高齢者の食事で気を付けることは?食べやすい食事や栄養についても解説!
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「高齢者が食べない」という悩みがある方は少なくありません。高齢者の食事には、栄養以外にも気を付けることがあります。
ただ柔らかいだけではなく、高齢者が食べやすい献立にし、食べやすい環境を作ることが大切です。
この記事では、高齢者が食べやすくなる調理法などを解説しています。また、介護する人の手助けとなるレトルト介護食や、介護食の宅配についても紹介します。
高齢者の特徴を理解し、気を付けるポイントを抑えると、高齢者の食事がスムーズに進むようになりますよ。
目次
高齢者が食べられなくなる原因は?高齢による体の変化を理解しよう
高齢者が食べられなくなるのは、主に3つの身体機能の低下が原因です。
高齢による身体機能の低下
- 噛む力が弱くなる
- 飲み込む力が弱くなる
- 味覚が衰える
それぞれに、老化だけではない理由があります。詳しく見ていきましょう。
噛む力が弱くなる
高齢者が噛む力は、顎の力が弱くなったり、歯の本数が減ったりすることで弱くなります。友人や近所の人と会話をすることがなくなり、顎を使う頻度が減るので、さらに衰えていきます。
さらに、だんだん柔らかいものを好んで食べるようになるため、さらに噛む力が弱くなっていきます。
噛む力が弱くなると、摂取エネルギーが減り、炭水化物を多く摂るようになるので、栄養バランスに気を付ける必要があります。
飲み込む力が弱くなる
飲み込む力が弱くなる原因は、舌や喉や食道器官の筋肉や神経の衰え、神経系の病気のほか、うつ状態などの心理的なことも影響します。
飲み込む力が弱ってきたときの症状には、以下のようなものがあります。
飲み込む力が弱ってきた時の症状
- 食事中にむせたり、咳き込んだりする
- 食事の量が減ってきた
- よく痰がからむ
- 食事中に口から食べ物がこぼれる
- 食べ物が喉から逆流する/li>
上手く飲み込めないと誤嚥性肺炎のリスクもあるので、飲みやすい調理法にしたり、疾患が原因の場合は薬で対策したりする必要があります。
味覚が衰える
高齢者は、舌で味を感じる「味蕾」が減少するため、薄い味を感じにくくなります。そのほかにも、以下のような原因があります。
味覚が衰える原因
- うつなどの心理的要因
- 服用している薬の副作用
- 口腔内の汚れ
- 唾液の減少
- 亜鉛不足
味覚が衰えると、おいしいと感じにくくなるので、食べられなくなります。また、濃い味を好むようになるため、塩分を摂りすぎてしまいます。
塩分控えめの食事にするのはもちろん、食べ物の匂いで味覚を補うこともできるので、食事を作っているときの匂いも利用しましょう。
高齢者が食べやすい食事とは?調理法と食材から解説
高齢者が食べやすい食事にするには、衰える機能に合わせて「噛みやすく」「飲み込みやすく」「おいしいと感じる」食事にする必要があります。また、食材によっても、食べやすさが異なります。
具体的な調理法や食材について、詳しく解説します。
噛みやすくする調理法
肉や繊維質の多い野菜、固い豆類は栄養価が高いものの、高齢者が食べにくい食材です。噛む力をなるべく落とさないように、その人に合わせて固さを変えていきましょう。
噛みやすくする調理法のアイデア
- 肉や魚は一口大にカットする。噛む力に合わせて、徐々に小さくする。
- 肉は繊維を断ち切るように切り、筋や脂身を取り除く。
- 野菜も繊維や葉脈に対して垂直に切る。
- 根菜は皮をむいて、箸ですっと切れるまで茹でる。
- 葉野菜も蒸し器や電子レンジを活用して柔らかくする。
- 野菜を炒めるときは、一度レンジしたものか茹でたものを利用する。
- 豆類は噛みにくいので、柔らかくしてから刻む。
- 圧力鍋を使うと、肉や根菜を簡単に柔らかくできる。
高齢者の噛む力に合わせた食材の大きさや柔らかさの目安は、次の表のとおりです。まだしっかり噛めるのに柔らかくしてしまうと、顎の力がどんどん衰えてしまいます。逆に固すぎるものは、誤嚥の危険もあります。
