農地を相続したときにかかる税金には納税猶予の特例を活用する
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相続するものは家やお金が中心に考えられがちですが、農地も忘れてはいけません。
被相続人が農家であった場合は大きな農地になるかもしれませんし、趣味程度で行なっていた場合には、小さめの農地を相続することになるでしょう。
農地を相続した場合には、他の相続と同じように相続税が発生します。しかし、農地には他の相続とは少し異なる部分があります。
農地の固定資産税は、宅地などよりも低く設定されています。
しかし、相続税も低くなるというわけではありません。また農地の相続税には、納税猶予の特例が用意されています。
税金に関わることは把握していなければ損をしてしまうことも多いです。今回は、農地の相続税や納税猶予の特例を中心に解説していきます。
目次
農地を相続したときにかかる税金
農地を相続したときにかかる税金は、どのようなものがあるのかを見ていきましょう。
相続税
相続税は農地に限らず財産を相続した場合に課される税金です。一度は聞いたことがある有名な税金の1つでしょう。
全ての財産に対して相続税が課されるわけではなく、基礎控除額を差し引いた金額に対して相続税が発生します。
実際に相続税が発生する割合は少なく、ほとんどの場合は基礎控除額を上回りません。
また、農地は宅地などと違い評価額が低いと考えられがちですが、実際には異なる場合もあります。
登録免許税
忘れられがちな税金に登録免許税があります。登記を変更する際に発生する税金です。
農地に限らず、不動産を相続した場合には土地の登記を変更しなくてはいけません。
登録免許税は極端に高い割合の税金ではないため、大きな支払いになることはあまりありません。
固定資産税評価額の0.4%が登録免許税になります。
ただし登記作業を専門家へ依頼した場合には、報酬も発生するため注意しておきましょう。委任する場合には、それ相応の費用が発生します。
農地の相続税について
農地の相続税は少し難しい部分もあるので注意しましょう。勘違いされることが多いのは、固定資産税の評価と相続税評価額の違いです。
農地の相続税評価は高い場合もある
農地の固定資産税は、宅地よりも低く設定されています。これは、農地としてしか利用できないためです。
毎年郵送されてくる固定資産税の納税通知書には、評価額が記載されています。ただし、相続税はここだけで判断できません。
相続税が決まる土地の評価額は固定資産税ではなく相続税評価です。全くの別物で評価されるため、場合によっては高額な相続税となることも十分にあり得ます。
例えば、市街地にある農地は農地の評価法ではなく、宅地の評価法が適用されることもあります。宅地として評価された場合には農地と比べて高額な評価額となり、想像していた相続税とはなりません。
農地には減額評価がある
減額評価が適用されると、宅地評価であったとしても税金を抑えられます。
減額評価は5つです。
- 宅地造成費の控除
- 市街地周辺農地の評価額
- 地積規模の大きな宅地の評価額
- 貸し付けられている農地の評価額
- 生産緑地の評価額
それぞれに条件はありますが、適用されると評価額が下がるため、相続税が低くなります。ただし、それぞれは別の評価であり、一括して申請を受け付けているわけではありません。
国税庁への問い合わせも可能ですが、専門家へ依頼したほうがスムーズに進むでしょう。
相続税が還付される可能性もある
減額評価を見落としていた場合には、相続税が還付される可能性もあります。
相続税の申告後から5年以内に、申告書の評価内容を見直す価値はあるでしょう。
農地を相続した場合の納税猶予特例
農地を相続した場合に発生する相続税は、想像よりも高くなる場合があります。その場合、納税猶予の特例も検討しましょう。
納税猶予の特例とは
納税猶予の特例は、農業離れや農地を失うリスクを減らすために設定されています。
農地は広大なことが多く、宅地を基準とされた場合には、相続税を支払えずに農地を手放してしまうことも珍しくはありません。
農地を手放す人が増えると日本の農業自体が衰退してしまうため、国としては、農業の衰退な自体を避けるために特例措置を用意しています。
特例措置が認められた場合は大幅な減額になります。ただし、全ての相続税が猶予されるわけではありません。
