ソーラーシェアリングと相性のよい作物とは|成功事例を含めて解説

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作物

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農地を全て太陽光発電に変えるのではなく、農業を継続しながら太陽光発電も行うソーラーシェアリングが注目を集めています。

しかし、ソーラーシェアリングは農地に影を作ってしまうため、作物の生育に影響がないか気になるでしょう。

ほとんどの場合、作物の生育に影響がない範囲で設置されるため問題はありません。それでも農業経験が浅い場合には、遮光率が高くても育ちやすい作物を選ぶほうが安心です。

今回の記事では、ソーラーシェアリングと相性のよい作物や、実際に成功させている事例を紹介していきます。

ソーラーシェアリングとは

太陽光発電

ソーラーシェアリングは、農地の上部にソーラーパネルを設置することで、農業と太陽光発電を同時に行う方法です。営農型太陽光発電とも呼ばれます。

2013年に農林水産省が制度を作成し、現在では取り組む農家も増加しています。設置に条件はありますが、収益を増やしたりハウスで使う電力に利用したりと、様々な活用方法が生み出されています。

農地の一時転用が必要

ソーラーシェアリングには、農地の一時転用が必要です。一時転用には条件があり、全て許可されるわけではありません。

また「一時」とあるように、一度の申請ではなく、定期的な更新が必要です。

  • 基本:3年ごと
  • 条件を満たした場合:10年

他にも、一時転用には中止のリスクがあります。ソーラーシェアリングは農業を中心としたモデルです。

農業を行わなかったり、農業による収入が減少したりすると、一時転用が中止される可能性があります。

農地の一時転用は最初の手続きだけではなく、3年か10年ごとの更新、状況によってはソーラーシェアリングの中止リスクもある方法です。

ソーラーシェアリングのメリット

ソーラーシェアリングのメリットを見ていきましょう。

  • 収益の向上
  • 作業効率の向上

収益の向上

収益の向上は農業だけではなく、太陽光発電による売電の収益が発生するためです。農業はその年によって作物の生育状況も異なるため、安定して稼げる業種とは言えません。

しかし太陽光発電であれば、日光が出ている時間帯は作業の必要もなく稼いでくれます。収益が不安定になりがちな農業の収入を少し安定させます。

作業効率の向上

日中の露地は、夏場であれば長時間の作業はできません。熱中症などのリスクも高く、不安を抱える農家も多いでしょう。

ソーラーパネルを設置した場合には、農地の大部分に影ができるため、夏場や日中の作業もしやすくなります。また作物によっては、日光をあてすぎないことでうまく育つ場合もあります。

ソーラーシェアリングのデメリット

メリットがある一方で、デメリットとして注目されていることもあります。

  • 農地の一時転用
  • 初期費用が高額

初期費用が高額

一時転用は先に解説している通りですが、もう1つ初期費用があります。

太陽光発電のシステムを設置するための費用は、決して安くありません。農地の広さによって数百万円から数千万円になるため、多額の資金が必要です。

また、初期費用を融資で考えている場合は簡単ではないため注意しましょう。ソーラーシェアリングは、農地を一時転用して行うため、融資する側としては「事業が継続されないリスク」に注目します。

途中で一時転用が中止される可能性もあり、融資した金額を回収できない可能性があるためです。営農状況が悪いと、早くて3年ほどで一時転用は取り消されることもあるため、「融資しない」と考える場合も多いです。

自己資金で全てまかなえる場合でも、太陽光発電の設置費用は高額なため、先の見通しもしっかりと考えておく必要があります。適当に始めた場合には、農業も発電もうまくいかない可能性があります。

ソーラーシェアリングにはメリットばかりではないことを、しっかりと理解しておきましょう。

こちらの記事では、営農型太陽光発電について詳しく紹介していますので、あわせて参考にしてください。

ソーラーシェアリングと相性のよい作物の種類

じゃがいも 作物

ソーラーシェアリングは光を遮るため、遮光率の問題で相性のよい作物があります。どのような作物の種類が向いているのかなどを、確認していきましょう。

光飽和点に注目

植物は、成長に必要な光量が決まっています。

一定の光量以上は必要とせず、これ以上光を浴びても成長はしない地点を光飽和点と呼びます。光飽和点は植物ごとに異なり、数値を見ることである程度の必要な光量の把握が可能です。

光量はklx(キロルクス)で表されます。光飽和点を知ることで、ソーラーシェアリングで育てやすい作物を選定しやすくなります。

ソーラーシェアリングに向いているのは、光飽和点が0〜40klxほどの作物です。多く光を必要とするトマトは、70klxです。

相性がよいのは半陰性植物と陰性植物

名称の通り多くの光を必要としないため、影を作るソーラーシェアリングでは比較的育てやすい作物の種類と言えます。

半陰生植物では、レタスやじゃがいもなどがあり、陰性植物は、みょうがなどです。

どれぐらいの遮光率にするのかは設計段階で調整可能です。半陰性植物か陰性植物を選んでおけば、失敗は少なくなります。

陽性植物でも栽培は可能

ソーラーシェアリングで陽性植物の栽培はできないのか、と言われるとそうではありません。ただし、陽性植物は日照を好むため、多少の問題は発生します。

例えば、ソーラーパネルの隙間を大きくし、畑にあたる日照率を上げると、陽性植物でも問題なく生育します。ただし、綿密に設計する必要があるため、農業の知識とよい設計士が必要不可欠です。