ちょうどいい大きさや柔らかさを確認しておきましょう。
噛む力 | 固いものや大きなものでなければ食べられる | 歯茎でつぶせる | 舌でつぶせる | 固形物が食べにくい |
---|---|---|---|---|
硬さの目安 | ご飯:柔らかめ 卵:硬めの卵焼き 肉じゃが:柔らかめ |
ご飯:柔らかめ~全粥 卵:だし巻き卵 肉じゃが:柔らかめ |
ご飯:全粥 卵:スクランブルエッグ 肉じゃが:煮崩れるほど |
ご飯:ペースト 卵:茶碗蒸し(具なし) 肉じゃが:ペースト状 |
大きさの目安 | 1cm~一口サイズ | 5㎜~1cm | 5㎜未満 | ペースト状 |
飲み込みやすくする調理法
飲み込みやすくするには、柔らかくするのはもちろん、喉にひっかからない工夫をする必要があります。
飲みやすくするためにとろみをつけるのが一般的ですが、特に飲み込みにくい症状がある高齢者には、水やお茶にも、とろみをつける必要があります。
飲み込みやすくする調理法のアイデア
- 食材の茹で時間を長くしたり、圧力鍋を利用して、柔らかくする。
- 加熱しても繊維質が残るものは、ペースト状にする
- 茶碗蒸しのようなムースやゼリー状にする。
- 片栗粉やコーンスターチ、ゼラチンでとろみをつける
- 噛む力があるときは、あんかけにする
おいしいと感じる調理法
味覚の衰えで、おいしいと感じなくなるため、食べなくなったり、塩分を摂りすぎたりしてしまいます。また、味の濃いインスタント食品を好むようになるので、カルシウムやタンパク質などが不足する恐れもあります。
そのため、普通の味の濃さで、おいしいと感じさせる工夫が必要です。
おいしいと感じる調理法のアイデア
- キッチンから調理中の匂いを出す
- だしのうまみで、塩分を控える
- 酢や香辛料、香味野菜などを使って、味にアクセントをつける
- 1品だけ濃い味にして、副菜などは塩分控えめにすることで全体でバランスをとる
- 旬の食材を使うことで、素材本来の甘味を活かす
調理法ではありませんが、体内の塩分(ナトリウム)を調整するカリウムを多く含む食材を使うのもおすすめです。
切り干し大根、ほうれん草、にんじん、干し柿、バナナ、メロン、イモ類、海藻類
食べやすい食材と食べにくい食材
食材自体にも、高齢者が食べやすいものと食べにくいものがあります。
食べやすい食材を選ぶのはもちろんですが、食べにくい食材の中には栄養面で摂っておきたいものもあります。
下の表にまとめたので、確認しておきましょう。
食べやすい食材
形状 | 食品の例 |
---|---|
とろみがあるもの | おかゆ、すりおろしたとろろ芋、ポタージュ、シチュー、カレー、ピューレ |
ツルンと口当たりがいいもの | 具なし茶碗蒸し、豆腐、水ようかん、ゼリー、プリン |
乳化されたもの | ヨーグルト、アイスクリーム |
口の中でまとまりやすいもの | バナナ |
ミンチ状のもの | 柔らかい肉団子、つみれ、ハンバーグ |
食べにくい食材
形状 | 食材の例 | 対策 |
---|---|---|
サラサラのもの | 水、お茶、お味噌汁、スープ | とろみをつける |
繊維が多いもの | ごぼう、たけのこ、水菜、青菜の茎、パイナップル | 野菜は皮をむく。繊維を切るように刻んでとろみをつける |
スポンジ状のもの | パン、高野豆腐、カステラ | 細かく刻んで、とろみをつけたり、とろとろのものと和える |
弾力が強いもの | こんにゃく、はんぺん、ちくわ、麺類 | 麺類はできるだけ柔らかくして刻む |
まとまりにくいもの | チャーハン、こふき芋、そぼろ、お茶漬け | 米はお粥か雑炊にする とろみをつける |
口に貼りつくもの | 海苔、わかめ、きなこ、餅 | 海苔やわかめは粉末状のものを汁物に混ぜる |
薄くてペラペラしたもの、固いもの | ハム、せんべい、肉、リンゴ、梨 | ハムは細かく刻んでマヨネーズで和える 果物はすりつぶす 肉は細かく刻んでとろみをつける |
高齢者の食事の栄養面で気を付けることは?
