化学肥料とは?メリットやデメリット、上手な使い方も解説します

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野菜やお米を作るとき、化学肥料があるとスムーズに生育するので、とても便利です。

一方で、農林水産省は、次のような理由で化学肥料を減らそうとしています。

農林水産省が化学肥料を減らす理由

  • 化学肥料の原料が高騰していて、農家の経営を圧迫している
  • 日本が諸外国に比べて有機農業への取り組みが遅れている
  • 化学肥料を使いすぎることによって、環境に影響がある
  • 家畜の排せつ物をたい肥とすることで、資源の循環を図りたい

化学肥料を正しく使うことで、農家にとってメリットがたくさんあります。

今回は、化学肥料の基礎知識やメリット・デメリット、さらに化学肥料の正しい使い方も解説します。

化学肥料とは?

化学肥料は、化石燃料や鉱物資源を合成して作られます。

まずは、化学肥料にはどんな種類があって、有機肥料とはどう違うのか見ていきましょう。

化学肥料はどのように作られる?原料には何が入ってるの?

化学肥料は、肥料の三要素である窒素・リン・カリウムや、尿素、硫安、カルシウムなどを化石燃料や鉱物から合成して作った肥料です。

原油や天然ガス、鉱石などが原料となるため、日本では原料をほとんど輸入に頼っている状況です。

化学肥料の種類

化学肥料には様々な種類があります。主に、成分と効果のスピードで種類分けができます。

成分による分類

化学肥料は、肥料の三要素が1種類ずつ入っているものと、三要素が2つ以上配合された肥料があります。

肥料の三要素は、それぞれ役割が異なります。

成分 役割
窒素(N) 主に、葉を大きくする。
植物自体を大きくする。
リン酸(P) 花や実が付きやすくするほか、根の成長にも影響を与える
カリウム(K) 根や茎を丈夫に成長させる

農作物の成長の具合や、実を大きくするのか、葉を伸ばすのかを考えて、要素を選びましょう。

この三要素に加えて、有機肥料が配合されたものや、農作物の生育を助けるマグネシウムやカルシウム、硫黄などが含まれているものもあります。

効果が出るスピードによる分類

化学肥料は、効果が出るスピードで3つに分けることができます。

効果が出るスピードによる分類

  • 緩効性肥料:使ったときから効き始め、効果が長持ちする
  • 遅効性肥料:使ったときは効果が出ないが、1か月後くらいから長く効く
  • 即効性肥料:使ってすぐに効くが、効果が長持ちしない

どのタイプの肥料を、どのタイミングで使うのかは、農作物によって異なります

育て始めに一番栄養を使う葉物野菜とイモ類は、育て始めに肥料がたっぷりと必要で、その後は徐々に減らしていきます。そのため、最初の肥料を緩効性肥料や遅効性肥料にし、様子を見ていきます。

育てている間に実が取れ続けるピーマンのような野菜や、次々生えるネギなどは、継続して肥料が必要です。そのため、最初に緩効性肥料を使い、追肥で即効性肥料を定期的に使います。

葉が充分に大きくなってから、大きな実や根菜ができるカボチャやダイコンのような野菜は、実がなるころが一番肥料が必要です。そのため、最初の肥料も緩効性や遅効性肥料にして、追肥で緩効性肥料や即効性肥料を使いましょう。

有機肥料との違いは?

化石燃料や鉱物から作られる化学肥料と、たい肥や腐葉土などの有機物から作られる有機肥料。違うのは作り方だけではありません。

化学肥料 有機肥料
原料 化石燃料や鉱物 腐葉土やたい肥などの有機物
効果 即効性が高い
持続性は低い
(製品による)
即効性は低い
持続性は高い
(製品による)
臭い 臭いはほぼない 臭いが強いものもある
土壌への影響 成分が偏る恐れがある 土壌が改良される
使いやすさ 使用量を図りやすい
過剰に使うと肥料で農作物が枯れることがある
土壌の微生物量に影響されるので、量が調整しにくい
価格 大量生産できるので、比較的安い 大量生産できないため、比較的高い

特徴も価格も異なるので、それぞれの長所を活かし、短所を補った使い方をしましょう。

こちらの記事では、化成肥料の特徴や種類、メリット・デメリットを詳しく解説しておます。参考にしてください。

化学肥料のメリットとデメリット(短所)

化学肥料はあまりよくないのではないかと思っている方もいるでしょう。しかし、メリットもあります。メリットとデメリットを見ていきましょう。

化学肥料のメリット

農業を始めたばかりの人でも使いやすい化学肥料。「実がなるからリン酸の多い肥料で、実に肥料を付けたくないから固形の肥料にする」など、作物に合わせて簡単に選ぶことができますよ。

化学肥料のメリット

  • 入っている成分の量がはっきりしているので使いやすい
  • 自分で配合して使うこともできる
  • 比較的安くて買いやすい
  • 効き方が遅いものから早いものまであり、選びやすい
  • 粉状、固形、液体など使いやすいものが選べる

化学肥料のデメリット(短所)

