農業用ドローンの活用事例について|農薬散布や実際の導入にかかる費用など解説

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近年、農業用ドローンの普及は著しく、「スマート農業」を実現するためにも導入は不可欠でしょう。用途は農薬散布に留まらず、肥料散布や播種、圃場センシングなど広がりを見せています。農業用ドローンでできること、操縦するまでにかかる費用や手続きについて解説します。

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農業用ドローンを使用した農薬散布の最新情報

農業用ドローンの活用法として最も認知されている農薬散布の現状について確認してみましょう。人がタンクを担いで農薬をまく作業は時間と労力がかかり、無人ヘリコプターでの散布はコストがネックでした。農業用ドローンは無人ヘリコプターに比べ扱いやすく、価格も安いため、作業効率アップとコスト削減が期待できます。

農林水産省は「2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践」という目標を掲げ、2022年までにドローンによる農薬散布面積を100万ヘクタールに拡張しようとしています。市場は拡大の一途をたどり、農薬散布を代行する企業も増えました。

センシング技術と組み合わせることで、病害虫が発生した箇所にピンポイントで散布が行えるなど、今後はより効率的な運用が可能になるでしょう。

出典:スマート農業関連実証事業

農業用ドローンの概要(費用・補助金・手続きなど)

農業用ドローンを導入するうえで必要となる、費用や補助金、手続きについて解説します。

費用について

導入にかかる主な費用は機体の購入費・スクール受講料・メンテナンス費用・保険料の4つです。機体は100~300万円と幅があり、やや小型の10L機体は100万円を下回るなど、普及にともない低価格化が進んでいます。

詳細は後述しますが、農業用ドローンを活用するのに特別な資格は必要ありません。安全な運用を目的に資格取得を目指す場合のスクール受講料は、約18万円が相場です。農薬散布の許可申請をするタイミングで操縦実績が求められるため、スクールに通えば効率的に技能の習得ができます。

農林水産航空協会の認定機体の場合、1年に1回の点検が必要です。メーカーが年次点検パッケージなどを販売しており、機体のサイズなどにより幅はありますが、メンテナンス費用は、年間約7~10万円が目安です。

対人対物保険は国土交通省へ申請する際に必要です。万一の事故に備えるためにも加入をおすすめします。機体購入時に無償で1年間、その後任意保険に加入するケースなど、加入のパターンはいくつかあります。個人と企業でも費用は異なり、年間3~10万円が相場です。

【スクール】でドローンの資格を取る

補助金制度について

補助金制度を利用すれば、導入までの金銭的なハードルが下がります。農業用ドローン導入に活用できる4つの補助金制度を紹介します。

ものづくり補助金

2015年に開始した中小企業・小規模事業者の生産性向上を目的とした経済産業省の施策です。中小企業者は導入費用の最大1/2、小規模企業者・小規模事業者は1/3が補助されます。制度を活用するには申請書や事業計画書などの書面の準備が必要で、採択率は30~40%です。

新型コロナウィルスにより「特別枠」が用意され、最大1,000万円(補助率2/3)など思い切った優遇策が運用されています。

令和3年4月13日時点での「一般型・グルーバル展開型」の最新公募期間は以下となります。

  • 公募開始日:令和3年2月22日(月)17時
  • 申請開始日:令和3年4月15日(木)17時
  • 申請締切日:令和3年5月13日(木)17時
  • 最新情報・手続きについてはこちらから:ものづくり補助金総合サイト

    強い農業・担い手づくり総合支援交付金

    農林水産省の施策で、指定地域の中心経営体に対し、農業用機械・施設等の導入を支援する制度です。本事業に取り組むうえで、融資の円滑化を図るため、農業信用基金協会への補助金の積み増しによる金融機関への債務保証の支援も行っています。

    農林水産省:事業概要

    農林水産省:パンフレット

    支援プランは2つあり、補助率は事業費の10分の3以内と規定があります。

    • 地域担い手育成支援タイプ
      • 補助金上限金額:300万円
        支援対象:労働力不足等の課題に対応する農業経営の解決策として、農業用機械・施設の導入に優先枠を設けて重点的に支援
    • 先進的農業経営確立支援タイプ
      • 補助金上限金額:個人1,000万円・法人1,500万円
        支援対象:農業経営体の主体性を発揮した取組や地域との相乗的発展を目指す取組等を行う農業経営体

    産地パワーアップ事業

    農林水産省が農業者、農業者団体等を対象に、収益力の高い産地づくりに必要な農業機械のリース導入、取得に対して補助率1/2を上限に支援する仕組みです。計画期間は原則3年間で、その間補助金制度が利用できます。

    • 補助率:1/2以内
    • 支援対象取組:整備事業、基金事業
    • 支援対象者:当計画に参加する農業者団体、個別経営体

    (農林水産省:産地パワーアップ事業

    経営継続補助金

    新型コロナウィルスの影響により創設された制度で、売り上げ減少を要件とせず、常時従業員数が20人以下の農林漁業者(個人および法人)が対象です。経営継続を目指した取り組みに対し補助率3/4(上限100万円)、新型コロナウィルス感染防止対策に定額(上限50万円)を助成します。


    (参考URL:経営継続補助金

    手続きについて

    農業用ドローンを使用して農薬散布する場合、国土交通省へ都度申請が必要です。航空法に定められている「物件投下」と「危険物輸送」に該当するため、申請は1日単位か、日時指定が難しい場合はまとまった期間を申請しておくとよいでしょう。