高齢者が食べやすいものだけを食べていると、栄養面での偏りや、栄養不足の恐れが出てきます。高齢者に必要な栄養素や、1日の食事量の目安について見ていきましょう。
高齢者が不足しがちな栄養素
高齢者が食べやすいものは炭水化物が多いため、次のような栄養素が不足しがちになります。
タンパク質
筋肉や血液、骨など、体そのものを作る栄養素です。また、体を動かすエネルギー源でもあり、体内の機能調整を行うホルモンなどの原料でもあります。
そのため、タンパク質が不足すると、筋肉量が落ちるだけでなく、体力や思考力の衰えにも繋がります。
タンパク質が摂れる調理のアイデア
- 野菜のあんかけのあんにツナを入れる
- 肉豆腐やすき焼きにする
- おかゆに細かくほぐしたサラダチキンを入れる
カルシウム
歯や骨の成分であるだけでなく、ホルモンの分泌や血液凝固にも関わる栄養素です。
カルシウムが不足することで、骨がもろくなる骨粗しょう症の恐れがあるのはもちろん、血中のカルシウムが足りなくなると、骨からカルシウムが血液中に流れ出し、動脈硬化や高血圧の恐れも出てきます。
カルシウムが摂れる調理のアイデア
- 煮干しの粉末が入ったふりかけをかける
- シチューに牛乳を多めに使う
- 粉チーズをかける
食物繊維
お腹の調子を整える食物繊維は、血糖値の上昇もゆるやかにしてくれます。
食物繊維が多く含まれる食品は、高齢者が食べにくいものが多いですが、あまり動かない高齢者は、排便が困難になっていることも多いので、食物繊維を摂ることを意識しましょう。
食物繊維が摂れる調理のアイデア
- 白米に雑穀米(豆類のないもの)を混ぜる
- カレーやシチューにおからパウダーを入れる
- やわらかいマッシュポテトを付け合わせにする
亜鉛
亜鉛は、体内でホルモンや細胞を生成するときに必要な栄養素です。不足すると、体力そのものが落ちたり、味覚障害がおきたりします。
高齢者の6割が亜鉛不足と言われています。亜鉛は、傷の治癒力にも大きくかかわっているため、褥瘡(床ずれ)の予防のためにも、摂っておきたい栄養素です。
亜鉛が摂れる調理のアイデア
- すりおろしたゴマをかける
- おかゆにひきわり納豆を入れる
- 汁物に卵を入れる
高齢者に必要な1日の食事量
75歳以上の高齢者の1日に必要なエネルギー量は、次の表のとおりです。自分で歩いて外出できる人と、ほとんど家から出ない人では、ご飯茶碗1杯分ほどのカロリーの差があります。
身体活動レベル | Ⅰ 自宅にいて ほとんど外出しない |
Ⅱ 自分の足で 外出できる |
---|---|---|
男性 | 1,800kcal | 2,100kcal |
女性 | 1,650kcal | 1,400kcal |
この摂取エネルギー量を、「食事バランスガイド」(農林水産省)に当てはめると、次のようになります。
自宅にいてあまり動かない男性の場合
- 朝食:ご飯1杯、野菜サラダ、納豆1パック、フルーツヨーグルト
- 昼食:天ぷらうどん、ほうれん草のおひたし、りんご半分、牛乳コップ半分
- 夕食:ご飯1杯、具だくさん味噌汁、筑前煮、酢の物、焼き魚
これを、1日で摂る栄養素別で見てみると、次のようになります。あまり動かない男性の場合の量なので、女性ならご飯を1杯分減らして参考にしてくださいね。
1日で摂るべき栄養素
- 炭水化物:ご飯3杯分
- 肉・魚・豆類:体重(kg)×1g以上以上
- 野菜:生野菜で両手に3倍、加熱野菜で片手に3倍
- 乳製品:牛乳コップ1杯
- 果物:握りこぶし1個分
摂りすぎに注意する栄養素は?
