さつまいもの栽培・育て方│植え付けから収穫、栽培の注意点を解説【家庭菜園にも】
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秋といえば外せないのがさつまいも、10〜1月にかけてもっともおいしい旬を迎えます。
さつまいも栽培は比較的手間がかからず、初心者でも作りやすいため、家庭菜園入門にピッタリの作物です。
本記事では、さつまいもの植え付けから収穫までの栽培方法や注意点などを、元種苗メーカー勤務の筆者が解説します。
栽培のポイントを押さえて、おいしいさつまいもをたくさん収穫しましょう。
家庭菜園初心者でも簡単に栽培できる野菜についてはこちらの記事で紹介しています。併せて参考にしてみてください。
目次
さつまいもの栽培・植え付け時期
さつまいも栽培は、5月中旬〜6月上旬頃の植え付けから10〜11月中旬頃の収穫まで、約半年間が栽培期間です。
植え付けは平均気温18℃ほど、地温15℃以上が適温で、生育段階になると30℃以上の高温環境を好みます。
実際に栽培開始する月は地域によって前後するため、適温で植え付けていきましょう。
さつまいもの品種・種類
さつまいもには数多くの品種・種類があり、それぞれ味や食感などに異なる特徴をもっています。
ここでは、さつまいもの中でも代表的な5つの品種を、ホクホク・しっとり・ねっとりの食感別に紹介します。
もちろん、家庭菜園でも栽培しやすい品種ですので「どんな食べ方をしたいか」にあわせて選んでみてください。
食感 | 品種 | おすすめの食べ方 |
ホクホク系 | 紅あずま | 焼き芋・お惣菜全般・スイーツ系 |
鳴門金時 | 焼き芋・お惣菜全般・スイーツ系 | |
しっとり系 | 紅はるか | 焼き芋・干し芋 |
ねっとり系 | 安納芋 | 焼き芋 |
シルクスイート | 焼き芋・スイーツ系 |
さつまいもの栽培方法4ステップ
さつまいもの栽培方法を解説していきます。手順は4ステップです。
- 苗の準備
- 土作り
- 植え付け
- つる返し
順番に見ていきましょう。
1:苗の準備
さつまいもは、購入した苗を植え付けて栽培開始するのが一般的です。
4月下旬頃になると、地域の種苗店やホームセンター、通販などでも販売されますが、中には不健全な苗もあります。
自分で苗を選ぶ際の基準をまとめました。
- 茎が太くしなやか
- 葉数が5〜6枚
- 葉色が濃く厚みがある
- 長さが20〜25cmほど
- 節間が間延びしていない
植え付けまで期間があく場合はバケツなどに水を張り、苗の切り口が浸かるようにして、直射日光の当たらない場所で保存しましょう。
2:土作り
さつまいもは乾燥・高温に強く、栽培場所はあまり選びません。ただし、排水性・通気性がよく、肥料分の少ない土が理想です。
植え付け1〜2週間前には土をよく耕し、高さ20〜30cmほどの畝を立てておきましょう。高畝にすることで、畑の水はけがよくなります。
肥料は、土壌中の窒素が多くなりすぎないようにだけ注意してください。
窒素が多いと、つるばかりが伸びてイモの生育が悪くなる「つるぼけ」の原因となります。
前作の肥料が残っている場合は何も入れず、新たに作付けする場合も少ない元肥で十分です。
- 1平方メートルあたりの肥料量
- 堆肥:500g
- 窒素:3g
- リン酸:6g
- カリウム:10g
立てた畝に、雑草防止と地温確保のために黒マルチを張って、植え付け日を待ちます。
3:植え付け
5月中旬〜6月上旬頃になったら、いよいよ植え付けをしていきます。
まずはマルチ中央に、株間30cm間隔で畝と平行の切り込みを入れ、深さ10cmほどの植え穴を作りましょう。そこに苗を植えます。
主に3通りの植え方があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
水平植えか斜め植えで植えるのが一般的です。初心者の場合は斜め植えがおすすめです。
植え付け方 | メリット | デメリット |
水平植え | イモが多く付く | やや根付きにくい |
斜め植え | 根がつきやすい | イモはやや少なめ |
垂直植え | 大きなイモに育つ | イモが少ない |
実際に苗を植え付ける際には、以下の3点に注意して植え付けましょう。
- 畝と平行に植え付ける
- 節を3〜4節は土に埋める
- 葉と成長点は地上に出す
植え付け後は土をかけて鎮圧し、土が乾燥している場合はたっぷり水をあげます。その後1週間は根を定着させるために毎朝水を与えましょう。
最初は葉にしおれが出ますが、1〜2週間ほどで根が定着し、元気な葉になるので心配ありません。
4:つる返し
植え付け後つるが1mほどに伸びてきたら、つる返しを行います。
つる返しとは、伸びたつるを持ち上げて反転させ、節から生じた根を切る作業です。
節から生じた根を切らないと、つるの生育ばかり進み、栄養が分散して株元のイモがなかなか肥大しません。
よいさつまいもを収穫するためにも、つる返しは欠かせない作業です。
具体的なやり方としては、つるが1mほどに伸びた頃にはじめ、地面に接したつるを持ち上げて株元側に反転させます。
この時、葉裏に光が当たることで株が強く育ち、同時に虫予防にもなります。
しばらくすると、つるが自然に元の位置に戻るので、再びつる返しをしてください。これを夏〜秋にかけて、繰り返し行います。
