トラクターの運転免許は?公道走行には大型特殊免許が必要?種類と費用を徹底解説!
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トラクターを走行する場合、私有地であれば運転免許は不要といわれることもあります。個人所有の田畑などでは違反になることはほとんどありませんが、私有地と公道の区別は非常に複雑です。また私有地でもスーパーの駐車場のような場所では無免許走行したとみなされ、厳しい罰則を受けることがあります。
そのようなことがないよう、トラクターを運転する場合には必ず免許を取得しましょう。この記事では、トラクターの運転に必要な免許の種類やその取得方法、取得にかかる費用や期間などをまとめて説明します。
目次
トラクターを運転するための免許について
トラクターは車両のサイズや最高速度によって「小型特殊自動車」、もしくは「大型特殊自動車」のいずれかに分類されます。免許についても、それぞれに対応したものが必要です。まずは車両に関する規定から見ていきましょう。
小型特殊自動車
全長 | 全幅 | 全高 | 最高速度 | |
---|---|---|---|---|
車体サイズ | 4.7m以下 | 1.7m以下 | 2.0m以下 | 15km/h 以下 |
ヘッドガード付 (安全フレーム) |
同上 | 同上 | ※2.8m以下 | 同上 |
小型特殊自動車とは、上記の条件に該当する車両を指します。
※ヘッドガード付車両は、ヘッドガードを除いた高さが2.0m以下の車両
このような車両を運転できる資格が「小型特殊免許」です。なお、普通免許を取得している場合、小型特殊車両の運転資格も含まれるので、新しくこの免許を取得する必要はありません。
大型特殊自動車
全長 | 全幅 | 全高 | 最高速度 | |
---|---|---|---|---|
車体サイズ | 4.7m以上 | 1.7m以上 | 2.0m以上 | 15km/h 以上 |
ヘッドガード付 (安全フレーム) |
同上 | 同上 | ※2.8m以上 | 同上 |
前述の小型特殊自動車の規定を1つでも超えた場合は、全て大型特殊自動車に該当します。このような車両を運転するための資格が「大型特殊免許」です。小型特殊免許と違い、普通免許の中には運転資格が含まれないため、新たに免許の取得が必要です。
大型特殊免許は、トラクター以外にも建設用のキャタピラーを使う機械なども含まれているため、農業用だけの免許も準備されています。
また、免許取得の費用については以下の項目で記載していますので参考にしてみてください。
こちらの記事では、トラクターのおすすめメーカーを紹介していますので、あわせて参考にしてください。
道路運送車両法と道路交通法の違い
よく混同されるのが「道路運送車両法」と「道路交通法」です。
道路運送車両法:車の構造の取り決めや、それに伴う車検の有無などについて定めた規則
道路交通法:運転する際の注意事項や、罰則の規定
「農業用トラクターは、時速35km以下のものは車両の大きさにかかわらず全て小型特殊自動車に分類される」という情報がインターネット上では多数見受けられますが、道路運送車両法上の規定です。運転免許の種類は農業用トラクターであっても車両のサイズで区別されるため、注意しましょう。
参考:自動車車検登録情報協会
こちらの記事では、トラクターの免許改正について解説していますので、あわせて参考にしてください。
作業機械を付ける場合
車両に応じた特殊免許を持っていれば、トラクターを走行させることができます。
しかしこれは「トラクター単独で」の走行に限ります。ただ、実際のところ農作業の実務においては、車体に直装型農作業機(ロータリー、ハロー、ブームスプレーヤ、播種機等、トラクターへ直接装着するタイプの機械)や、牽引するタイプの作業機(ロールベーラー、マニュアスプレッダ等の車輪がついている機械)などの作業機械を付けて使用することが一般的です。
これらの作業機械を装着・牽引した状態で公道を走行するには一定の条件が定められています。違反した場合は罰則規定も設けられているので、必ず確認することをおすすめします。
これまでは作業機械を付けたままでの公道走行は禁止されていました。しかし2019年に規制緩和が行われ、いくつかの規定を守った使用に限り、公道の走行が許可されました。
農林水産省:直装式作業機・けん引式作業機に係る簡易パンフレット
【直装型作業機】公道を走る4つの条件