高齢者の栄養不足や、栄養の偏りが気になる中、摂りすぎに注意する栄養素もあります。それが塩分です。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病や腎臓病をもっている高齢者では、治療のために減塩しなくてはいけないので、特に注意が必要です。
塩分を摂りすぎないために、次のような工夫をしましょう。
- だしの風味を活かす
- 昆布やトマト、チーズなど、うまみ成分を含む食材を使う
- しょう油ではなくポン酢に変える
- 醤油さしをスプレータイプに変える
- 味を染み込ませるのではなく、仕上げに味付けする
こちらの記事では、栄養価の高い野菜10選を紹介しています。無駄なく食べるコツやおすすめ有機野菜宅配サービスも解説しているので、是非参考にしてください。
高齢者の食事を介助するときのポイント
高齢者が食べない原因には、食事のときの姿勢や環境もあります。
ここでは、食事を介助するときのポイントを説明します。
きちんと目覚めているか、意識を確認する
睡眠時間が長くなっている高齢者や、体を起こせなくなっている高齢者では特に、きちんと目覚めていないときがあります。食事の時間になったことをしっかり声掛けをして伝え、目覚めているか確認しましょう。
このとき、健康状態も確認しましょう。ただ目覚めていないだけでなく、意識がもうろうとしていたら、発熱や脈を確認します。いつもと違う状態なら、医師の診察を受けましょう。
正しい姿勢を取る
正しい姿勢で食事をしないと、誤嚥の恐れがあるほか、体勢が悪くてうまく食べられないということもあります。座ることができる人とできない人の2つの状態で説明します。
座ることができる人の場合
椅子や車いすに深く腰掛け、背筋をよくします。
椅子の高さは、足がしっかり床につく高さにし、足を床につけられる人は、足の裏をしっかり付けます。
顔は顎をやや引いた状態にします。
座ることができない人の場合
背中が曲がっていて座り続けることができない人や、寝たきりの場合は、ベッドで食事をとります。
ベッドのリクライニング機能を使って、少し上体を起こします。
首の後ろにクッションを挟むことで顔が前に出るので、食べる姿勢が安定します。
水分補給から始める
食べ始めるときは、まずお茶や汁物で、水分補給から始めましょう。高齢者は唾液の分泌が減り、口の中が乾いている人が多いので、うまく飲み込めないことがあります。
口の中から食道までを水分でなめらかにしてから、食事を開始しましょう。
食事に集中できる環境を作る
高齢者の中には、テレビやラジオ、家族の動きが気になって食べられないという人もいます。
集中できないと、食べこぼしや誤嚥の危険もあるので、テレビを消し、落ち着いた環境を作りましょう。
また、食べている途中で排泄したくならないように、トイレに行ける人は食事の前に済ませ、オムツの人は、オムツが汚れていたら、先に変えておきましょう。
食後は口腔内を清潔にする
食後は、歯磨きなどで口の中を清潔にしましょう。
特に高齢者は唾液が減少しているため、口の中に細菌が繁殖しやすくなっています。
歯磨きが上手にできない人は、口をゆすぐだけで細菌を除去できるデンタルリンスを使ったり、デンタルリンスを含ませたガーゼで口の中をふき取ったりして、できる限り清潔を保ちましょう。
介護食のレトルトや宅配弁当の利用も検討しよう
高齢者が介護者と同居していない場合や、介護者の負担を軽減したいときには、市販のレトルト介護食や介護食の宅配弁当も使ってみましょう。
レトルト介護食や宅配弁当は、介護者の負担を軽減するだけでなく、食事の固さや介護食のメニューの参考にもなりますよ。
レトルトを選ぶときのポイント
介護用レトルト食品には「UD区分」が記載されています。噛む力や飲み込む力に合わせて、区分を選びましょう。
レトルト食品は栄養表示の記載もあるので、不足している栄養素を補うのにも効果的です。
ただし、見た目がワンパターンになったり、できたてのご飯に比べると香りが足りなかったりするので、食べてもらえないこともあります。
1品だけはレトルトに頼るなど、上手に使っていきましょう。
出典:日本介護食品協議会
宅配弁当を選ぶときのポイント
介護食の宅配弁当には、冷凍・冷蔵のものや、地元のお弁当屋さんでも行っているところがあります。
レトルトと同じように、噛む力や飲み込む力に合わせて選びましょう。
ただ、宅配弁当は、最低1か月間継続などの契約期間の縛りがあることがあります。
大手のサービスでは、冷凍で1週間分送られてくることが多いので、冷凍庫を開けておく必要があります。また、一人暮らしの方だと、うまく解凍できないことも考えられます。
宅配弁当については、条件をよく確認して契約しましょう。お試し注文があることも多いので、まずは試してみましょう。
こちらの記事では、高齢者におすすめの宅配弁当サービス6選をまとめました。メリット・デメリットも紹介しています。
高齢者の食事で気を付けるポイントのまとめ
高齢者の食事で気を付けるポイントは、次のとおりです。
気を付けるポイント
- 高齢者の状態に合わせて噛みやすくする
- とろみをつけるなどして、飲みやすくする
- 栄養の偏り、塩分の摂りすぎに注意する
- 食べるときの姿勢や環境を整える
毎日3食を準備し、食事の介助をするのはとても大変です。
レトルトや宅配弁当も活用して、介護する人もなるべく負担なく、食事が楽しめるようにしましょう。