また、必然的に設置するソーラーパネルの数も少なくなるため、売電で得られる収益は少なくなります。

ソーラーシェアリングは農業を主体とした事業であるため問題ありません。しかし、売電による過度な収益予想は期待外れになってしまいます。

太陽光発電は初期費用が高額になるため、陽性植物を中心にする場合には、売電による費用の回収に時間がかかるかもしれません。

ソーラーシェアリングで育てやすい作物

作物

具体的にどのような作物がソーラーシェアリングで育てやすいのか、紹介しましょう。今回は、半陰性植物と陰性植物に絞ります。

半陰性植物

  • ほうれん草
  • ねぎ
  • 菊菜
  • かぶ
  • レタス
  • じゃがいも

葉物だけではなく、根菜など幅広い作物が分類されています。特に、ほうれん草やねぎは元から露地で育てている人も多いでしょう。

作物によっては、ソーラーシェアリングを開始してからのほうが育ちがよくなることもあります。半陰性植物なので少し光を遮っておくと、成長点が焼けてしまうこともなく、安定した収穫が可能です。

すでに半陰性植物を栽培している場合には、作物を変更することなくソーラーシェアリングに参入できるでしょう。これから就農してのソーラーシェアリングを考えている場合にも、参考にしてみてください。

陰生植物

  • みつば
  • せり
  • しそ
  • みょうが

太陽光を浴び過ぎればうまく育たない作物なので、ソーラーシェアリングに向いています。また、ソーラーパネルを敷き詰めても生育が可能なので、売電の収益は大きくなります。

ただし、陰生植物にはさらなる遮光が必要な場合もあるので調整は必要です。例えば、ソーラーパネルの架台部分に遮光ネットを設置するなど、作物の特徴に合わせた工夫を行いましょう。

陰性植物の全てがソーラーシェアリングに向いているわけではありません。しかし、陽性植物よりも育てやすいでしょう。

ソーラーシェアリングの成功事例

太陽光発電

実際にソーラーシェアリングを行なっている農家は、どのような取り組みをしているのでしょうか。

ソーラーシェアリングは2013年から本格的に始まっているため、成功事例も多くなっています。成功事例を一部、紹介します。

ばれいしょの栽培

宮城県の農家は、自家消費のソーラーシェアリングとしてばれいしょを栽培しています。遮光率は68.5%で、半陰性植物に適した数値です。

ただし中心となっているのはトマトの栽培で、ばれいしょはソーラーシェアリングを実施するための栽培としています。目的は、トマトのハウスに使用している暖房の燃料費や電気代の削減です。

実際に発電した電力は、トマトを栽培しているハウスの暖房に使い、年間600万円の経費削減に成功しました。

また、従業員が作業を行う出荷場所の空調にも電気を使用し、健康管理にも活躍しています。ソーラーシェアリングが売電だけではなく、自家消費でも活用されているよい事例です。

茶葉の栽培

静岡県で茶葉の栽培を行なっている農家です。元々、被覆栽培を行なっていたため、ソーラーパネルを設置しても生育に問題がないと判断し、ソーラーシェアリングに参入しています。

遮光率は40%なので、ソーラーシェアリングとしては平均的な数値です。被覆をソーラーパネルで補えるため、作業数や資材の削減につながっています。

また出荷がない未収入の時期にも、売電で収入が得られるため、経営の安定にも貢献しています。

ブルーベリーの栽培

九州のハウステンボスが行なっているソーラーシェアリングで、エネルギーや食料問題への関心の高さから参入を決定しました。栽培しているのはブルーベリーで、遮光率は37%で平均的です。

ハウステンボス内のレストランや、観光農園としての需要からブルーベリーを選択しています。元々、栽培していた作物ではなく、ソーラーシェアリングや自社との相性を考えて選択した事例です。

ソーラーシェアリングの認可が多い作物

稲

全国営農型発電協会では、ソーラーシェアリングの認可が多い作物を紹介しています。地域によっても異なるため、そのまま同じ作物を栽培することはできませんが、2018年の統計を参考にしてみてください。

  1. みょうが
  2. 水稲

みょうがが全国で1番多く、145件が許可されており、特に関東や東北が多くなっています。みょうがは陰生植物で、ソーラーシェアリングとの相性がよく栽培も簡単なため、人気の高い作物です。

続いて榊(さかき)です。榊は日当たりがよくても悪くても育つため、ソーラーシェアリングにはぴったりの作物と言えるでしょう。

水稲は遮光率が平均的な30%で問題なく生育するため、売電の収益で見ても十分です。

もちろん認可数が少なくても、うまく行なっている農家は多いため、あくまで参考としてください。

まとめ

ソーラーシェアリングを行なっている農家は年々増加しています。しかし、「作物がうまく育つのか」という疑問を持っている人も多くいるでしょう。

うまくいかせるためには、相性のよい作物を知ることです。

基本的には太陽光パネルの設置面積や方法で、どのような作物でも生育するように設計されます。しかし、農家としての経験や実力や経験が重要な面もあります。

まずはどのような作物が向いているのかを知り、成功事例などを参考にしましょう。