化学肥料を使うことは、悪いことではありません。ただし、使いすぎることによる、デメリットがあります。

化学肥料のデメリット

  • 土壌の有機質が少なくなり、成分バランスが崩れる
  • 微生物のバランスも崩れ、農作物の病原菌が発生しやすくなる
  • 即効性肥料を一度に大量に使うと肥料やけを起こす
  • 水に溶けやすいため、地下水や河川の水質汚染に繋がる
  • 過剰に使うと、病害虫が発生する恐れがある

化学肥料を使いすぎなければ、デメリットは最小限に抑えられます。有機肥料を使いながら、足りない養分は化学肥料で補うように使うと、デメリットになることは起きにくいでしょう。

化学肥料の上手な使い方

化学肥料には、三要素のうち1種類しか入っていない「単肥」と、2種類以上の要素が入っている「配合化成肥料」の2種類があります。

単肥の使い方

単肥は、作りたい農作物の種類や、土壌の状態に合わせて選びましょう。

窒素の単肥

主に葉や植物自体を大きくする要素である窒素。窒素の単肥の主なものには、「硫安(硫酸アンモニウム)」「尿素」「石灰窒素」などがあります。

商品名 窒素量 特徴
硫安 21 速効性。安くて使いやすい。水にも溶けやすい。土壌が酸化しやすいので注意。
尿素 46 高い速効性があるが、窒素量が高いので、使用量に注意。水に溶かして使える。
石灰窒素 21 緩効性。毒性があるが、土壌の消毒にもなる。

リンの単肥

主に、花や実を付きやすくする要素であるリン。リンの単肥の主なものには、「過リン酸石灰」「熔成リン肥」があります。

商品名 リン酸量 特徴
過リン酸石灰 17~20 速効性。水に溶けやすいが、土に混ぜこまずに使う。
熔成リン肥 20 緩効性。水に溶けにくい。土によく混ぜて使う。

カリの単肥

根や茎を丈夫に成長させるカリ。カリの単肥の主なものには「硫酸カリ」「塩化カリ」があります。

商品名 カリ量 特徴
硫酸カリ 50 速効性。水に溶けやすく液肥にも使える。イモ類にも◎
塩化カリ 60 速効性。水に溶けやすく、葉に散布することもできる。イモ類には✖。

配合化成肥料の使い方

複数の要素が入っている配合化成肥料は、三大要素のバランスが整った形で入っているので、とても便利です。まず、配合肥料を使ってから、農作物や土壌に合わせて単肥で整えていくといいでしょう。

配合化成肥料には、一つの作物に適した配合になっているものと、三大要素が均等に入っていて、野菜や花など幅広く使えるものがあります。

均等に入っているものは、肥料の袋に「10-10-10」「14-14-14」といった記載があります。

これは「窒素・リン・カリ」がその肥料に何%入っているかという意味です。

大きな数字のものは、使用量が少なくて済みますが、万が一多く使ってしまうと、化学肥料のデメリットが強く出てしまうので、初心者は数字の小さいものを使うと失敗が少なく、おすすめです。

こちらの記事では、野菜作りに大切な肥料のおすすめを紹介しています。元肥と追肥の使い方や注意点も解説しているのでぜひ参考にしてください。

農林水産省が化学肥料を減らそうとしているのはなぜ?

農林水産省は、国内での化学肥料の使用を減らし、有機栽培に転換しようとしています。有機栽培に変えていくと補助金も出るようになっています。

これには、環境と経済の面で理由があります。そのうちのいくつかを解説します。

化学肥料の原料が高騰している

化学肥料は、化石燃料や鉱物を原料としているので、そのほとんどを輸入に頼っています

世界情勢や為替によって、肥料価格が高騰し、農家の経営を圧迫してしまうことから、国内で作れる有機肥料にシフトしようとしています。

有機農業への取り組みが遅れている

日本では、戦後の急激な経済成長と人口増加を支えるため、化学肥料によって農作物の収量を増やしてきました。

ところが近年、世界ではオーガニック化が進み、日本の化学肥料使用量を100とすると、イギリスは80、フランスは53となっています。また、有機食品が農産物の売り上げ高に占める割合は、日本が1.5%であるのに対し、アメリカは5.5%と、アメリカよりも有機農業への取り組みが遅れています。

出典:オーガニック・グローバル・トレードガイド

今後、日本の農産物を輸出していくことも考えると、有機農業を推進する必要があるのです。

環境への影響がある

化学肥料を使いすぎると、土壌の成分バランスが崩れ、微生物のバランスも崩れます。それが進むと、生物の多様性が失われる可能性もあります。

また、窒素が空気中や廃水に多くなり、地球温暖化や水質汚染に繋がります。

家畜の排せつ物をたい肥にすることで、資源の循環を図る

家畜の排せつ物の処分には費用がかかります。排せつ物をたい肥に加工して、有機農業に活用しながら、畜産業者には、排せつ物からも収益が出る仕組みを作ろうとしています。

こちらの記事では、有機肥料の使い方や種類を徹底解説しています。メリット・デメリットを知り上手に使い分けてください。

化学肥料を上手に使って、農業を楽しもう

化学肥料は、使いすぎるとデメリットもあります。しかし、化学肥料を正しく使うことで、農業初心者の方でも、農作物を育てやすくなります。

土壌の状態によっては、有機肥料だけではうまく育てられないこともあります。

化学肥料のメリットとデメリットを理解して、上手に使って、農業を楽しみましょう。