農業機械を付けて公道を走行する場合の注意点は大きく分けて4つあります。
以上の条件を必ず確認してから公道を走りましょう。それでは条件の詳細について説明していきます。
灯火器類の確認
出典:YANMAR
作業機を装着した状態でも、ヘッドランプ、テールランプなどの全ての灯火器類、反射機が視認できることが必要です。ロータリーなどを装着した状態で、前方、後方から必ず確認しましょう。
見えない場合
所定の位置に灯火器類の設置が必要です。
出典:YANMAR
※時速15㎞以下で走行する小型特殊自動車には③幅灯、④ブレーキランプ、⑤バックランプ、⑥テールランプの取り付け義務がないので設置の必要はありません。ただし、その場合でも全幅が1.7mを超えた場合には
①ヘッドランプ、②ウインカー、⑦後部反射機は取り付け義務が生じるので気を付けましょう。
見える場合でも必要なこと
灯火装置および反射器の取り付け位置が最外側(農作業機の端)から、40cmを超える場合は以下の対応が必要です。
出典:YANMAR
車体幅の確認
小型特殊自動車にあたるトラクターの場合、農業機械が幅1.7mを超えると、反射機やサイドミラーなど、付けなくてはいけないものが発生します。
また、作業機が幅2.5mを超えると別途対応が必要になるので必ず確認してください。
全幅が1.7mを超える場合
出典:YANMAR
全幅2.5mを超える場合
出典:YANMAR
トラクター単体で小型特殊車両(長さ4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、かつ、最高速度15km/h以下)に該当する場合、作業機を装着した状態で2.5mを超えると、トラクターの左側にサイドミラーを設置する必要があります。
走行速度の確認
作業機を装着することで、トラクターの安定性が変わるため、保安基準(30度または35度)を満たせなくなる場合があります。
安定性の確認方法
トラクターとロータリーなどの農作業機の組み合わせによる安定性の結果については、日本農業工業会のホームページで確認できます。安定性が確認されたものについては、15㎞以下の速度制限はありません。
安定性が確認できない場合
上記で安定性が確認できないトラクターについては以下の項目を順守する必要があります。
免許の確認
作業幅が1.7m以下の小型特殊車両は最高速度が15㎞以下の走行であれば小型特殊免許・普通免許での運転が可能です。
また、小型特殊車両の寸法を超える車両、主に幅が1.7mを超えるトラクターについては大型特殊免許(農耕作業用自動車限定の大型特殊でも可)が必要になります。
規制が緩和されたことによって、作業機械付のトラクターの公道走行が公に認められましたが、細かな規制が設けられたことにより、違反すれば明確に罰則されるということにもなります。必ず法律上の規定を確認するようにしてください。
【けん引式作業機】公道を走る4つの条件
続いてはマニュアスプレッダー、けん引式ブームスプレーヤ、ロールベーラ等をけん引した状態で公道走行が可能かどうかのチェックポイントを紹介していきます。牽引式農作業機は、道路運送車両法上「農耕作業用トレーラー」として普通のトラクターとは別の自動車としての扱いになります。こちらも一定の条件をクリアすれば公道走行が可能になっていますので次にポイントを必ずチェックしてください。
前提条件
4つのチェックポイントの前に、牽引式農耕作業機を付けて公道を走る際の前提条件を説明します。
トラクターとは別に農耕作業用トレーラーとしての保安基準を満たす灯火器類をけん引式作業機の全面及び後面に装着する必要があります。
また、万が一トラクターとけん引式作業機が分離した場合に備えて、チェーンなどで丈夫な装置で繋いでおく必要があります。尚、けん引車はトラクターに限定され、けん引作業機に積むことができるのは農作業に必要な物という制限があります。コンバイントレーラー等の汎用性が高いものは注意が必要です。
灯火器類の確認
けん引式作業機はトラクターとは別の自動車として扱われるため、トラクターに灯火器類が見えていても、けん引式作業機本体に灯火器類を設置する必要があります。
※時速15㎞以下で走行する小型特殊車両であるトラクターでけん引する作業機の場合、車幅灯テールランプ、ブレーキランプバックランプの取り付け義務がないので設置の必要はありません。ただし、その場合でも全幅が1.7mを超えた場合には方向指示器、前部反射器、後部反射器は取り付け義務が生じるので気を付けましょう。
