ネコブセンチュウの対策・予防方法|症状や原因を知って野菜を守ろう!

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野菜 根

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ネコブセンチュウは野菜の生育阻害やしおれを引き起こし、1度発生してしまうと防除困難といわれる、非常に厄介な害虫です。

ただし、しっかりと対策すれば被害を最小限に抑えることも不可能ではありません。

本記事では、ネコブセンチュウの対策・予防方法を、元種苗メーカー勤務の筆者が解説します。

ネコブセンチュウ対策の知識を身に付けて、大切な野菜を守りましょう。

ネコブセンチュウの特徴

土壌 畑

センチュウとは、線形動物門に属する生物の総称です。
畑の中だけではなく、山・海・川・砂漠などで自活したり、動物や植物に寄生したりと、あらゆる種類のセンチュウがさまざまな場所に生息しています。

農作物に悪影響を与えるセンチュウは意外にも少なく、国内でも10種類ほど、ネコブセンチュウはその代表格です。

ネコブセンチュウは、25〜35℃ほどの暖かい環境で活発に活動・繁殖し、年間4世代以上に渡り生き続けます。
ミミズのように細長く、透明に近い体が特徴で、体長は1mm以下と小さいため、肉眼で確認するのは不可能です。

それでは、ネコブセンチュウの基礎知識となる3点を解説していきます。

  • 被害・症状
  • 発生原因
  • 見分け方

被害・症状

ネコブセンチュウの被害を受けると、根に多数のコブができるのが特徴的です。

コブは根の組織を破壊し、成長に必要な養分・水分の吸収を阻害します。その結果、生育抑制・しおれ・枯死といった症状が地上部に現れるのです。

地上部に症状が現れると、農作物の収量・品質が低下、根菜類では腐敗や奇形にもつながり、商品価値がなくなってしまいます。

ネコブセンチュウ被害の広がりは速く、止めるのは難しいため、あらかじめ対策・予防することが大切です。

なお、ネコブセンチュウの被害は、果菜類・葉菜類・根菜類など、広範囲に及びます。

発生原因

ネコブセンチュウの発生原因は、外部から持ち込まれたか、土壌バランスの悪さが原因と考えられます。

特に外部から持ち込みには注意が必要です。
作物を植え付ける際の苗に潜んでいたり、農機具に土が付着していたりすると、ネコブセンチュウが畑に入り込む原因となります。

また、無理な連作を続けて肥料バランスが崩れた畑は、ネコブセンチュウが好む環境になっている可能性が高いです。
土壌を改良し、センチュウの天敵となる益虫・微生物が好む土壌環境に整えていきましょう。

見分け方

ネコブセンチュウ被害とよく似た症状に「根こぶ病」があります。
根こぶ病も根にコブを作る病気ですが、センチュウと病気では対処法が異なるため、見分けられるようにしましょう。

根こぶ病は、アブラナ科のみに発生する病気です。
そのため、ウリ科・ナス科などの野菜と、アブラナ科野菜を同じ畑で栽培することで見分けられます。

アブラナ科野菜のみにコブが生じたら根こぶ病、両方にコブが発生したらネコブセンチュウ被害である可能性が高いです。

なお、その他のセンチュウ類との見分け方は比較的簡単です。
センチュウには、ネグサレセンチュウやシストセンチュウなど多くの種類がいて、それぞれ被害・症状は異なります。

根にコブを形成するのはネコブセンチュウだけです。根を見れば、簡単に見分けられるでしょう。

センチュウ 被害・症状
ネコブセンチュウ 根にコブを形成する
ネグサレセンチュウ 根腐れを起こす
シストセンチュウ 卵を宿した状態の死骸を根に残す

ネコブセンチュウの対策・予防方法

スコップ

ネコブセンチュウは、年間4世代に渡り生き続け、ハウス内であれば冬でも活動するほど、生存力の強い害虫です。

1度発生してしまうと、完全防除するのは難しいため、発生させないように対策・予防に努めましょう。

ネコブセンチュウの対策・予防方法としては、以下の4つが効果的です。

  • 畑に持ち込まない
  • 対抗植物を植える
  • 農薬の予防散布
  • 連作を避ける

畑に持ち込まない

もっとも基本的かつ大切なのが、ネコブセンチュウを畑に持ち込まないことです。

耕運機やトラクターなどの機械、クワやスコップ、長靴やポットなどの道具に少しでも土がついていると、ネコブセンチュウがいる可能性があります。

別の畑で同じ道具を使う場合は、できるだけきれいに洗浄してから使用してください。

また、購入した苗や別の場所で育てた苗にも持ち込みのリスクがあります。
信頼できるお店で購入する、自分で苗を管理するなどして、苗から畑に持ち込まれることを防ぎましょう。

