げてしまいます。
山との間に人が整備している土地が存在することで、野生動物と人の接触は少なく保たれていました。
しかし、耕作放棄地のように、使わなくなった農地などには野生動物が現れるようになり、周辺の農作物も被害に遭ってしまいます。
また、イノシシであれば、人が怪我をする可能性もあり、山間部の耕作放棄地は危険性を抱えています。
耕作放棄地の再生方法と改善
耕作放棄地は再生や改善が可能です。
ただし、何もせずにとはいきません。
手続きなどは必要になりますが、農地を放置しておくよりかは、有意義な使い方ができます。
主な再生方法や改善方法を見ていきましょう
農地バンク
自分での再生や改善が難しい場合には、農地バンクを利用しましょう。
農地バンクは、農林水産省の農地中間機構が行っている、農地の貸し借り仲介サービスです。
仲介として各都道府県の農地中間管理機構が入ってくれるため、安心して利用できます。
耕作放棄地への補助金
耕作放棄地を自分で再生したり改善する場合には、必要設備などで資金が必要になります。
資金面の問題で、耕作放棄地を再生できない人は多いでしょう。
そこで活用したいのが、補助金などの制度です。
耕作放棄地再生利用緊急対策交付金
耕作放棄地再生利用緊急対策交付金は、耕作放棄地や荒廃農地の再生に使える補助金です。
例えば、耕作放棄地や荒廃農地を受け継いだ場合でも、申請可能となっています。
支援内容は3つに分けれています。
・農地の再生支援
・施設整備の支援
・附帯事業の支援
それぞれ補助の内容や金額は違いますが、資金が増えると耕作放棄地を再生しやすくなります。
耕作放棄地の再生や改善を考えるのであれば、利用を検討しましょう。
「耕作放棄地再生利用緊急対策交付金」は、農林水産省、農村振興局地域復興課が担当しています。
また、地方自治体によっては、補助金の制度を用意しているため、自治体への確認もおすすめします。
耕作放棄地の活用事例
耕作放棄地を放置しておけば、いずれ荒廃農地となり、再生や改善が難しくなります。
しかし、耕作放棄地を活用すれば、農地を守れるだけではなく、利益も得られます。
いくつか活用方法を見ていきましょう。
市民農園として運営
最初の活用方法は、市民農園にして運営することです。
運営といっても、市民農園では、借主に対してサポートを行うわけではないので、農地の整備と区画作りぐらいになります。
あとは、借り手さえ見つかれば、自分で農地を手入れする必要もなく、収益化が見込めます。
農地の区分によっても申請方法や必要な設備が異なりますが、まずは市町村へ問い合わせてみてください。
新規就農者への貸し出し・農業指導
農業に参入したい新規就農者の多くは、農地の確保に苦労しています。
使用していない耕作放棄地であれば、放置しておくよりも、貸し出したほうが管理も楽になります。
また、新規就農者に対して、農業指導なども行えば、新たな事業としても価値があるでしょう。
個人での貸し出しに不安がある場合には、前述した、農地バンクの利用をおすすめします。
景観植物を植える
景観植物は、菜の花やコスモス、ひまわりなどの植物です。
耕作放棄地に景観植物を植えることで、農地の荒廃を防げます。
植物を植えておけば、土壌の質を悪化させないため、改めて農地を利用したい場合にも大きな労力はかかりません。
一定の手間はありますが、農地を無駄にしない取り組みとしては、効果の高い活用方法です。
牛の放牧地
少し前述しましたが、山間部などの耕作放棄地では、野生動物が行動範囲を広げてしまいます。
本来であれば、人が整備している農地になるため、野生動物も多くは現れません。
そこで、耕作放棄地を牛の放牧地として活用している例があります。
牛を放牧することによって、畜産農家はエサのコスト削減、農地保有者は野生動物抑制や耕作放棄地の改善といったメリットが生まれます。
どの地域でもというわけではありませんが、耕作放棄地を有効活用できる一例です。
農地以外にも土地の活用方法は、いくつかあります。タウンライフなら、自分に合った転用方法を紹介してくれるので、ぜひ相談してみてください。
耕作放棄地を購入したい(借りたい)場合
耕作放棄地は放置されている農地なので、「購入したい、借りたい」と考える方も多いでしょう。
特に、農地の確保が難しい新規就農者にとって農地は必要です。
耕作放棄地の購入や借りることには、少し注意点があるので、解説していきます。
農業従事者しか購入できない
耕作放棄地は区分上、農地に分類されるため、農地法で規制されています。
農地は、農業従事者でなければ購入できません。
ただし、相続する場合に関しては、農業従事者である必要はなく、農地を取得できます。
耕作放棄地であっても、農業従事者意外の購入はできないので、注意しましょう。
耕作放棄地を借りる場合は農地バンクを利用する
耕作放棄地は借りることも可能です。
個人間でも貸し借りは行われていますが、同じ地域の顔見知りなどが多くなっています。
耕作放棄地を借りるには、農地バンクの利用がおすすめです。
先に紹介していますが、農林水産省が行っている仲介事業なので、安全性も高くトラブルも少なくなります。
ただし、耕作放棄地は放棄された理由があるので、しっかりと農地を確認してから借りることをおすすめします。
立地や取水、排水など、実際に農業を営めるのかを見てから決めるべきです。
農地転用による購入に注意
耕作放棄地は農地になるため、農業従事者しか購入できません。
しかし、農地転用を行って売買される時もあります。
農地転用は、手続きを行って農地を住宅や駐車場といった、別の用途に変更することです。
この手続き自体に問題はなく、転用手続きを行った上で販売すれば、購入する側が農業従事者である必要はありません。
ただし、農地転用後は、「農地として使用しない」ことが前提です。
もし、こういった方法で農地を購入しても、その土地はすでに農地ではなく、固定資産税も上昇しています。
全てにメリットがない方法なので、農地転用で農地を購入するのは避けましょう。
農地転用できない土地についてはこちらの記事で詳しく説明しています。是非参考にしてみてください。
まとめ
耕作放棄地は年々増加傾向にあり、様々な問題を抱えています。
放置が続けば、農地としての再生は難しくなり、周辺への悪影響もあります。
しかし、耕作放棄地は、再生や改善、活用が十分に可能です。
農地は、放置しているだけでも固定資産税が発生します。
早めに売却や貸し出し、市民農園などの収益化といった、有効活用がおすすめです。
今から耕作放棄地について考えておけば、リスクも最小限に抑えることが可能でしょう。