    また、先述した通り農業用ドローンを運用するにあたり、資格や免許、ライセンスは必要ありません。以前定められていた専用免許はすでに撤廃されました。詳細は2019年7月に施行された「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」をご確認ください。

    (参考URL:無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン

    必須ではありませんが、安全にドローンを運用するためには、「農林水産航空協会の技能認定を受ける」「農林水産航空協会に空中散布用の機体を登録する」「農林水産航空協会の都道府県協議会に事業計画書の提出をする」などの方法があります。近隣の理解を得るためにも、積極的な申請・登録をおすすめします。

    (参考URL:農林水産航空事業

    散布以外に農業用ドローンの活躍が期待される分野

    農業用ドローンは農薬散布、肥料散布、播種以外にも、すでに技術として確立している活用法がいくつかあります。ここからは、農産物などの運搬や圃場センシング、鳥獣被害対策について概要を解説します。

    農産物などの運搬

    近年、人手不足が顕著な農業の現場において、収穫物の運搬作業は体力的な負担が課題です。ドローンを使った運搬作業はまだ実用化されていませんが、現在メーカー各社が実証を重ねています。

    近い将来、大型ドローンにコンテナを取りつけ圃場と集荷場を往復させる、運搬の省略化が実現する見込みです。

    圃場センシングで農作物の品質・収穫向上と鳥獣被害対策が可能に

    カメラ搭載の農業用ドローンで圃場を空撮し、画像を分析することによって農作物の生育状況や病害虫の発生が確認できます。

    遠隔操作で情報を取得して分析する技術をリモートセンシングと呼び、以前は人工衛星や航空機を使うのが一般的でした。しかし、このようなテクノロジーを一般の農業従事者が扱うことはできません。

    ドローンの登場により上空からのデータ取得が容易になり、個人単位で品質、収穫の向上に役立てられるようになったのです。

    また、鳥獣被害対策の従来の方法は、人間が現地を歩いて目視で状況を確認し、地図に書き込むというものでした。ドローンを活用すれば、農地や近隣のヤブ、電気柵や罠の状況など約3haを空撮するのに約10分、画像結合などデータ編集に約2時間と大幅に時間とコストを削減できます。

    最新技術の例として、DIJ社の「P4 Multispectral」を活用した圃場センシングについて解説します。本機は精密農業と環境管理を目的に設計された、世界初の完全統合型マルチスペクトル イメージングドローンです。6つの個別センサーからデータを取得、それらを組み合わせて圃場全域の健康状態を調べます。

    項目は多岐にわたり、雑草や害虫被害、土壌の状態など測定可能です。これにより収穫量を改善し、コスト削減が実現できます。

    おすすめの農業用ドローン

    最後に、おすすめの農業用ドローンを紹介します。本格的な機種と初心者におすすめの機種の両方をピックアップしました。

    本格的な農業用ドローンなら「AGRAS T20」

    DJI AGRAS T20

    出典:DJI AGRICULTURE

    「AGRAS T20(2020年発売)」は、個人向けドローン世界シェア7割のDIJ社が販売している農業用ドローンです。パワフルな性能と強力な噴霧性能を備えており、広大な農地や台地、果樹園など地形を選ばずに運用できます。

    液体の農薬や堆肥、除草剤などを最大16kg搭載、適正な割合で散布するなど、さまざまな農作業で活躍するでしょう。8つのノズルと大容量ポンプで噴霧幅は7m、条件にもよりますが、1時間あたり12haをカバーできます。

    粒剤散布システムを用いれば播種にも使え、穀物の種子が0.5〜5cmの直播栽培の場合、手動に比べ70倍の速さで作業が完了します。牧草地の再播種や水田養殖用の魚やエビのエサまきなど、適応シーンはさまざまです。

    運搬、操縦面に関しては、全方位のデジタルレーダーで障害物を検知してくれるので、安全性の高い作業が実現できます。折りたたむと展開時の25%までコンパクトに収まり、持ち運びが容易です。

    噴霧タンクとバッテリーはどちらも交換可能、ストックを用意しておけば中断時間が減り、作業効率が飛躍的にアップします。

    ドローン初心者の方にはDJI社のファントムシリーズがおすすめ

    DRONE START

    DJI社はドローンの世界シェア1位であり、幅広い層のユーザーに支持されています。低価格のエントリーモデルからハイエンドモデルまでラインナップが充実しており、目的やレベルに合わせて適切なドローンが見つかります。

    その中でもファントムシリーズは、これからドローンを始める方へ特におすすめしたいシリーズです。「PHANTOM 4PRO」はパワフルな動画処理性能を持ち、1インチ2,000万画素のCMOSセンサーを搭載しています。

    後方にデュアル・リア・ビジョンセンサー、左右に赤外線センサーの合計5方向で障害物を認識するので、安定した飛行が可能です。レンズは7群8枚構成で、空撮用に最適化されています。

    農業用ドローンに比べ低価格。型番商品でありながら、価格競争になっていないため、どこで購入してもほとんど同じ価格です。圃場センシングや見回り、鳥獣被害対策にぜひお役立てください。

    同モデルを購入するなら、アフターフォローに定評のある「DRONE START」がおすすめです。

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    まとめ

    ひと昔前に比べ、ドローンの価格や、メンテナンスコストは大幅に低下しています。これまで法人でしか実現できなかった作業が、個人でも比較的簡単にチャレンジできるようになりました。

    メーカー各社が農業用ドローンを続々リリースし、クラウドを活用したサービスも増え続けています。国内においても、ドローンを使用しての農作業が当たり前の光景となる時代がすぐそこまできているのです。

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