真夏の作業は大変なので、1週間に1度ほどの頻度でまとめてやるのがおすすめです。
さつまいも栽培4つの注意点
さつまいも栽培は比較的簡単な部類に入ります。ただし、いくつかのポイントを知らないと失敗することも当然あります。
ここでは、さつまいも栽培で注意すべきポイント4点を解説していきます。
- つるぼけに気を付ける
- 水やりはあまり必要ない
- 植え付け後の除草を怠らない
- 注意すべき病気・害虫
さつまいも栽培の注意点を押さえて、失敗を防ぎましょう。
つるぼけに気を付ける
さつまいも栽培では、つるばかりが伸びてイモが大きくならない、いわゆる「つるぼけ」にさせないことが重要です。
つるぼけになる原因は3つ考えられます。
- 土壌中の窒素が多い
- 継続的な曇雨天
- 水はけの悪さ
中でも、土壌中の窒素が多いとつるぼけになりやすいです。
さつまいもは栄養を吸収する力が強く、前作の肥料や元肥、必要のない追肥で過剰になった窒素をたくさん吸収してしまいます。
肥料が少ないほうがよく生育する作物なので、不要な追肥は行わず、元肥はできるだけ少量で栽培しましょう。
水やりはあまり必要ない
さつまいもは乾燥に強い作物で、特に地植えの場合、基本的に水をやる必要はありません。
植え付け後1週間だけは、根の定着のため水やりが必要です。その後は雨や地中の水分のみで育ちます。
プランター栽培でも、土の表面が乾いてから2〜3日後に水をやるくらいで十分です。
このようにさつまいもは、乾燥した環境でよく育ち、むしろよいイモが収穫できます。
逆に水分が多すぎると株が弱り、根腐れや病気の原因になるため、くれぐれも水のやりすぎには注意しましょう。
植え付け後の除草を怠らない
植え付けから1ヶ月間は、つるの成長が遅く、雑草がよく伸びる期間です。
雑草を放置すると、イモの生育が抑制されたり、病害虫の原因になったり、作業の邪魔になったりと、かえって仕事を増やします。
怠ると栽培自体が失敗する可能性もあるので、除草作業は計画的に行いましょう。
目安としては、植え付けから1ヶ月後につるが急激に伸びはじめるため、1ヶ月経つ前にまとめて終わらせるのがおすすめです。
それまでに終わらせてしまえば、畑全体がつるで覆われて雑草の伸びが遅くなり、除草作業がとても楽になります。
注意すべき病気・害虫
さつまいもは連作障害が起きにくく、ほかの作物と比べて病害虫被害が少ない作物です。
しかし栽培期間が半年間と長い分、被害に合った時の影響は大きくなるため、種類や予防方法はあらかじめ知っておきましょう。
さつまいもで代表的な病気は、黒斑病・つる割病・基腐病などで、害虫ではハスモンヨトウ・ネコブセンチュウ・アブラムシなどが有名です。
さつまいもは病気・害虫に強いため、定期的な農薬散布や雑草防除、水はけの改善、土壌消毒や数年ごとの輪作をしていれば、基本的に問題ありません。
ただし、基腐病には警戒しておきましょう。
基腐病は2018年に初めて発生し、現在も全国的に拡大を続け、問題となっている病気です。
茎からイモまで腐敗させ、土壌伝染などで急激に広がる病気なので、発病したら多大な損害につながります。
現在ではアミスター20フロアブルなどが登録農薬になりましたが、完全に防ぐのは難しいでしょう。
そのため、種苗店などの信頼できる場所で購入した健全な苗を使い、病原菌を畑に持ち込まないことがもっとも重要です。
さつまいもの収穫
ここからは10〜11月中旬頃の収穫に向けて、3点を解説していきます。
- 収穫時期
- 収穫方法
- 貯蔵方法
順番に見ていきましょう。
1:収穫時期
植え付けから120〜140日ほどで収穫時期を迎えます。
さつまいもは霜に当たると腐敗しやすくなり、貯蔵性が落ちるため、初霜前には収穫を終わらせましょう。
また、収穫が遅すぎると形が悪くなり、はやすぎると味が落ちるため、かならず適期に収穫してください。
2:収穫方法
収穫は、晴れた日の午前中に行いましょう。
まずは、鎌などで株元からつるを切り落とし、マルチを剥がします。
イモが傷付かないよう、少し離れたところからスコップで掘り起こし、収穫してください。
収穫の際、さつまいもの切り口から白い液体が出てきて驚くかもしれません。これは「ヤラピン」というさつまいも独自の成分です。
乾くと黒いタール状になりますが、まったく問題なく食べられ、むしろ便秘改善などに効果的と言われています。
収穫後は、しばらく乾燥させ、表面が乾いてから貯蔵に移ります。
3:貯蔵方法
収穫・乾燥後、すぐには食べず、しばらく貯蔵します。
採れたてを食べたい気持ちは分かりますが、実は収穫してすぐのさつまいもはそれほど甘くありません。
2〜3週間貯蔵することによってデンプンが糖に変わり、より甘みの増したおいしいさつまいもになるのです。
貯蔵は、13〜14℃ほどの湿度の高い環境が適しています。
さつまいもは寒さに弱く、10℃以下だと腐敗しやすくなるので、冷蔵庫などで保存するのは絶対にやめましょう。
1個ずつ新聞紙に包み、空気穴をあけた発泡スチロールやダンボールに入れて保存してください。年内まで貯蔵可能です。
まとめ
さつまいもの栽培方法や注意点などを解説しました。
さつまいも栽培では、つるぼけ・水やり・除草の3つに特に注意しましょう。
このポイントを知っていれば、初心者でも立派なさつまいもが収穫可能です。
是非この記事を参考に、さつまいも栽培に挑戦してみてください。