基本の相続税と農業投資価格を比較し、差額の税金を猶予することが特例です。基本的には、相続税が猶予され、農業投資価格に課税される分を支払う形になります。
農業投資価格は、国税局が農地の売買価格を地域ごとに定めた平均のようなもので、極端に高い価格には設定されていません。宅地評価と比べると格段に低い価格です。
農業投資価格は10アールあたり20万円から90万円ほどの地域が多いです。
300坪ほどの農地であれば、高くても90万円ほどに対する課税となります。宅地の場合には、300坪の評価額は数百万円から数千万円になることも当たり前です。
納税猶予の要件
納税猶予の特例を受けるためには、被相続人や相続人の要件があります。誰でも特例を受けられるわけではないため、まずは要件を確認しておきましょう。
被相続人の要件
被相続人の要件は大きく2つです。
- 死亡の日まで農業を営んでいた
- 生前一括贈与を行なった
注目するのは、農業を営んでいたことと生前の一括贈与です。国が農業を続けてほしいと考えているため、農地として正しく利用されていたのであれば問題はありません。
「農地として利用していた」「相続人に生前贈与をしておく」と考えてください。
相続人の要件
相続人の要件も大きく2つです。
- 相続税の申告期限までに農業経営を開始、継続する
- 生前一括贈与を受けている
被相続人の内容と違いはありません。「農業を継続する」「生前贈与を受けている」、この2つが揃っていると猶予の対象となります。
特例を受けるための手続き
納税猶予の特例を受けるためには、税務署で手続きが必要です。
【主に必要な書類】
- 適格者証明書:各地域の農業委員会で発行
- 農地等該当証明書:役所での発行
どちらもすぐに発行されるものではなく、数週間ほどの時間を要します。
地域によって必要書類が異なることもあるため、まずは、各地域の税務署に問い合わせてください。
納税猶予特例の注意点
納税猶予の特例は受けるには注意点もあります。場合によっては、猶予されていた相続税を納税しなくてはいけなくなるため、しっかりと理解しておきましょう。
納税しなければいけなくなる場合
納税猶予の特例は、農業を続けてもらうために実施されています。日本の食料自給率は低く、国としては相続税を猶予することで農業を続けてもらおうとしています。
【相続税の支払いが生じる場合】
- 農業をやめた
- 相続した農地を転用・貸し付け
- 相続した農地を譲渡・放棄
また、納税猶予の申請は1度で終わりではなく、継続して提出しなければいけません。
3年に1度、継続届出書の提出が義務付けられています。猶予を受け続けるためには、申請を忘れないようにしましょう。
納税が免除される場合
納税猶予の特例は納税が免除されたわけではなく、今は支払いが猶予されている状態です。
【相続税自体が免除される場合】
- 相続人の死亡
- 相続人が生前一括贈与を行う
- 20年間農業を継続(条件あり)
上記に当てはまったときには、納税が猶予ではなく免除されます。農業を継続していることを前提に、相続税は完全に免除されることもあります。
農地を相続した場合に忘れてはいけないこと
農地を相続した場合、相続税以外にも他にも忘れてはいけないことがあります。不備のないように相続しましょう。
農業委員会への届け出
農地に限らず、土地を相続した場合には法務局で相続登記を行います。しかし、農地の場合には、各地域の農業委員会へも届け出が必要です。
農業委員会への届出は、農地を相続してから10ヶ月以内に行う必要があります。怠れば場合によって罰則が科せられます。
昔は農地を相続した際に届け出る必要はありませんでした。しかし現在は、農地法の改正で届け出が義務付けられています。
農地を相続した場合には法務局だけではなく、農業委員会への届出も忘れないようにしましょう。
まとめ
農地は固定資産税が宅地よりも低いため、相続税も低いと考えられることが多くなっています。しかし実際には、固定資産税の評価と相続税の評価は違い、安易な考えは禁物です。
場所によっては宅地と同じ評価額となることも珍しくなく、想像以上の相続税に驚くこともあるでしょう。農地の相続税には、納税猶予の特例も用意されているため、うまく利用しましょう。
様々な条件はありますが、農業を継続することで農地も守られ、日本の食料自給率向上にも貢献できます。