車体幅の確認
けん引するトラクター単体が、長さ4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、かつ、最高速度15km/h以下の場合、けん引式農作業機の幅が1.7mを超えていないか確認する必要があります。
全幅が1.7mを超える場合
トラクタの左側にサイドミラーを設置する必要があります。
全幅2.5mを超える場合
トラクター単体が小型特殊車両(長さ4.7m以下、幅1.7m以下、高さ2.0m以下、かつ、最高速度15km/h以下)に該当する場合、けん引作業機をが2.5mを超えると、トラクターの左側にサイドミラーを設置する必要があります。
走行速度の確認
けん引作業機にはブレーキが尽きていないものが多いです。ブレーキがついていない場合や最大安定傾斜角度の基準(30度または35度)を満たしているかどうかを確認できない場合は、運行速度15㎞/h以下で走行しなければなりません。
安定性が確認できない場合は以下のポイントを守る必要があります。
免許の確認
けん引するトラクターがいわゆる特定小型特殊自動車の条件を一つでも超える場合は、トラクター単体の運転でも大型特殊免許(農耕作業用自動車限定の大型特殊でも可)が必要になります。
また、その大型特殊免許が必要なトラクターに加え、車両総重量750㎏を超えるけん引式作業機を牽引する場合、けん引免許(農耕作業用自動車限定のけん引免許でも可)が必要になるので注意しましょう。
免許を取得するための条件
トラクターの運転に必要な免許について、個々の特徴や取得条件などを見ていきます。詳細は各都道府県や通う教習所によって違うので、次項を参考にしつつ情報を集めてください。
普通免許
普通免許を取得すると小型特殊自動車の運転資格も付いてきます。そのため、現在普通免許を持っている方は、トラクターのサイズによってはすぐに運転することができます。
取得できる年齢は満18歳以上です。視力が、片目がそれぞれ0.3以上、両眼で0.7以上であること、片目の視力が0.3に満たない、あるいは片目が見えない場合は、もう一方の目の視野が左右150度以上あることなどが条件です。
小型特殊免許
満16歳から取得できます。視力は両眼で0.5以上あれば受験できるので、普通免許よりハードルが低く設定されています。実技試験がなく、適性試験と学科試験のみで取得できるのが特徴です。
そのため、取得にかかる費用が非常に安く抑えられます。受験料は適正試験と学科試験をあわせて1,500円、試験に受かるとかかる免許証交付手数料が2,050円で、合計3,550円で取得できます。(2020年8月現在の東京都の場合)
参考:警視庁:小型特殊免許試験
大型特殊免許
この免許を取得すると全ての大型特殊自動車を運転できるようになりますが、取得には多くの時間や費用がかかります。そのため、農作業用のトラクターを運転する農業従事者に限り、「大型特殊免許(農耕車限定)」を取得できます。
基本の受験資格は、大型特殊免許も農耕車限定免許も、普通免許と同じです。農耕車限定免許の場合、「農業従事者(従事予定者)であること」と「普通免許を持っていること」が受験資格になることが多いようです。農耕車限定免許は各都道府県が定める場所での講習や研修のあと、適性検査や実技試験を受けることで取得できます。
けん引免許
農作業でトレーラーに大型のコンバインなどをに乗せて運搬する際は、トレーラー牽引の免許が必要です。
トレーラーで牽引する際、大型特殊免許で乗れる大型のトラクターや普通免許で乗れるトラックを使用する際、普通免許や大型特殊免許をすでに持っているなら、新しく免許を取る必要はありません。
しかし、コンバインなどの重量が750kgを超える場合は、牽引の免許の取得が必要になります。牽引の免許は3種類ありますが、農耕用に必要なのは「牽引第一種免許」のことがほとんどです。
大型特殊免許を取得方法・費用・期間
免許の取り方には、大きく分けて「教習所」「合宿免許」「直接試験」という3つの方法があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。
教習所
普通免許を取得している | 取得していない | |
---|---|---|
取得費用 | 約10~13万円 | 約17~25万円 |
取得期間 | 約2週間程度 | 教習期限3か月 |
