土壌改良材とは?|種類や使い方、目的別のおすすめ資材を解説【栽培は良い土作りから】
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水はけや水もちの悪い土、カチカチに固くなった畑を、作物が健康に育つ土に改良してくれる土壌改良材。
しかし土壌改良材は種類豊富なため、「どれを使えばいいのか分からない」という人も多いでしょう。
本記事では、土壌改良材の種類・効果や使い方、目的別のおすすめ資材などを、元種苗メーカー勤務の筆者が徹底解説します。
目次
土壌改良材とは
土壌改良材とは、作物の栽培に適した土にするために施す資材のことです。
作物に栄養を与えることが目的となる肥料とは異なり、土の「物理性」「化学性」「生物性」の3つの要素を改善するために使います。
【良い土の三要素】
- 物理性:土の通気性・排水性・保水性・保肥性
- 化学性:肥料分・酸度(pH)
- 生物性:土壌生物・微生物のバランス
畑の放置や栽培を続けていると、徐々に三要素のバランスは崩壊していきます。三要素が欠如した土壌では、健康に育てることもよいものを収穫することもできません。
そのため適切に土壌改良材を使い、土壌環境を改善する必要があるのです。
プランターなどで市販の培養土を利用する場合は、必要な栄養素がすでに含まれているため必須ではありません。ただし、畑でよい作物を育てるためには不可欠といえるでしょう。
土壌改良材4種類の特徴・効果
土壌改良材は、大きく4つのカテゴリーに分けられます。
- 植物性堆肥
- 動物性堆肥
- 石灰資材
- その他
カテゴリーごとの特徴と、代表的な土壌改良材を解説します。
1:植物性堆肥
植物性堆肥は、落ち葉や草、樹皮やもみ殻など、植物性のものを発酵させて作る堆肥です。
含まれる栄養は少量ですが、通気性・排水性・保水性などの物理性の改善、土壌微生物の活性化など、高い土壌改良効果をもっています。
どのような土にも利用できる、汎用性の高さが特徴的です。
腐葉土
腐葉土とは、広葉樹の落ち葉を積み重ね、長時間かけて発酵させたものです。
繊維分が多く含まれているため、通気性・排水性・保水性・保肥性の改善に効果的。土をフカフカにしてくれます。
またミネラルも多く含まれているので、植物の生育や食味向上にも有効です。
汎用性が高く、基本的にどんな畑の土壌改良にも利用でき、植物のマルチとしても使えます。
バーク堆肥
バーク堆肥とは、針葉樹・広葉樹の樹皮に鶏ふんなどを加え発酵させたものです。
栄養の吸収を助ける「フミン酸」という成分が含まれており、保水性・保肥性を改善できます。
また分解されにくい炭素を多く含んでいるため、土壌改良効果の持続時間が長いのが特徴的。
どんな畑でも利用でき、特に水もち・肥料もちが悪い場合におすすめです。
もみ殻堆肥
もみ殻堆肥とは、もみ殻に鶏ふん・米ぬかなどを加えて発酵させたものです。
軽量で空気が通る隙間が大きいため、通気性・排水性に優れ、土を柔らかくしてくれます。
また完熟したものならば保水性も高いため、あらゆる条件の土に効果的です。
さまざまな畑の土壌改良に役立ち、粘土質の土では特に高い効果が期待できるでしょう。
2:動物性堆肥
動物性堆肥は、牛や鶏、豚などのふんを発酵させて作る堆肥です。
窒素・リン酸・カリウムなどの栄養素を豊富に含むため、土壌改良だけでなく、肥料としても利用できます。
牛ふん堆肥
牛ふん堆肥とは、牛のふんに稲ワラやおがくずなどを加え、堆積発酵させたものです。
繊維分を多く含むため、通気性・排水性・保水性・保肥性などの土壌改良効果が高く、土をフカフカに改良してくれるのが特徴的。
また肥料分も適度にバランスよく含まれているため、ゆっくりと効果が現れる緩効性肥料としても利用可能です。