対抗植物を植える

ネコブセンチュウに強い対抗植物を植えたり、栽培した植物を腐らせずに土壌に入れて耕し、肥料にする「緑肥」としてすき込むのも効果的です。

発生・増殖を抑制し、一定期間畑を休ませたのと同等の抑制効果を期待できます。

【ネコブセンチュウの対抗植物】

  • キク科:マリーゴールド
  • イネ科:ソルゴー・ギニアグラス
  • マメ科:クロタラリア

対抗植物は、殺虫効果よりも、増殖させない効果が高いのが特徴的です。
そのため、長く栽培し、その他の対策・予防と同時並行すると、より高い効果を発揮できます。

対抗植物として特におすすめなのは、フレンチマリーゴールドです。種や苗が入手しやすく、お手頃な値段のものが多いため、作物の周囲や畑に満遍なく植えましょう。

農薬の予防散布

発生してしまったネコブセンチュウを、農薬で防除するのは難しいです。ただし、発生前であれば高い予防効果が期待できます。

種まき前や植え付け前、元肥を入れる際に、農薬を散布しましょう。

  • ネマキック粒剤
  • ラグビーMC粒剤
  • ネマトリンエース粒剤

ガス剤などもありますが、家庭菜園で使うのは難しいでしょう。粒剤タイプであれば、家庭菜園でも簡単に利用できるためおすすめです。

ただし、野菜ごとに登録されている農薬は異なるため、しっかりと確認してから使用してください。

連作を避ける

ネコブセンチュウは連作することで発生・増殖していくため、連作を避けて栽培しましょう。

同じ場所で同じ科の農作物を栽培し続けると、吸収される養分が偏り、土壌バランスが崩れてしまいます。

土壌バランスが崩れると、天敵となる益虫や微生物にとっては厳しい環境に、逆にネコブセンチュウには住みやすい環境になります。

また、連作による影響はセンチュウ害だけではありません。その他の害虫や病気などの連作障害、生理障害など、さまざまな連作障害を引き起こします。

そのため、連作障害が起きやすい野菜を連作するのは避け、「アブラナ科→マメ科→ウリ科」のように輪作を組んで栽培しましょう。

ネコブセンチュウが発生した時の対処法

トラクター 散布

実際にネコブセンチュウの被害が出てしまうと、前述した対策・予防方法では、発生・増殖は止められるものの、直接的な防除はできません。

もし発生してしまった場合は、以下4つの方法で速やかに対処しましょう。

  • 土壌消毒
  • 太陽熱消毒
  • 米ぬかをすき込む
  • 石灰窒素を散布する

土壌消毒

ネコブセンチュウの防除方法で、もっともポピュラーなのが土壌消毒です。

土壌消毒は専用の土壌消毒剤を用いて行うのが一般的で、薬剤を使うため効果も高いです。ただし、家庭菜園や小さな畑で行うのはあまり現実的ではありません。

太陽熱消毒

太陽熱消毒であれば薬剤を必要としないため、家庭菜園でも手軽にでき、無農薬にこだわりたい人にもおすすめです。

太陽熱消毒は地温を十分に上げるため、7〜8月頃のできるだけ気温が高い時期に行いましょう。

深めに耕し整えた畑にたっぷり散水するか、雨が降るのを待ち、十分に水分を与えます。
その後、透明のビニールシートを隙間なく覆い被せ、3〜4週間ほど放置すれば消毒完了です。

地温は60℃ほどまで上昇するため、センチュウを防除しつつ、土壌によい微生物は残せます。環境にも優しく、土壌改良にもなる、非常におすすめの防除方法です。

ただし、太陽熱の届かない地中深くに生息するセンチュウには効果がなく、完全に防除できるわけではありません。

米ぬかをすき込む

米ぬかを畑にすき込むことで、無農薬でネコブセンチュウの防除が可能です。

米ぬかを畑に混ぜると土壌中の乳酸菌が増え、それを餌として農作物に害を与えない自活性センチュウが増殖します。
自活性センチュウの老廃物にはアンモニアが多く含まれており、ネコブセンチュウはアンモニアを苦手とするため、数を低減させられるのです。

1平方メートルあたり1kgの米ぬかを入れて、よく耕しましょう。その後、太陽熱消毒を行うと、さらに高い効果が期待できます。

なお、米ぬかはリンを多く含むため、栽培時に肥料バランスが悪くならないよう注意してください。

石灰窒素を散布する

普段は肥料として利用する石灰窒素は、作付け前に散布することでネコブセンチュウに対する防除効果が期待できます。

石灰窒素には、殺虫効果のある「シアナミド」という成分が含まれ、この成分がネコブセンチュウ防除に有効です。

種まき前や植え付け前に、1平方メートルあたり50〜100gほどの石灰窒素を、畑全体に満遍なく散布してください。

なお、センチュウは卵の状態で越冬し、その間は薬剤の効き目が弱まります。
孵化して活発になる頃に施肥するとよく効くため、春先・地温15℃以上になってから散布しましょう。

また、石灰窒素はゆっくりと効いてくる肥料でもあるため、栽培時の肥料バランスに注意が必要です。

ネコブセンチュウに弱い野菜・強い野菜

野菜

ネコブセンチュウが悪影響を与える野菜は非常に多く、中でも下記の野菜は被害を受けやすくなっています。

果菜類 ナス・ピーマン・トマト・キュウリ・カボチャ・メロン・スイカ・オクラ・イチゴ
葉菜類 レタス・ホウレンソウ
根菜類 ダイコン・ゴボウ・ニンジン
イモ類 サツマイモ・サトイモ・ジャガイモ
マメ類 ダイズ・インゲン

はっきりと「ネコブセンチュウに強い」といえる野菜は、残念ながらありません。

ただ、ネコブセンチュウに対する「抵抗性品種」がある野菜も存在します。
抵抗性品種を選べば、それだけでネコブセンチュウの予防や被害の抑制が可能です。

センチュウ被害の度合いと抵抗性品種の食味・収量などを照らし合わせ、品種を切り替えるか選んでみてください。

なお、センチュウが多く生息している畑では、抵抗性が破られる可能性もあるため、ほかの防除方法と並行して行うとよいでしょう。

まとめ

ネコブセンチュウ被害を出さないためには、対策・予防をしっかり行い、発生・侵入・増殖させないことが重要です。

被害が出てしまった場合でも、慌てず対処し、被害を最小限に抑えることを考えましょう。