学科試験や実技試験の受験にあたり、必要な内容を全て教えてもらえるのが教習所です。特に実技は各教程を1つずつクリアしていく必要があるので、全て修了すれば高い合格率が期待できます。実技試験まで教習所で一括受験できるのもメリットの1つでしょう。
共有はすべて場内コースで行われ、普通免許と違い路上教習がありません。また、仮免許もないので6時間程度の技能講習を受ければ卒業検定を受験することができます。忙しくてまとまった時間が取れない方は、都合に合わせながら教習所に通うことで、通常2週間程度で取得可能です。
デメリットは教習所ごとに教習期間に上限があり、その間に合格しなければならないことです。1日に受けられる教程の時間数に限りがあることが多く、全てのカリキュラムをこなすまでに長い期間がかかります。また、そもそも大型特殊免許を取り扱っている教習所が少ないということも上げられます。そのため、計画的に教程を進めていく必要があります。
合宿免許
取得費用 | 約8.5~13万円 |
---|---|
取得期間 | 最短4日~ |
一定期間、決められた場所で合宿しながら一気に取得を目指す方法です。集中してカリキュラムをこなすことで、教習所よりも短期間で免許の取得(最短で4日程度の教習所もあり)ができます。宿泊や食事の経費を含めても、教習所に通うより少ない金額で済むのもメリットです。
デメリットは、合宿に行くためにまとまった休みを取る必要があることです。夏休みや春休みなどの長期休暇があり、時間に融通の効く学生のうちに利用するのがおすすめです。
試験に合格できず、期間の延長により宿泊料金や検定料金が追加されてしまうケースもあるため、注意が必要です。
直接試験
取得費用 | 6,100円(税込) |
---|---|
取得期間 | 1日 ※技能講習のみ |
教習所や合宿に通わず、直接運転免許試験場に行き、受験することも認められています。この場合、適性試験と学科試験を1日で受験し、合格後に技能試験を受けます。適性試験、学科試験と技能試験は別の日に行わなければいけないので、最短で2日あれば免許を取得できます。
デメリットは、全て自力で勉強しなければいけないことです。勉強の方法や運転のしかたによっては何度も試験に落ちてしまう人もいます。
取得費用内訳:受験料2,600円、試験車使用料1,450円、免許証交付料2,050円
無免許運転をするとどうなるのか
もし無免許でトラクターを運転した場合、以下のような重い刑罰の対象になります。絶対にやめましょう。
刑事罰
無免許運転した場合の罰則は、「3年以下の懲役」もしくは「50万円以下の罰金」です。無免許運転をした本人だけではなく、無免許と知りながら車両に乗れるようにした人、あるいは同乗者も罰則の対象です。
参考:e-Gov:道路交通法
行政処分
無免許運転が発覚すると、警察による刑事罰に加え、公安委員会による行政処分も下されます。無免許運転の違反点数は25点で、これは交通違反に関する処分の中で最も重い部類の点数です。
たとえ過去に違反歴が全くなくても、15点の違反で免許は一発取り消しです。25点ともなると、取り消しのうえに最低でも2年間は再取得ができません。行政処分の前歴がある場合、欠格期間が3年以上になる可能性もあります。
こうなると、本来の目的である農作業にも致命的な影響を与えるでしょう。
免許を取得したら「中古農機市場UMM」で中古トラクターを探そう
トラクターを運転するために免許の取得を考えているなら、同時にトラクターを安く手に入れる方法も調べてみましょう。おすすめは「中古農機市場UMM」です。
「クボタ」や「ヤンマー」などのメーカー名や、「トラクター」、「ロータリー」など欲しい商品のカテゴリなど、好みにあわせて、中古農機具を探すことができます。
「農家会員」なら入会金・年会費無料で欲しい商品を購入することができます。また、「業者会員」になると、業者価格でお得に購入することも可能です。
まとめ
速度が遅く、農作業にしか使用しないトラクターであっても、無免許で運転することは許されません。重い刑罰を受けるうえ、一定期間は新たに免許を取得できず、仕事に大きな支障を及ぼします。
「田んぼや畑で乗るだけだから」と軽く思わず、免許取得を目指しましょう。小型特殊免許であれば普通免許に資格が付いてきます。大型特殊免許でも農耕車限定免許なら、普通免許を所持していれば取得へのハードルが低くなります。まずは普通免許を取得することが農業者への第一歩です。
こちらの記事では、トラクターを購入する際に確認するべき馬力について紹介していますので、あわせて参考にしてください。