さまざまな土壌に向いており、痩せた土や作付け前などに混ぜ込んで使うと、高い効果を期待できます。
鶏ふん堆肥
鶏ふん堆肥とは、鶏ふんを堆積発酵させて作った堆肥です。
土壌改良効果のある繊維分はほとんど含まれていません。ただし、肥料分は化学肥料なみに含まれています。
そのため、土壌改良材というよりも肥料として利用するほうが一般的です。
鶏ふん堆肥は、有機にこだわって栽培したい場合の肥料にピッタリです。ただし、ほかの堆肥と同じ感覚で施用すると、使いすぎになるため注意してください。
豚ぷん堆肥
豚ぷん堆肥とは、豚ぷんに稲ワラなどを加えて堆積発酵させたものです。
牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥の中間的存在で、牛ふんよりも多い肥料分と、鶏ふんよりも多い繊維分を含んでいます。
植物に肥料を与えつつ、土壌改良をしたい場合に利用するとよいでしょう。
3:石灰資材
石灰資材は、主に土壌酸度(pH)を調整する際に使う、アルカリ性の資材です。
カルシウムやマグネシウムなど、畑に不可欠な栄養の補給材としても使われます。
消石灰
消石灰は、石灰岩を粉状にした生石灰に水を加えて熟成させたもの。化学的には、水酸化カルシウムと呼ばれる物質です。
強いアルカリ性をもち、すばやく効果が現れます。強酸性の土壌を一気に中性に戻したい時に利用します。
ただし、量を少し間違えるとアルカリ性に偏りすぎてしまうので、石灰を使い慣れていない初心者にはおすすめできません。
苦土石灰
苦土石灰とは、ドロマイトという岩石を細かく砕いたものです。苦土はマグネシウム、石灰はカルシウムを指しています。
カルシウムとマグネシウムがバランスよく配合されており、ゆっくり穏やかな効き目が特徴的です。
とても扱いやすいため、小さな家庭菜園から大規模の農家まで幅広くおすすめできます。
有機石灰
有機石灰とはカキ殻などの貝殻やサンゴの化石など、天然物を原料として作られる石灰資材です。
アルカリ度が低く、酸度調整の効果は薄いです。肥料分やミネラルなどの微量要素も含まれているため、肥料や土壌改良材としても使えます。
消石灰・苦土石灰とは異なり、施す量やタイミングを間違えても、植物を植えた後にまいても障害が出る心配がありません。
そのためオーガニックにこだわりたい人だけでなく、石灰を使い慣れていない初心者にもおすすめです。
4:その他の土壌改良材
堆肥や石灰資材以外にも、さまざまな土壌改良材があります。
下記で解説する土壌改良材は、土の柔らかさや排水性・保水性など、土の物理性の改善がメイン効果です。
堆肥だけでは改良できない場合に併用して使われる、優秀な土壌改良材が多くあるので把握しておきましょう。
もみ殻くん炭
もみ殻くん炭とは、もみ殻をいぶして炭にしたものです。
ケイ酸などの微量要素が豊富に含まれており、植物の生育を助けながら排水性・通気性・保水性・保肥性の改善ができます。
そのほかにも微生物の活性化や酸度調整、消臭効果など、さまざまな効果をあわせもつ優秀な土壌改良材です。
どのような畑でも利用でき、粘土質・水はけの悪い畑で特に高い効果を発揮します。
パーライト
パーライトとは、黒曜石や真珠岩などの火山岩を加熱・冷却し、細かく砕いたものです。
表面に多数の穴があるため非常に軽く、通気性・保水性・排水性の改善に役立ちます。
原料によって効果が異なるため、土質に合わせたものを選んでみてください。
- 黒曜石パーライト:粘土質・水はけの悪い土壌向き
- 真珠岩パーライト:砂質・水もちの悪い土壌向き
バーミキュライト
バーミキュライトとは、苦土蛭石(くどひるいし)と呼ばれる鉱物を高温で膨張させ、細かく砕いたものです。
空気や水分、肥料分を溜めやすい構造のため、通気性・保水性・保肥性の改善効果が期待できます。
軽量で保温性が高く、無菌であるため、種まき・育苗用に使われることが多いです。
ピートモス
ピートモスとは、腐植化したミズゴケなどの植物を乾燥・粉砕したものです。
バーミキュライトと同様に無菌でありながら、通気性・保水性・保肥性の改善、微生物を活性化効果が期待できます。
そのため、種まき・育苗用〜栽培用の土として、幅広く利用可能です。
またピートモスは強い酸性であるため、酸性を好む植物を育てる時や、アルカリ性に偏った畑の酸度調整に最適です。
ただし、ピートモスを入れすぎると土壌が酸性に偏る原因になります。土壌酸度を変えたくない場合は、酸度調整済みのピートモスを使いましょう。
目的別のおすすめ土壌改良材
「土がカチカチ・水はけが悪い・pHが低い」など、畑の状態によって使うべき土壌改良材は異なります。
- 土質を改善したい・フカフカにしたい
- 土壌酸度(pH)を調整したい
ここでは目的別におすすめの土壌改良材を紹介します。
目的にあわせた資材を選び、適切に土壌改良していきましょう。
土質を改善したい・フカフカにしたい
土がカチカチに固くなり、水はけや水もちの悪い畑ではいい作物は育てられません。
健康に生育させ、よいものを収穫するためには、土壌の通気性・排水性・保水性といった物理性を改良し、土をフカフカにする必要があります。
土壌改良の基本となるのは3つの資材です。
【土壌改良の基本となる資材】
- バーク堆肥
- 腐葉土
- 牛ふん堆肥
これらの3つはとても汎用性が高く、どのような土質の畑でも効率的に改良できます。栽培する植物にあわせて1つ選んで施しましょう。
また基本の改良材に加えて、畑の土質ごとの資材も施すと、排水性・保水性などをより改善できます。
【粘土質・水はけが悪い場合】
- もみ殻くん炭
- パーライト
【砂質・水もちが悪い場合】
- バーミキュライト
- ピートモス
土壌酸度(pH)を調整したい
土壌酸度(pH)の調整は、アルカリ性の石灰資材を利用するのが基本です。
ほとんどの作物が弱酸性〜中性の土壌を好むのに対し、日本の土壌は野菜を育てていなくても、雨などで徐々に酸性に偏っていきます。
pHを調整せずに栽培すると、生理障害や病気、生育阻害にもつながりかねません。
そのため栽培前には、石灰資材をまいて酸度調整を行いましょう。
【酸度調整に使う石灰資材】
- 消石灰
- 苦土石灰
- 有機石灰
有機石灰は栽培の直前や途中にまいても問題ありません。ただし消石灰と苦土石灰は馴染むのに時間がかかるため、種まきや植え付けの2週間以上前にまくのが基本です。
なお、アルカリ性に偏った畑を弱酸性〜中性に戻したい場合は、酸度調整されていないピートモスなどを入れて調整しましょう。
土壌改良材の使い方
土壌改良材は一気に投入するのではなく、作付けに合わせて一定量すき込んで、徐々に土質を改善していくのが基本です。
そのため、理想の土壌環境に整えるには数年ほどかかるでしょう。
畑に土壌改良材を投入するタイミングは、種まきや植え付けの2週間以上前が基本です。
- 堆肥・改良材:1平方メートルあたり2〜3kg
- 石灰:畑の酸度にあわせて量を調整
肥料は石灰を入れた1週間後に入れましょう。石灰と肥料を一緒に施すと、化学反応を起こしてアンモニアガスとなり、効果が消失する可能性があります。
家庭菜園であればプランター・花壇などに培養土と改良材を入れて、一気に土質を変えることできます。
まとめ
本記事では、土壌改良材について解説しました。
農業では、作物にあわせた土作りが基本中の基本。適切に土壌改良していけば作物が健康に育ち、高品質なものがたくさん収穫できるでしょう。
この記事を参考に、土壌改良材を適切に利用して、良い土作りをしていきましょう。